植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2013年05月18日

大震災と保険

 

福島や仙台などで保険関係者の話を聞き、
実際に被災地を歩いてみて、印象に残ったことをいくつか。

1.「どうして教えてくれなかったのか」

コンサルティングをしっかりやっていた保険募集人と、
いわゆる人間関係が武器の募集人で明暗が分かれました。

大震災が発生し、自分は補償に入っていないことが判明。
その際、トラブルになったのは圧倒的に後者だったようです。

前者は「説明を受けたけど、保険料負担が重いので入らなかった」
といった話なので、むしろ「あなたの言うとおりにしておけばよかった」
と信頼が高まりました。

しかし、後者の場合には、正しい情報をくれなかったという
募集人への怒りが高まり、しばしばトラブルになったとか。

「販売至上主義」では、いざというときに信頼を失ってしまうことが
今回の震災で見えたのだと思います。


2.バブルはいつまで続くか

大震災で多くの方々が亡くなったり、家を失ったりしたことで、
保険へのニーズ、特に死亡保障のニーズが高まっているとか。

死亡保障は売るのが難しい保険です。
「自分が死んだら遺族がどうなるか」という、あまり考えたくないことを
顧客に想像してもらわなければならないためです。

ところが、おそらく震災で死後の世界をイメージする機会が
生じたのでしょう。保険ショップも結構にぎわっているようです。

とはいえ、これは一時的にニーズが顕在化したものと
考えるのが妥当なのでしょうね。


3.建設ラッシュの後はどうなるのか

被災地を歩くと、まだまだ更地が多いとはいえ、
あちこちで建物を再建する動きを見ることができました。
飲食店もそこそこにぎわっているようです。

しかし、今回の震災で被害を受けた地域では、震災以前から
水産加工業などの地場産業が衰退し、地域経済が
下降線をたどっていました

つまり、上モノだけ作っても、地域経済がよくなるとは
とても思えないのですね。

表面的な「復興」に目を奪われてはいけないと感じました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。



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2013年05月14日

福島で学会

 

福島に行ったのは日本ディスクロージャー研究学会の
研究大会に出席するためです。
学会HPへ

大会の目玉である統一論題報告・討論は、「東日本大震災後の
リスク管理と情報のディスクロージャーのあり方」。
4人の先生による報告の後、ゲストの野村修也教授も加わって
パネルディスカッションがありました。

吉川先生(心理学)の「リスク・コミュニケーションの現代的意義」や、
柴先生の「リスクのディスクロージャーに関する研究の必要性」など、
報告はなかなか示唆に富むものでした。

例えば、こんな話が出てきましたので、ご紹介します。

「リスクについて多くの情報をもっている科学者や行政などの
 専門家だけが情報や意思決定を独占するのではなく、
 非専門家である市民を含めた社会全体として意思決定して
 いこうとする、新しい考え方の浸透が目指されている」(吉川先生)

「大災害が実際に発生した後では、リスク管理そのものがリスクに
 変わりうる。このリスクは大災害後の人間行動と言ってもよい。
 (中略)我々が知りたいことは、自然災害の発生の可能性と、
 災害発生後のすべての人間行動である。」(柴先生)

普段私が使っているリスクの概念とはやや異なる感はありますし、
実は当日私は質問をしているのですが、それはさておき、
リスク・コミュニケーションといい、人間行動といい、保険会社の
ERMやリスク管理を考えるうえでも重要なポイントだと思います。


※いつもの通り個人的なコメントということでお願いします。

※飯坂温泉で開かれた懇親会では福島の少女たち
 (福島里の子会)が日本舞踊を披露してくれました。


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2012年06月17日

今でも建設ラッシュ

 

2008年の金融危機で英国の金融機関は大きな打撃を受け、
ロンドンの金融街シティーでは大リストラが実施されました。
シティーで活躍する金融機関は英国勢だけではないので、
欧州債務危機の影響も無視できません。

例えばBloombergの記事をみると、英国の金融サービス業界では
昨年だけで約5.8万人の人員削減があった(=世界最多とのこと)とか、
スクエアマイル(=シティー)の雇用が8.5%減少したとか出ています。

しかし、金融街を歩くと、意外にもクレーンがあちこちで見られ、
建設ラッシュが続いているような印象でした。

一つには、オフィスから高級マンションへの改築があるようです。
シティーのオフィス需要は低迷しており、貸すにも売るにも
このままではどうしようもないということなのでしょう。
加えて税金対策という面もあるとか。

