植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2017年03月04日

執務室の施錠と情報公開

 

経済産業省が情報管理を徹底するため、
2月27日から全ての執務室を施錠したところ、
報道機関から猛反発を受けているようです。

「密室化は不信を招く」(朝日)
「異常な情報管制の発想」(毎日)
「世耕氏には記者が『敵』なのか」(読売)

各紙の社説の見出しです。
最初に「執務室の施錠は情報公開の後退」
というニュースを見たときは、3月1日なのに
エイプリルフールなのかと思いましたが、
そうではなかったようです。

なぜこのタイミングなのかという点、あるいは、
メモを取る職員の同席という新ルールには
疑問を感じるとはいえ、セキュリティの強化と
情報公開は別の話ということに尽きるかと。

むしろ、多くの中央官庁の執務室が「施錠なし」
ということに驚きました。

確かに、私がかつて勤務していた金融庁でも、
その数年前までは施錠がなく、外部のかた
(金融機関関係者が多い)が急に入ってきて
あわてて机上の資料を隠すこともあったとか。

毎日新聞の社説(2日)に、

「機密情報を扱う機会が多い外務省や防衛省、
 警察庁などでも執務室を施錠しているのは
 一部の部局にとどまる」

とありますが、国民のための情報管理が
それで大丈夫なのかと心配になりました。


朝日新聞の社説(4日)には、

「行政機関と民間企業には大きな違いがある。
 企業が自らの利益を増やそうとするのに対し、
 行政はあくまで国民生活に資すべき存在だ」

とあり、密室化は不信を招くとしています。

でも、行政の執務室に報道機関がいつでも
入れる環境が、開かれた行政の実現のために
どうして必要なのでしょうか。
職員がサボらずちゃんと働いているかどうかを
監視しようとでもいうのでしょうか。

「政策立案の面から見ても、外部と壁をつくり、
 接点が減ってしまっては、むしろマイナスだろう。
 省外の知見や批判を積極的に取り込んでこそ
 政策は洗練され、納得度も増すはずだ」

という記述もありますが、ここで言う「外部」とは
一部の報道関係者に限られます。というのも、
中央官庁の建物内に簡単に入れるのは、
IDカードを持つ国家公務員と、記者クラブという
常駐先のある一部の報道関係者だけだからです。

同じ報道関係者でも、フリージャーナリストが
経産省に行っても、誰かのアポイントがなければ
執務室はおろか、普通は建物にも入れません
(広報が対応してくれるかもしれませんが)。

つまり、この記述は、政策立案の面で一部の
報道関係者の知見や批判を取り込むべきだと
言っていることになりますね。

さらにおかしいのは、執務室の施錠を情報公開の
後退というのであれば、そもそも建物内に誰もが
自由に入れないことも当然、問題視すべきですが、
そのような論調が一切見られないことです。

報道機関には行政の情報公開姿勢をチェックし、
行政の広報機関のようになってしまわないよう、
がんばってほしいと応援しているつもりですが、
今回の件は、残念ながら私には、既得権益を
守ろうとしているようにしか見えません。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は川崎大師です。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 22:56:30 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2017年02月26日

日本版FD規制の導入

 

FD規制とはフェア・ディスクロージャー規制、
すなわち、上場企業などが公表前の内部情報を
第三者に提供する際、同じ情報を他の投資家にも
出さなければならない、というものです。

日本ではFD規制がまだ導入されていません。
ただし近年、上場企業が証券会社のアナリストに
未公表の業績情報を提供していた事件などがあり、
金融審議会の作業部会が日本版FD規制を検討し、
昨年12月に規制導入を求める報告を行いました。
金融庁のサイトへ(2016/12の金融審報告)

報告書では、規制導入による積極的意義として、

「発行者側の情報開示ルールを整備・明確化する
 ことで、発行者による早期の情報開示を促進し、
 ひいては投資家との対話を促進する」

「アナリストによる、より客観的で正確な分析及び
 推奨が行われるための環境を整備する」

などと述べられているのですが、その一方で、
以前から導入に伴う副作用として、

「(FD規制導入で)企業が情報を提供することに
 消極的になるのではないかとの指摘や、報道
 機関やアナリストによる正当な取材活動等が
 困難になるのではないか」

