植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2017年01月09日

韓国生保の経営破綻

 

今月下旬にソウルでスピーチをする予定があり、
当日のレジュメを作成するなかで、韓国生保の
破綻事例を改めて確認しました。

日本で中堅生保の経営破綻が相次いだのと
ほぼ同じ時期(1997年~2000年代初頭)に、
韓国でも中小生保を中心に14社が実質破綻に
追い込まれています。
当時の韓国生保は全部で33社だったので、
なんと4割の会社が破綻したことになります。

もちろん、保険会社の破綻事例といっても、
国が違えばいろいろと異なる点はあります。

例えば、日本で破綻した生保会社の多くは
歴史の長い中堅規模の「漢字生保」でしたが、
韓国で破綻したのは、主に1980年代後半の
市場開放で新たに誕生した「新設会社」でした
(ただし、1999年に破綻した大韓生命は大手)。

破綻処理スキームも日韓で異なりました。
日本では銀行預金が全額保護される一方、
生保の破綻処理は基本的に契約者負担でした
(破綻会社の契約者と保護機構の資金)。

これに対し、韓国では深刻な金融危機のなか、
公的資金を活用した契約移転や売却などにより、
銀行預金者も生保契約者も全額保護されました。

とはいえ、かつて韓国の破綻生保の経営を
調べたところ、特色のない経営戦略であったり、
規模拡大を優先し、高コスト構造からの脱却を
怠っていたりと、破綻した「新設会社」が様々な
経営問題を抱えていたことがわかりました。

つまり、韓国のケースでも、経営陣の判断や
行動が破綻に強く影響したと考えられます。

近年の低金利環境(韓国でも低金利なのです)
のなかで、韓国の生保がどのような経営戦略を
とっているのかも興味深いテーマです。

昨年4月のムーディーズのレポートによると、
資産・負債のミスマッチが比較的小さいものの、
やはり金利低下の影響を受けているようですし、
販売面では商品構成に変化が見られるとのこと。


政治的の世界では、どうもしばらくは関係修復が
難しそうな情勢に見えますが、民間レベルでは、
双方にとって参考になる話がたくさんありそうですし、
引き続き交流を進めていきたいと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※築地の波除神社にも参拝してきました。
 この輪(茅の輪と言います)を三度くぐると
 穢れ(けがれ)をはらったことになるそうです。


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| post at 10:58:04 | コメント(0)  | カテゴリー : 01. 保険経営全般 |

2017年01月02日

保険会社の社会的役割

 

あけましておめでとうございます。
本年も引き続きよろしくお願いいたします。

2016年を振り返ると、保険会社にとって、
その経営のあり方が問われた年でした
(それは現在も続いています)。

昨年は熊本のように、大地震の発生確率が
必ずしも高いと考えられていなかった地域で
大きな地震が発生しました。
また、北海道に台風が上陸し、大きな被害を
与えるというのも、従来にはなかった話です。

日本の保険会社の社会的役割を踏まえれば、
少なくとも業界全体としては、自然災害リスクを
引き受けないという選択肢は考えにくいでしょう。
自然災害による被害を目の当たりにすれば、
むしろ補償ニーズも高まっていることと思います。

ただ、リスクの把握が難しくなっているとしたら、
従来の延長線上で引き受けるのが経営として
健全な姿ではないはずです。
会社が傾いてしまっては、そもそもリスクを
引き受けることなどできなくなってしまいます。

保険会社もその点は理解しているので、
リスクと自らの経営体力を慎重に見極めつつ、
社会的役割を果たそうとしているように見えます。


昨年は金利についても、日本銀行のまさかの
マイナス金利政策による影響で、利回り曲線が
極端に平坦化してしまいました。

その結果、ソルベンシーマージン比率が引き続き
高水準となる一方、これまで生保の経営実態を
より正しく反映するとされてきたEVやESRなどの
指標が大きく減少/低下する事態となりました。

見かけ上の「逆ざや」は消えていても、
過去に販売した高利率契約の責任準備金は
決して少なくありません。
金利低下により高利率契約の負担は一層重く
なってしまいました。

このような状況下で、長期の保障に対する
ニーズに経営としてどこまで応えるべきなのか。

先の自然災害リスクと同じように考えれば、
従来の延長線上での経営が健全な姿では
ないはずです。

しかし、今の低金利を一時的な異常事態として、
時計の針を止めるような話ばかり聞こえるのは
どうしてなのでしょうか。

保険会社の社会的役割はリスクテイクですし、
リスクテイクは収益の源泉でもあります。

ですから、過去に経験のない環境下において
やるべきことは、これまで活用しようとしてきた
経済価値ベースの経営管理を「変動が激しい」
「極端すぎる」として遠ざけることではなく、
この環境でリスクテイクがどこまで可能なのかを
見極めることこそが重要なのだと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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