ただ、もう一つは、好況時の開発計画を止められない、
ということかもしれません。1990年代後半の東京がそうだったように。

それにしても、ロンドンを歩くと新しいビルが目につきますね。


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2012年06月12日

ワークショップの「作法」

 

海外でワークショップなどに参加すると、
報告者が率先して説明中に質問を受け付け、
実際に参加者から多くの質問が出ます。
今回のスイスでの会合もそうでした。

日本では、報告者の話をすべて聞いてから、
最後にまとめて質疑応答を受け付けるというのが
一般的なワークショップや研究会の「作法」だと思います。

この「作法」の悪いところは、議論が深まりにくいことでしょう。
単なる発表会になってしまいがちです。

それでは海外の「作法」が優れているのかといえば、
これもケースバイケースだと思います。

例えば発表内容について一定の知識があり、
発表の全体像を踏まえたうえでの質問があれば、
質疑応答を通じて議論が深まるかもしれません。

ただ、これまでの経験からすると、
途中で「どうしてそれを今聞くの?」という質問が入り、
その結果、時間が足りなくなり、最後は駆け足で終わる、
というパターンも結構多いような気がします。

最後に質問しようとのんびり構えていると、
下手をすると時間切れです。それでは困るので、
仕方なく質疑応答に参戦することになりますが、
このタイミングが結構難しいんですよね。

こうなってくると、議論が深まるというよりは、
むしろ議論が拡散してしまうかもしれません。
表面的に「活発な質疑応答が交わされた」というだけでは、
そのワークショップは成功したとは言えないでしょう。

ということで、どこで質疑応答をするかが本質ではなく、
議論を深めるために報告者がどのような工夫をするか、
なのでしょうね。


※7年ぶりのロンドンです。


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2012年06月10日

スイスの多言語文化

 

週末にムルテンという小さな町を訪れました(写真)。
ベルンから電車で1時間弱のところです。
たまたま月1回のフリーマーケット(?)をやっていて、
多くの人で賑わっていました。

このムルテンは中世の姿が残っているというだけでなく、
ちょうどドイツ語圏とフランス語圏の境目に位置しており、
町の名前がムルテン(独)/モラ(仏)と二つあります。
住民はどちらの言葉も不自由なく使えるのでしょうか?
どんな生活をしているのか気になりますね。

スイスが多言語文化の国ということは昨年も紹介しました。
「スイスの存在感」
ドイツ語が約6割と最大で、フランス語が2割、
イタリア語とロマンシュ語はさらに少数派のようです。

ところが近年、ドイツ語圏ではフランス語などの国語より、
英語を優先して教える傾向が強まっているとか。
確かに仕事の世界では英語が共通語となっているので、
そうなってしまうのも理解できる話です。
ただ、フランス語圏など少数派には面白くないでしょうね。

スイスという国は自治権をもつカントンの集合体として
歴史的に形成されてきました。
ドイツ語を使うカントンやフランス語を使うカントンがあり、
カントンどうしがおたがいを尊重してやってきたため、
今の多言語状況があるようです。

言葉の問題でこじれると、カントンどうしの結びつきが
弱まってしまうおそれもあるのでしょうね。
一介の旅行者の感想にすぎませんが。


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2012年06月09日

再びベルンへ

 

1年ぶりにベルンにやってきました。
世界遺産の町並みは相変わらず美しいです。

欧州ソブリン危機が深刻化しているとはいえ、
ちょっと町を歩いただけでは全くわかりません。
そりゃそうですよね。

それにしても、ホテルでも町なかでも、
中国人と思われる集団が目立ちますね。年々そう感じます。
他方、日本人とはまだ出会えておらず、さびしい限りです。

今回初めてスイスがワインの生産地ということを知りました。
生産量が少ないので、ほとんど国内で消費してしまうとか。
さっそく赤ワインを調達し、部屋で味わいました。

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2011年11月19日

マレーシアの国際性

 

2010年のマレーシア保険市場の規模は約118億ドルで、
日本のわずか2%にすぎません(スイス再保険「シグマ」より)。
生命保険の普及率も4割程度と聞きます。

そのマレーシアにMII(Malaysia Insurance Institute)という
非営利組織があり、ここの活動が国際的で驚きました。

MIIは保険会社や代理店等のトレーニングを担う組織で、
いわば日本の生保協会と損保協会から教育・研修・研究機能を
取りだして集約したところのようです。
マレーシアの保険当局とも連携して活動を行っているとのこと。
セールス関連だけではなく、各種コンファレンスの開催や
リスクマネジメント資格などにも力を入れている模様です。

