植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2013年11月18日

「好決算」に惑わされないで

 

先週から保険会社の決算発表が始まりました。
第一生命の連結純利益は前年同期比71%増、
T&Dの連結純利益は倍増となりました
(14日公表)。

増益には有価証券評価損が減ったことや、
外国証券の利息・配当金増加が大きかったようです。
ともに上場以来、上期の最高益を更新したとか。

メガバンクの決算発表もありました(同じく14日)。
みずほと三井住友はやはり上期としての過去最高益。
前年に比べ、株式評価損が少なかったことと、
貸倒引当金の戻し入れなどが寄与した模様です。


メディアが報道する「好決算」「過去最高益」には
どのような意味があるのでしょうか。

決算発表でメディアが会計上の損益に注目するのは、
損益の拡大、イコール、会社価値の拡大という前提が
あるのだと思います。

しかし、例えば「株式評価損が減ったから増益」
「貸倒引当金が戻入になったから増益」というのに
皆さんは違和感ありませんか?

株式を保有しているのであれば、株価が上がれば
会社価値にはプラス、下がればマイナスです。
ところが、会計上の損益に株価上昇の影響は
あまり反映されません(貸出金も同様です)。

金利についてもそうです。
特に、長期にわたり固定利率を保証している生保の場合、
この上期は超長期金利が上昇し、将来の負担が減り、
会社価値が改善しました。
ところが、会計上の損益にはほとんど反映されていません。

金融セクター(銀行、保険)の場合、会社価値の拡大と
会計上の損益のギャップがあまりに大きく、過去には、
会計上の損益をターゲットにした経営をしていたために
会社が傾いてしまった中堅生保もありました。

銀行や保険会社の経営陣は、さすがにこのあたりは
理解していると信じていますが、メディアが相変わらず
会計上の損益だけを見て「好決算」「過去最高益」とはやすと、
もしかしたら引きずられることがあるかもしれません。

さすがに日経新聞は、銀行については「好決算」としつつも、
「国内の貸出が伸びていない」「利ざやは縮小」と、
本業の厳しさをきちんととらえています。

保険についても、「保険料収入が増えたから増収」
「アベノミクス効果で増益」という意味不明な報道ではなく、
会社価値の変動を意識した記述がほしいですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※今月に入り、上智大と東京経済大で講義を行いました。
 写真は東京経済大です。武蔵野の面影を感じます。


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コメント一覧

いま、リスク管理を問う  (2013年11月20日 23:19:48)

今回のブログとは関係ないですが。

保険会社で統合リスク管理とか経済価値ベースという言葉がつかわれるようになり、早何年経つでしょう。私は、これらの考え方が導入されて、保険契約者のためにも、保険会社のためにもなっておらず、むしろ害をなしていると考えるものです。

保険会社では、生損問わず、規模の大小を問わず、リスク統括部とかリスク管理部といわれるような部署は、経営からサポートを得られず、他部門からは煙たがられています。金融庁は、表向き、私たちはあなた方の見方ですといいつつ、むしろ攻撃してくるわけです。こういう部署は、保険会社のなかでもかなり優秀な人が多く配属させられています。なのに、あまりに形式的な資料を作らさせられています。

本来であれば、別の部署でもっといい仕事をさせた方が保険会社のためなのに。本人にもとても気の毒です。会社にとっても、意味のないことに優秀な人材を配置し、事業費効率悪化につながってしまってます。保険契約者にとっても、これはマイナスです。

我が国でこういう言葉を流行らせたのは、コンサルティング会社関係の人です。やはり、コンサルティングは潤って、どんどん人も増えています。業界にとって何もプラスにならないのに。保険会社からこういう業界に人材が流出するのを見ると、何なんだと思わざるを得ません。そして、これからは経済価値だ、ERMだ、と触れ回ってます。

こういうことをいうと、決まって過去の破綻のこと、ALMの重要性が言い訳のように使われます。理屈では間違ってはいません。でも、金利リスクをもう少しまじめに見るような制度をつくれば、それで十分だと思います。標準利率を一定期間ごとにロックフリーにし、資本直入するとか。

実際、コンサルティング会社ももうかって嬉しいけど、あと何年経ってもほんとにERMが日本で確立するとは、一部のおめでたい人を除けば、誰も思ってないでしょう。

あるいは、外国の事例が挙げられるのかもしれません。外国でほんとにうまくいってるのか怪しいものですが、日本でほんとにうまくいくと思ってるのでしょうか。

やはり、現実の問題なので、実効性を担保できる範囲で、有効な政策を考えなければいけないんです。いつまでも、高い理想ばかりかかげてはだめなんです。全ての会社に求めるなら、もう少しいい政策あるんじゃないでしょうか。