といった懸念も示されています。
金融庁のサイトへ(2016/4の金融審報告)


2月20日に公表された日本IR協議会による
上場企業を対象にしたアンケート調査の結果も
規制による副作用が心配されるものでした。
調査結果(PDF)

Q:FDルール導入により、貴社の情報開示に
  どのような影響があるとお考えですか

  大きく影響する 8.0%
  やや影響する 43.9%
  変化なし     31.4%
  わからない   16.7%

Q:影響すると回答した企業の具体的な理由

  情報開示に消極的・保守的になる  24.1%
  開示実務の負担が増加する      13.6%
  線引きの判断が必要となる      13.0%
  規制対応や指針・方針の見直しが  11.7%
  必要となる
  中長期的な対話が促進される     1.9%


もし、FD規制の対象となる重要情報の範囲が
よくわからないままだと、規制を強く意識した場合、
「全員に伝える」か「誰にも伝えない」かの二択に
なってしまうのでしょうか(極論ですが)。

とはいえ、確かに下記の線引きは難しそうです。

 「発行者または金融商品に関係する未公表の
  確定的な情報であって、公表されれば発行者
  の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋
  然性があるもの」【規制対象】

 「他の情報と組み合わさることによって投資判断
  に影響を及ぼし得るものの、その情報のみでは、
  直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない
  情報(いわゆるモザイク情報)」【規制対象外】

やはり、FD規制導入後に企業の情報開示が
後退する可能性をある程度は覚悟すべき
なのかもしれません。


ただ、ガバナンス改革として政府が進めてきた
「建設的な対話の促進」は基本的に1対1の対話を
念頭に置いているのだと思います。

企業が求める建設的な対話には、「重要情報」
「モザイク情報」なんてことは些細な話であり、
必要なのは広い視野と深い分析力、というように
有識者の皆さんは考えているのかもしれません。

しかし、広い視野と深い分析力を持つには、
いろいろ話を聞き、知識のストックを増やすことが
不可欠です。

決算データを読むにしても、自分だけで考えるのと、
企業の担当者とやりとりしながら考えるのでは、
理解がだいぶ違います。

FD規制が結果としてそのようなやりとりの場を
なくしてしまうようなことにならないといいですね。

先日取り上げた「顧客本位の業務運営」にも
共通する話ですが、情報の出し手や事業者への
規律を促し、あとはアナリストやFP等におまかせ、
というだけでは片手落ちではないでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※慶大・深尾光洋教授の最終講義に参加しました。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 00:22:46 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2016年07月31日

社外取締役インタビュー

 

昨日(7/30)のNHKドラマ「百合子さんの絵本」
第二次世界大戦中、スウェーデン駐在武官として
諜報活動を行っていた小野寺夫妻の話でした。

価値ある情報を送っても、東京では活用されない。
戦後の座談会のシーンも、いかにもという感じ。

キャストが香川照之、薬師丸ひろ子だったので
見ごたえのあるドラマでしたね。

なお、先日ご紹介した「大本営参謀の情報戦記」にも、
ヤルタ会談でのソ連参戦決定を伝える小野寺電が、
大本営作戦課で握り潰されていたことが記されています。


情報と言えば、2016年版のディスクロージャー誌
(または統合報告書)が各社のサイトにアップされつつ
あります。

最近の特徴として、ここ数年のガバナンス改革を反映し、
報告書に「社外取締役インタビュー」を掲載する会社が
増えているようです。

2016年版を確認したところ、大手保険グループでは
第一生命と明治安田生命が社外取締役インタビューを
載せていました。

ご参考までに、インタビューの項目は次の通りです。

<第一生命 ジョージ・オルコット氏(慶大教授)>
 ・日本企業および第一生命のガバナンスを
  どう評価しているか

 ・取締役会における社外取締役の役割

 ・グローバル企業においてガバナンス面で
  考えていくべきことは何か

<明治安田生命 服部重彦氏(島津製作所相談役)>

 ・これまでの当社のコーポレートガバナンスの
  取り組みをどう評価しているか

 ・筆頭社外取締役として果たすべき役割は何か


メガ損保グループの2016年版報告書は未公表ですが、
2015年版の損保ジャパン日本興亜HDの報告書には、
社外取締役4名からのメッセージがありました
(東京海上HDは社外監査役インタビューがありました)。

