植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2010年10月31日

“強い”保険会社ランキング

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今回も週刊東洋経済の保険特集について。
10/20のブログで、「中には?と感じる記事もあった」と
「“強い”保険会社のランキング」を名指ししてしまったので、
その理由をコメントしておきます。

なお、特集号全体としての感想は、同じ日のブログで
「興味深い企画がいろいろとあり、面白かった」ですから、
関係者の皆さんは気を悪くしないで下さいね。


例えば生保の総合ランキングをみると、

「基盤力」=保有契約年換算保険料の伸び率
「収益力」=基礎利益の実額
「効率性」=事業費÷保険料等収入
「安定性」=実質純資産額÷一般勘定資産
「健全性」=ソルベンシーマージン比率(SMR)

のそれぞれを良好な順に並べ、1位24点・・・24位1点と点数を振り、
各項目の得点を単純合算して総合ランキングを出しています。

この結果、例えば規模が大きく(収益力は基礎利益の実額!)、
貯蓄性商品の販売が大きく(基盤力、効率性に強く影響します)、
SMRが他社よりも高い会社が高得点を獲得しています
(SMRが1006%あっても8点しかとれません)。

問題点を整理すると、①各項目の指標の選び方に問題がある、
②単純に点数を振っているので、わずかな違いでも点差が開く
(特に「安定性」「健全性」で顕著)、③各項目を単純合算している、
といったところでしょうか。

これをもって“実力”とか“体力”とか言ってしまうのは
私にはかなり抵抗があります
(損保についても基本的には同じです)。

AIGの経営危機で格付けの信頼性が揺らいだとはいえ、
主要な格付け会社の格付けを並べたほうが、
はるかにマシだったのではないでしょうか。

もしそれだけでは不十分というのであれば
(格付けはグループ評価だったりしますので)、
格付け一覧に加え、例えば「株価下落や円高の影響度」
「予定利率の負担度合い」「保有契約のトレンド」といった
経営への影響が大きそうな情報を補足すれば、
より各社の実力や体力が浮き彫りになったでしょう。

このような困った総合ランキングが経済誌等に載るのは
そろそろ勘弁してほしいものです。


※日曜日は娘と渋谷でデート。
 渋谷のロフトは何年ぶりでしょうか?


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2010年10月24日

週刊東洋経済の保険特集②

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前回触れた「加入後のフォロー体制ランキング」について
やや舌足らずだったので、再度コメントします。

商品内容や料率だけではなく、加入後のフォロー体制についても
しっかりチェックしようという考えは正しいと思います。
このような比較表は読者にとって参考になるでしょう。
そういう意味で「新鮮」と書きました。

ただ、比較表だけではなく、「ランキング」となると、
ビジネスモデルの異なる会社を比べている点で抵抗があります。

例えば、契約者へのアフターフォローを、会社がルールとして
営業職員や代理店にやらせる仕組みがあれば高得点で、
営業職員や代理店が独自に行う仕組みだと高得点は取れません。

ターンオーバーの激しい営業職員チャネルで、かつ、
複雑なパッケージ商品を提供するモデルであれば、
会社がルールとしてフォローを徹底し、全体の底上げを
図る必要があるのでしょう。
放置しておくと品質のばらつきが大きくなってしまうからです。

しかし、厳選された営業職員や代理店による販売モデルなら、
極端に言えば、会社がわざわざルール化しなくても、
十分なアフターフォローが期待できます。

つまり、例えばコンビニのマニュアル化されたサービスと、
接客のプロによるサービスを同じ物差しで測っていいのかという疑問です。

また、「郵送による情報提供回数」「コールセンターのスタッフ」では、
「回数が多い」「スタッフが正社員」だと高得点です。
確かにアフターフォローだけを考えればそうなのですが、
その分コストがかかるので、一般的には保険料に反映されます。

このようにみると、今回のランキングで大手生保が高得点となったのは、
支払い問題を経た現在、当然の結果のようにも思えます。

反対に、ライフネットや県民共済(今回は対象外)のように、
割安でわかりやすい(と顧客が感じる)商品に自発的に
加入してもらうモデルでは、このランキングで高得点は望めません。
でも、彼らに大手と同じフォロー体制を求めるべきなのでしょうか。