誰が統合リスク管理や経済価値ベースをやめようというのか、みんなが待っています。ほんとに会社としてやるべきと考える会社だけがすればいいんです。それで、そういう会社が競争上、有利になるかもしれませんし。

もし本当にそれ以上を望むなら、みんなが本気になるような仕組みが必要です。

リスク管理に携わってる人、どう思ってるんでしょうか。

ぜひ、ERMや経済価値ベースを求めることをやめ、現実的な政策に回帰して欲しい。

植村  (2013年11月21日 00:29:07)

コメントありがとうございます。「統合リスク管理や経済価値ベースは現実的ではなく、高い理想ばかりかかげていてはだめで、実効性を担保できる範囲で有効な政策を考えるべき」というご趣旨でしょうか。

ちなみに、行政当局は全ての会社に同じようにERMを促すということはないと見ています。もし求めるようであれば、私も「もう少しいい政策あるんじゃないか」と思います。

ensaigaisai  (2013年11月21日 09:38:36)

最初のコメントの方の気持ちはよくわかりますが、別にコンサルに頼む必要などないし、ERMというのは技術論よりもっとなんというか「気持ち」の部分が大きいと思います。経済価値ベースというのも、そうした方がこれまで見えてこなかったリスクが理解できるという話にすぎません。ただ、過去ALMによる破綻があったという事実は動かしがたいので、こういうものをある程度見ておく必要があることは避けて通れないと思います。きちんと説明すれば経営者もこの意味を理解してくれると思います。そしてそれが商品ごとのリスクとリターンといった視点に直結すれば、経営上も大きな武器になると考えます。きちんとやればチャネルの効率性とか様々な議論につながり、企業としてのより良い経営につながり、ひいては契約者の利益につながります。

経営とリスク管理という視点でいえばやはり本来同一のものであるので、ことさらリスク管理はこうあらねばならないとか役所から言われる前に、殆どのまっとうな経営者はやるべきことは理解しているのです。だからといって規制や監督が無意味というのではなく、むしろそういった内心の気持ちを後押しするものであるはずで、そうあってほしいと思います。

経済価値の計算がどうしても多くの将来の仮定に基づいてしまう極めて脆弱なものであることは事実であり、その数値を鵜呑みにしてはいけないとは思っています。それはVaRにしてもなんにしても特に市場回りのことを語るときに共通のテーマです。ただ、その前提とか制約を十分理解したうえで議論していく材料は必要だと思っています。

問題はお役所の皆さんが妙にコンサルっぽくなってきて、コメントの方の危惧されるように理想論だけで突っ走るのではないかということで、保険会社側とのまさに「コミュニケーション」が求められるところです。リスクコミュニケーションというものがERMで強調されているのですから、ぜひ同じことをお役所のみなさまにも実行してもらいたいと思っています。

欧米とは保険会社に期待される役割も文化も全く違うし、また極論すれば株式会社と相互会社では違うアプローチがあってもいいのではないかと思いますので、その意味では本来規制にはなじみにくいのではないかとも思いますが、役所による指図が無意味かというとそうも思っていません。

いま、リスク管理を問う  (2013年11月21日 18:42:39)

ensaigaisai様

コメントありがとうございます。

コンサルに頼む必要はないし、大事なのは気持ち、というのはよくわかります。しかし、お分かり頂けると思いますが、ほとんどの会社では、(リスク管理というものに対して)この気持ちが欠けてるのです。だから、多くの会社で、他社がやってるようにやってくれ、コンサルからも意見を聞いてくれ、あとは任せた、となってしまうのだと思います。すると、先に説明したような状況になってしまうわけです。

押される側がそういう状況で、果たして監督当局が背中を押せるのか。また、押す側の方も、保険のことはわからないし、ERMとなるとさらに良く分からないという状況。

もう、コンサルの天国なわけです。

なので、私は、監督当局が背中を押せというよりは、標準責任準備金制度と予定利率リスクを見直せば十分だも思うんです。

ensaigaisaiさんがERMが競争上有利になるのなら、やる気のある保険会社に任せましょうと。

ちょっと保険検査マニュアル、保険会社向けの監督指針は、どうなのかと思ってしまうのです。

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