ちなみに、メガバンクの報告書には、3グループともに
社外取締役インタビューが掲載されています
(みずほは取締役会議長メッセージ)。


インタビューを掲載しても、情報として役に立たない、
形だけのアピールで意味がない、という声もありそうです。

ただ、インタビューを受ける社外取締役にとっては
いい意味でのプレッシャーとして機能するのではないかと
私は前向きに受け止めています。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※久しぶりにプロ野球観戦に行きました。
 野球よりもファンの観戦(観察)が面白かったです^^

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:30:35 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2016年02月20日

決算短信の見直し案

 

「非財務情報の開示」についての議論を聞くために
金融審議会ディスクロージャーWGに出席したところ、
情報開示が後退しかねない話をしていて驚きました。

このWGでは、持続的な企業価値の向上に向けて
企業と投資者の建設的な対話を促すという観点から、
開示情報の提供のあり方を有識者が議論しています。
金融審議会WGのサイトへ

議論のなかで、3つの開示書類、すなわち「決算短信」
「事業報告・計算書類」「有価証券報告書」について、
開示内容をそれぞれの目的に応じて整理しました。

決算短信の目的は「投資者の投資判断に重要な情報を
迅速かつ公平に提供する」となります。

そこで決算短信について次の提言案が示されました。

①情報についての速報性が要求され、公表前の監査は
 不要であることを明確にする。

②速報性がそれほど求められない項目(例えば、経営方針)
 については、有価証券報告書で記載することとする。

③記載を要請する事項をサマリー情報、経営成績等の概況、
 連結財務諸表及び主な注記に限定し、その他は企業が任意に
 記載できることとするなど、義務・要請事項を可能な限り減らす。


同時に示された東証の静委員による見直し案は次の通りです。
資料(静委員)

上記に沿った内容ですが、4ページが見やすいでしょう。
サマリー情報(=短信の表紙の部分)を「義務」から「要請」
としたうえで、

・財務諸表と主な注記の開示を要請していたものを、
 投資判断を誤らせる恐れがない場合には開示不要

・「継続企業の前提に関する重要事象等」も開示不要

などが示されています。


これらの整理・合理化によって、「より自由な開示を促す」
「空いた時間を投資者との対話にあてる」というのが
このWGの提言なのでしょうか。

そもそも現在の決算短信で開示義務があるのは
サマリー情報のうち、いくつかの指標だけ(監査も不要)。
あとは取引所の「要請」に基づいて記載しているもので、
有価証券報告書のような記載義務はありません。

「義務」と「要請」の違いは、WGの1回目で静委員から
説明があり、議事録では「要請」はあくまで任意と読めます。


それでも上場会社が充実した決算短信を出すのは
東証のガイドラインがあり、半ば義務として従っている
からなのか。私はそれだけではないと思います。

多くの投資家やアナリストは決算発表時に出てくる
決算短信を最も重要な情報源として捉えています。

有価証券報告書が公表されるのはだいぶ先なので、
まずは決算短信をもとに対話がなされるはずです。
だからこそ、上場会社も充実した決算短信を作成し、
公表しているのでしょう。

また、大企業では当日または数日後に決算説明会を
開いており、ここでは決算短信を予め分析したうえで
質疑応答がなされています。

投資家と企業との建設的な対話を促すという観点が
議論の出発点であるはずなのに、現在行われている
対話の重要なツールを後退させるような話になるのは、
いったいどうしてなのでしょうか。

しかも、見直し案は速報性の促進とバーターではなく、
投資家やアナリストにとって一方的に状況が悪化する
という内容です
(これ以上早くしてほしいという声は少なそうですが...)。

ご参考までにWGメンバーの名簿も挙げておきましょう。
投資者の声を代表する委員が少ないような気がします。
WGメンバー名簿


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※銀座には意外なところに路地がありますね。
 写真は銀座8丁目です。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 20:27:37 | コメント(5)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2013年07月07日

楽天vsアナリスト

 

先週の火曜日(2日)に発表されたものなので、
もう話題としては過去の話になりつつありますが、
やはり「アナリスト」としては触れないわけにいきません。

JASDAQに上場している楽天が、あるアナリストのレポートに対し、
改善を要望したものの、十分な修正がなされなかったとして、
面会の経緯とともに次の一文を公表しました
(東証への適時開示というかたちで)。

「当社としては同氏による過去及び将来のレポートは当社への
 投資判断の一助とはなりえないと判断しており、投資家の皆様に
 おかれても参考とされないようお勧め致します。また、当社は今後
 同氏の取材については一切お受けしません。」

楽天のHPへ

開示内容が会社とアナリストのやり取りの経緯だけであれば、
投資家への情報としてわかるのですが、最後の一文はいただけません。

まず、アナリストレポートが投資判断の一助となるかどうかは
投資家が判断するものであり、(気持ちはわかるとはいえ、)
投資対象である会社が判断するものではありません。

そうはいっても、何度説明しても理解してくれないアナリストや
投資家もいるでしょうから、私は反論はありだと考えています。

ただし、「今後同氏の取材については一切お受けしません」
というくだりは楽天にとってマイナスでしかありません。

あくまで想像ですが、楽天はどのアナリストにも同じ水準の
情報しか提供していないと思います。
しかし、こう書いてしまったことで、市場は楽天を、
選択的に情報を出す会社だと判断せざるをえないはず。

楽天はどうして最後の一文を出してしまったのでしょうか。


せっかくなので、楽天がどのようなIR資料を使っているのか
いくつか見てみました。

楽天というと一般にはネット通販のイメージがありますが、
もはやバランスシートは金融会社そのものなのですね。
ノンバンクに加え、銀行、証券、生命保険とそろっており、
確かに金融の知識がないと分析は難しそうです。

そういえば、ソニーのアナリストも金融・保険事業の扱いに
苦心していたのを思い出しました。

楽天生命は昨年10月にグループ入りしたばかり
(旧アイリオ生命ですね)。
保険料収入、資産規模ともに300億円弱の会社ですが、
2013年度第1四半期のスライド資料を見ていたら、
MCEVを公表していて驚きました(簡易計算ベースとのこと)。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※地方鉄道シリーズ(?)第2弾は伊豆箱根鉄道。
 修善寺(写真右)に行ったときのものです。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 22:14:56 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2013年06月23日

公社債の残存期間別残高

 

生保は以前から「有価証券残存期間別残高」という
データを公表しています
(大手中堅9社以外はディスクロージャー資料のみ)。

このデータを見ると、各社が保有する公社債の
残存期間を年々長期化してきたことがうかがえます。

例えば、1年以下=0.5年、1~3年=2年、3~5年=4年、
5~7年=6年、7~10年=8.5年、10年超=15年として
残存期間を推定してみましょう。

2003/3期と2013/3期の推定残存期間を比べると、

 日本生命 6.6年 → 11.7年
 第一生命 5.7年 → 12.3年
 住友生命 5.0年 → 12.2年
 明治安田 5.8年 → 12.0年

こんな感じになっています。


ただ、このところ困ったことが生じてきました。
いまや生保が保有する公社債の7、8割が「10年超」なのです。

ところが、10年超の債券がひとくくりで公表されているので、
20年債でも40年債でも同じ区分に入ってしまうのですね。

上記の推定では「10年超」を「15年」として計算しましたが、
もし「20年」で計算すると、残存期間は15年程度となります。
20年国債を中心に買っている会社と、40年国債もそこそこ
買っている会社では、残存期間はかなり異なるはず。
今の開示ではこのあたりは全くわかりません。

