植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年07月13日

保険の国際規制の進展

 

9日に保険の国際規制に関する発表があったので、
こちらにリンクしておきます → 金融庁のHPへ

保険には国際的な資本規制がなかったのですが、
現在、保険監督者国際機構(IAIS)を中心にして、
「グローバルにシステム上重要な保険会社(G-SII)」
および「国際的に活動する保険グループ(IAIG)」向けの
資本基準の策定が急ピッチで進んでいます。

今回の市中協議文書の発表は、G-SIIに適用する
基礎的資本要件(BCR)に関するものです。

この市中協議文書に対する意見を踏まえたうえで、
IAISと金融安定理事会(FSB)で内容を固め(9-10月)、
11月のG20で承認、というタイトなスケジュール。

このため、BCRは「保険金額×係数」「時価×係数」
といった非常にシンプルな計算方法となっているうえ、
重要なリスクカテゴリー(特に生保)である「ALM」は
対象外となってしまいました。

係数の水準感は、まだよくわかりません。
7-8月の調査結果を見てから決めるとのことです。

他方、BCRと対比する自己資本のなかで、
Margin Over Current Estimateと呼ばれる部分
(≒保険負債の含み益)をコア資本とするかは
まだ議論中のようで、こちらも今後に注目です。
⇒修正:「含み益」は言いすぎで、うちリスクマージン部分ですね

IAISの調査によると、G-SIIのコア資本の38%を
この部分が占めるそうなので、小さい話ではありません。


なお、以前自分のブログでも書きましたが、
「G-SII」と「IAIG」の2系統の話が同時に進んでおり、
流れがわかりにくくなっています。

5月に出たニッセイ基礎研・荻原さんのレポート
参考になるかもしれません。

また、日本損害保険協会のHP(国際保険監督規制)も有益です。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真の左は現在の国分寺、右はかつての国分寺の跡地。
 奈良時代には七重塔が建っていたそうです。


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2014年07月06日

金融モニタリングレポート

 

今回も金融庁関連で恐縮です。
年度替わりでいろいろと公表されるものですから...

昨年9月に公表された金融モニタリング基本方針の成果をまとめた、
「金融モニタリングレポート」が公表されました。
金融庁HPへ

本レポートは、

・金融システムの現状
・業態別の金融モニタリングの概要
・テーマ別の水平的レビューの概要
・当局としての取組み

という構成で、全部で111ページあります。

業態別のところでは、「3メガバンク」では海外G-SIFIsとの対比
(海外G-SIFIsについてかなり調べたようですね)が目立ち、
「グローバルな金融システムのなかでのメガバンク」という
金融庁の意識が強く伝わってきます。

また、「地域銀行」では、モニタリングの一環として
大口融資先へのