植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2009年05月29日

大手生保の課税所得が赤字に

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5/27、28の各紙(日経、朝日、中日、フジサンケイBなど)に、
大手生保4社の課税所得が赤字になるという記事が載りました。
ただ、各紙が何を伝えようとしたのか、今一つわかりにくかったという印象です。

ある新聞は「黒字なのに法人税がゼロになるのは異例」というものでした
(→けしからんということでしょうか?)。
また、別の新聞は「実質赤字なのに黒字化して契約者に配当するのは
健全性の面でいかがなものか」という趣旨に読めました。

今回のケースは有税で積み立てていた各種準備金を取り崩した結果、
会計上は黒字でも課税所得は赤字となるわけで、
「黒字なのに税金を払わずにけしからん」という話ではありません。

他方、「契約者への配当を減らせば、その分、財務上の余力を
確保できる」というのは確かにその通りです。
黒字とはいえ、あれだけ有価証券関連の損失が出れば、
課税所得を持ち出すまでもなく、「実質赤字」に違和感はありません
(「キャピタル損益を含む基礎利益は軒並み赤字のはずです」)。

ただ、報道によると、第一生命の減配額は40億円です(個人向け)。
内部留保の取り崩し額や含み損益の減少額などと比べると、
ほとんど象徴的な意味しかありません。

仮に、朝日生命のように個人向けの配当をやめたとしても、
過去のディスクロ誌などから推測すると、大きく見積もっても
せいぜい300~400億円しか浮かないとみられ、
ソルベンシー・マージン比率を高める効果はほとんどありません。

課税所得に着目するのであれば、繰延税金資産の妥当性について
突っ込んだ取材をしていただきたいです。
ご参考までに、医療保険が好調なオリックス生命は
2008年度決算で繰延税金資産を全額取り崩したようです。

※写真は飯山城址から見た千曲川です


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2009年05月04日

「ビッグスリー凋落の理由」

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米ビッグスリーの一角を占めるクライスラーが、ついに法的破綻です。
GMはどうなるのでしょうか。

ところで、4/29(水)の日経マーケット面のコラム・大機小機
「ビッグスリー凋落の理由」を読んで、ちょっと違和感を覚えました。

記事の内容は、次のようなものです。
・米企業の経営者には、車を「どれくらい売るか」ほどの執念を
 「どうつくるか」には感じられなかった。
・ビッグスリーが日独の有力メーカーに後れを取ったのは
 経営者が現場を見ずに利を追った側面が大きい。
・GMのトップは4人中3人が財務部門の出身。
 ホンダは歴代社長全員が技術研究所のトップ経験者だ。
・GMとクライスラーの再生には現場に精通したトップの起用が不可欠だ。

このような論調は日本人(特に財界)にとって耳触りがいいようです。
それではなぜ「技術の日産」は10年前に経営危機に陥り、
「世界のトヨタ」は足元で大赤字になり、「大政奉還」に追い込まれたのでしょうか。

保険会社にも、「現場(=営業)を知らないと出世できない」
という文化が非常に色濃く残っています。
でも、営業出身でなければ経営ができないなんてことはあるのでしょうか。
営業出身の社長が専門家を排除した結果、会社が傾いたというケースも
結構あります(→拙著「経営なき破綻」をご参照下さい)。

米ビッグスリーの経営が傾いたのは、財務部門出身のトップが続いたから、
あるいは、研究開発部門や生産現場の経験のないトップが続いたから、
と言い切るのは、あまり論理的・科学的ではないですよね。


※写真は三ツ沢陸上競技場です。部活の応援に行きました。


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