本来、MIIはマレーシアの保険産業のための組織だと思うのですが、
それだけではなく、国際的なプレゼンス向上にも注力しています。
なかでもアジア・アフリカの新興国へのサポートに力を入れており、
各国から研修生を受け入れてもいます。

もちろん、熱意がなければできない活動ではあるものの、
考えてみればマレーシアには様々な条件が整っているのですね。

例えばマレーシアは旧英領だったこともあり、英語が普通に通じます。
高等教育も英語で行うのが一般的だそうです。
つまり、欧米に留学するよりもずっと安く、英語で高等教育を
受けることができるというわけです。

イスラム教が国教なので、イスラム圏の人々には安心です。
とりわけ食事の問題は簡単に解決できます。
さりとて中華系やインド系も多く、他宗教に寛容な雰囲気を感じます。

そして何より治安がよく、かつ、清潔です。
近年になってインフラ整備が進んだからかもしれませんが、
「快適さ」という点で日本に通じるものがあります。

今回の出張で、同じ東南アジアだからといって一くくりにしては
いけないと痛感しました。


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2011年11月16日

クアラルンプール

 

出張でマレーシアの首都クアラルンプールにいます。
赤道直下ということで覚悟してやってきたところ、
意外に暑くないです。

まだ車で動きまわっただけですが、近代的な町ですね。
写真左のペトロナスタワーをはじめ、高層ビルが立ち並び、
あちこちに右の写真のようなショッピングセンターがあります。
緑が多いのもクアラルンプールの特徴でしょうか。


国民の半分を占めるマレー人の多くはイスラム教徒なので、
女性の多くはトゥドゥンというスカーフのようなもので髪を隠し、
長袖・長いスカートで肌を見せないスタイルが目につきます。

ただ、これが結構おしゃれなんですね。
イスラムのイメージとは違い、非常にカラフルですし、
皆さんファッションを楽しんでる感じがします。
できれば写真で紹介したいのですが、機会があるかどうか...



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2011年10月03日

バンコクの観光地

 

帰国便が夜だったので、有名な寺院や郊外の水上マーケットまで
足を伸ばすことができました。

涅槃仏のワット・ポー(写真)、エメラルド仏のワット・プラ・ケーオ、
三島由紀夫「暁の寺」のワット・アルン、この3大寺院を訪れるのが
バンコク観光の定番なのだそうです。

定番観光地の近くには、観光客をだまして儲けようという輩が
たくさんいます。

私たちが地図で現在地などを確認していると、
いつの間にか現地風の男の人がいて、

「いまはここですよ。王宮?それならこう行けばいいんですよ」

なんて親切に教えてくれます。
お礼を言って出発しようとすると、

「ただ、王宮は王室の行事があるので、今はタダだけど、
 ほとんどの建物が見学できません。
 午後1時以降ならば全ての建物を見学できますよ」

とのこと。せっかく来たのになあ、と残念がっていると、
彼はさらに、

「王宮は午後からにして、それまでは○○を見学しませんか?
 ここからそんなに遠くないですよ」

と別の観光スポットを勧めてきます。

ここでようやく気が付きました。
彼は私たちをどこかに案内してガイド料をとる、
あるいは何かの店に私たちを連れて行き、
店から紹介料をもらうつもりだったのでしょう。

王宮に行くと(もちろん彼とは別れて)、
果たして普段どおりにオープンしていました。


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2011年10月01日

タイの保険事情

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前回に続き、バンコクから。

9月のバンコクは1年で最も雨が多い季節だそうです。
日本の梅雨とは違い、一日中しとしと降るのではなく、
雷とともに激しく降ったかと思えば、あとは真夏の日差しが
照りつける、といった感じです。

ただ、今年は異常気象のようで、タイの各地では7月から、
大規模な洪水に見舞われているようです。
連日こちらのテレビで報道しています。


左の写真はOIC(Office of Insurance Commission)です。
タイの保険監督は政府ではなく、独立機関であるOICが担っています。
UK-FSAのように、運営費用を保険会社が負担しているとのこと。

OICは今年から新しい最低資本規制(RBC)を導入しました。
分子の支払余力は「Fair Asset」から「Fair Liability」を引いたもの、
つまり、経済価値ベースのソルベンシー規制なのだそうです。

タイの生保も資産と負債のミスマッチを抱えているためか、
あるいは他の理由なのかもしれませんが、
新基準の導入で比率は大幅に下がる模様です。


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