せっかく「有価証券残存期間別残高」を公表しているのに、
公社債の7、8割が同じ「10年超」の区分となっている。
このような現状を踏まえ、次回の決算発表までには
ぜひ「10年超」の細分化をお願いしたいです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※左の写真は先週の父の日のプレゼントです♪


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 18:38:08 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2011年08月06日

ライフネット生命の情報開示



S&Pが米国債の格付けをAAAから1段階引き下げました。
米国債は日本国債と違い、自国外の保有者がたくさんいます。
ただ、日本における日本国債のように、グローバル経済のなかで
米国債に代わるものはありません。
それほどの混乱はないと思うのですが、どうでしょうか。


さて、7月30日に続き、ディスクロージャー誌の話です。

ある会合でいただいた「ライフネット生命の現状2011」を
アナリスト目線で(?)見てみました。
ライフネット生命のHP

2008年11月に開始した「付加保険料の全面開示」は、
ディスクロ誌にも掲載されています
(詳細はHPとなっています)。

任意開示の三利源損益(危険差益、費差益、利差益)は
利源分析の解説付きで推移が示されていますし、
ソルベンシー・マージン比率の説明もわかりやすく
工夫されています。

驚いたことにエンベディッド・バリュー(EV)の開示もありました。
しかもEEV(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)です。
開業後3年ということを踏まえ、事業費の前提を工夫した
「均衡事業費ベース」での開示もありました。
新しい会社なので発生率や事業費の前提が安定していない
のではないかと思いますが、意欲的な取り組みだと思います。


あえてコメントするとすれば、開業後3年という新しい会社で、
かつ、急成長している(=コスト負担がかさむ)ところなので、
資金繰りの説明があるとありがたいですね。

例えば、2010年度の保険料収入18.2億円に対し、
事業費は27.2億円です。
新設会社は保険金等の支払いは少ないものの、
一般にコスト負担がかさみます。

韓国では1990年代後半に中小生保が相次いで破綻しましたが、
大半は歴史の浅い会社で、市場シェアを確保するため
コストをかけすぎたのが破綻の遠因になった模様です。

ライフネット生命のキャッシュ・フロー計算書を見れば、
有価証券の売却によるキャッシュインフローが
ネットで11.7億円あるので、概ねわかるのですが、
何かコメントがあるとよかったかもしれませんね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※月島で「もんじゃの会」がありました。
  写真は「まぐろもんじゃ」です。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:03:45 | コメント(6)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2009年08月05日

保険会社のディスクロージャー誌

null

2009年版の生損保ディスクロージャー誌が公表されています。
多くは「○○生命の現状」というタイトルの冊子です。

決算発表時には公表されないデータもいくつかありますし、
沿革や経営陣、経営方針といった会社情報をつかむのに
ディスクロ誌は役立ちます。

かつてはディスクロ誌を入手するのが結構大変でした。
保険業法で一般の縦覧が義務付けられているにもかかわらず、
頼んでももらえなかったり、いちいち目的を聞かれたりしました。
今は各社のHPからダウンロードすることができます。

ディスクロ誌にしか載っていないデータとしては、

 ・契約年度別の責任準備金残高(生保)
 ・契約者配当準備金明細表(生保)
 ・利息及び配当金等の分析(生保)
 ・受再保険料・出再保険料の推移(損保)
 ・出再保険料の格付けごとの割合(損保)
 ・事故発生からの期間経過に伴う最終損害見積額の推移(損保)

などなど。

このほか上場損保では、決算短信が連結中心となったため、
ディスクロ誌にしか掲載されない個別決算データもあります
(有価証券の時価情報など)。

昨年5月に開業したライフネット生命のディスクロ誌を見たところ、
三利源やソルベンシー・マージン比率(SMR)の考え方の図解、
保険料の構成についての解説、第三分野のストレステストおよび
負債十分性テストの説明などが載っていて、参考になります。