長々と書きましたが、要はビジネスモデルが異なれば、
求められるアフターフォローも異なるということだと思います
(最低限必要なアフターフォローというものはありそうですが...)。

次の機会があれば、ビジネスモデルをある程度そろえたうえで、
質問も多少変えてランキングしてみてはいかがでしょうか。

※いつものように意見には個人差があるということでお願いします。

※今回の写真も川和富士です。
 調べてみたら、現在の富士塚は二代目で、
 初代は港北ニュータウン建設の際に壊されてしまったとか。


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2010年10月20日

週刊東洋経済の保険特集

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今週の週刊東洋経済は保険特集号でした。
タイトルは「『いざ』という時の頼れる保険」。
60ページにも及ぶ大特集でした。

中には?と感じる記事もあったとはいえ
(例えば「“強い”保険会社のランキング」など)、
興味深い企画がいろいろとあり、面白かったです。

まず、大手生保の営業職員(または営業担当者)と
人気FPが保険プランの提案で対決するという企画。
むしろ「対面販売の生保がFPに挑む」と言うのが
正しいかもしれません。

7つのケースを読むと、大手生保、FPそれぞれの
プランニングの特徴が浮き彫りになり、勉強になります。
多くの世帯が既に保険に加入していることを踏まえると、
次回は「保障見直し」対決を読みたいですね。


「加入後のフォロー体制ランキング」も新鮮でした。
異なるビジネスモデルの会社を比べるのは
やや無理があるように感じましたが
(充実したフォローにはコストがかかるはずなので)、
同じ営業職員主体でも、結構差がつくものなのですね。
プルデンシャル生命がないのは、未回答だったのでしょうか?

他にも「どちらがいい?対面vsネット」や「保険ショップの裏側」
「コールセンター実態調査」「本当にお得な自動車保険は」
などの記事が私には興味深かったです。

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※ようやく秋らしくなりましたね。
 写真はいずれも横浜市緑区の風景です。

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2010年10月06日

東洋経済の「生保・損保特集」

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2010年版の「生保・損保特集」が出ました。
週刊東洋経済の臨時増刊として毎年出ているもので、
最近の保険業界の動向を手軽につかむことができます。

今回のテーマは「顧客接点強化」でした。

巻頭特集の「『顧客接点』強化へ大改革」では、
日本生命の取り組みを中心に紹介。

続いて、「チャネル改革で主力商品にも変化」
「銀行窓販は拡大期」「女性向け新商品の販売戦略」
「販売チャネルの新潮流」「コールセンターは重要拠点」
「損保代理店の『新常識』」「損害サービス大改革」
と顧客接点に関する記事のオンパレード。

記事と記事の間には社長インタビューが入ります。

ただ、このような構成の場合、記事が単に保険会社の取り組みを
紹介するだけでは業界の広報誌みたいになってしまいます。
きちんとした現状分析(=どこに問題があるのか)や、
各社の取り組みに対する評価がほしいところです。

私の要求が厳しすぎるのかもしれませんが、
全体的にもう少し深い突っ込みがほしかったですね。


読者の中心が業界関係者だとすると、読者の多くは
この10年間の保険市場(特に生保)の縮小を実感しています。

各社が現在取り組んでいる顧客接点強化によって、
本当に将来展望が開けるのか、それとも流れを変えるには
もっと大規模なビジネスモデルの見直しが必要なのか。

どうも読者の知りたいことと、実際の記事に乖離があるように感じました。


保険会社の広告が掲載されるうえ、近年は就職特集も見られるなど、
様々な制約や苦労があるのは想像できます。
しかし、ここ数年、読みごたえのある記事が減っているように
感じるのは私だけでしょうか。

アナリストやアクチュアリーなどの専門家ではなく、
普通の業界人が読んで、「へぇ、そうなんだ!」と感じるような記事が
何本も載っている特集号が理想なのでしょうね。


私は転職するまで10年連続で執筆していたので
(今回は執筆していません)、特集号の刊行を楽しみにしていました。
そんな事情もあり、ちょっと辛口コメントになってしまいました。


(おまけ)
損保各社の社長が代理店について大いに語った後に、
「保険会社は口出しすぎ 本当の差別化とは何か」
という損保代理店による「ホンネ匿名座談会」があって、
これは面白かったです。


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