植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年08月20日

自然災害の保険カバー率

 

ミュンヘン再保険によると、東日本大震災による
経済損失は2100億ドル(約16兆円)に達するのに対し、
保険による支払額は約300億ドル、カバー率は14%だそうです
(17日の日経など)。

確かに、米国ハリケーン・カトリーナ(2005年)の約5割、
同じく米国のノースリッジ地震(1994年)の35%、
今年発生したニュージーランド地震の約5割に比べると、
日本の保険カバー率は低いと言えそうです
(ちなみに阪神大震災のカバー率は約3%です)。

もっとも、なぜか再保険会社からの言及がないのですが、
同じ自然災害でも台風による風水害のカバー率は
日本がそれほど低いわけではなさそうです。

例えば東京海上研究所の資料によると、
1991年台風19号のカバー率は5割以上、
2004年台風18号でも4割以上となっています。
東京海上研究所HPへ

かつては火災しか担保しなかった火災保険が
段階的に風水害を担保するようになり、
今や実質的に「風水害保険」となっているためでしょう。

つまり、保険カバー率が低いのは地震災害なのですね。

地震リスクのうち家計向け地震保険については
阪神大震災後に徐々に普及が進み、現在では、
火災保険加入者の約半数が地震保険に入っています。

しかし、統計がないので詳細はわかりませんが、
家計向け地震保険の金額に制限があることに加えて、
おそらく企業向けの地震保険があまり普及していないため、
地震災害の保険カバー率が海外に比べて低水準なのでしょう。

この背景には企業のリスクマネジメント意識が低かったことと、
損害保険会社が地震リスクの引き受けに慎重だったことが
あると思います。

地震リスクは低頻度・高損害かつ集積リスクなので、
保険会社がそう簡単に引き受けを増やせないのは理解できます。

ただ、保険会社の存在意義を考えると、今のリスクプロファイル
(大手損保の最大リスクは国内株式ですよね)でいいとは
とても考えられないのですが、いかがでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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2011年08月17日

台北の旅(その2)

 

プライベートの旅でしたが、せっかくですので
保険アナリストらしい話もしましょう。

2008年の金融危機以降、台湾では外資系生保の
撤退が相次いでいます。

発表順にING、英プルデンシャル、エイゴンと続き、
今年に入ってからもAIG(南山)、メットライフが
撤退を発表しています。
AIGは2009年の売却計画が台湾当局から却下され、
売却先を変えて交渉中です。

AIGやINGのように、グループの経営危機により
撤退を余儀なくされたところもありますが、
メットライフまでが撤退するところを見ると、
外資系にとって難しいマーケットなのでしょう。

日本に比べ、危険差益を上げにくいのかもしれません。
2009年に台湾を訪れた際、台湾の大手生保から
「日本ではなぜ高水準の危険差益を得られるのか」
と驚かれたのを覚えています。

台湾の大手生保でも、過去の高利率契約が
低金利のなかで経営の重荷となっています。

もし経済価値ベースで負債を評価すると、
危険差益が薄いためか、多額の責任準備金を
積み増す必要が生じるとの懸念が業界大手から
出ている模様です。


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