ちなみに同社のSMRは41117%(2009年3月末)でしたが、
開業初年度ですし、SMRにはビジネスリスクが反映されないため、
これは指標の限界なのでしょう。

※写真は伊豆急「リゾート21」です。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 00:07:41 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2009年05月21日

EVショック

null

T&Dホールディングスの2009/3期決算発表を受けて
翌日の株価が急落しました。発表後2日間で15%超の下落です。

株式アナリストではないので断言はできませんが、
EV(エンベディッド・バリュー)が予想以上に減ってしまったことが
影響したのではないかと思います。

EVは株主から見た生命保険会社の価値を示すものです。
年度末の純資産に、保有契約が将来生み出す利益を加えたもので、
会計情報を補うものとして活用されています。

T&Dが発表した2009/3末のEVは8665億円と、
前期に比べ7551億円の減少となりました。
株価下落などにより純資産が5218億円減ったうえ、
金利低下などにより保有契約価値も2333億円減ったためです。

株価下落などによる影響はともかく、金利低下による影響が
これほど大きいとは意外でした。

長期の国債利回りは1年前に比べ、それほど下がっていません。
ところが、T&Dが計算で使っている金利スワップレートは
おそらく金融市場混乱の影響で国債利回りを大きく下回ってしまい、
結果的にEVを1000億円単位で押し下げてしまいました。

多くの会社が発表しているEV(トラディッショナルなEV=TEVと言います)
とは違い、T&DのEVは「EEV」といって、できるだけ恣意性を排除し、
市場整合的な評価となるように工夫されたものです。

それでも今回のように市場が異常な動きを示すと、
「市場整合的な」評価であるEEVにも影響してしまうわけですね。
難しいものです。

EVに関してはT&D以外でも、次のような不思議な?動きがあります。
今後解読していきたいと思います。

・新契約ANPが前期比18%増、新契約高も増えたにもかかわらず、
 EVの新契約価値は前年の37億円から2億円に減少
 (東京海上日動あんしん生命)

・資産運用以外の前提条件が変わった(詳細不明)ことにより、
 EVの保有契約価値が1904億円→1820億円と減少
 (損保ジャパンひまわり生命)

・新契約ANPでも新契約高でも、第一生命はソニー生命の数倍規模ですが、
 新契約EVはあまり変わりません。
 もちろんEVは単純比較できないのですが、これをどう解釈するべきか。

・T&Dフィナンシャル生命や東京海上日動フィナンシャル生命、
 第一フロンティア生命といった変額年金を主軸とする会社の
 新契約EVがマイナスとなっているのですが、どう見るべきか。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:30:30 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2009年02月15日

テレビ東京「NEWS FINE」に登場します

明日(16日)15:35からのニュース番組に登場予定です。
テーマは「損害保険業界」。
先週末に発表された4-12月期決算と3社統合計画が
話の中心になると思います。

NEWS FINEのHPへ

その4-12月期決算ですが、情報が限られているので
分析するのが結構大変です。
おまけに発表が13日午後に集中した(生損保とも)ので、
しばらくパニック状態でした。

今回の開示内容には不満が残りました。
例えば、9月以降の金融危機で保険会社の健全性に
関心が集まっているにもかかわらず、損保各社は
ソルベンシー・マージン比率やその内訳を公表していません
(この点、生保では一部の会社を除き、公表しています)。

有価証券の含み損益も連結ベースだけですし、
外貨建資産の残高もヘッジポジションもわかりません。

販売面では、自賠責保険の大幅値下げの影響を除いて
分析したいのですが、どうしても推計に頼らざるを得ません。
もっとも、生保は「前年同期比」がなく、単に当期の数字を
出しただけという会社が大半でした。これはひどい。

どうせ公表するのであれば、単にルールに従うだけではなく、
もう少し利用者のことを考えて出してほしいです。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 22:27:59 | コメント(0)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |
植村信保ブログ プロフィール ライブラリー お問い合わせ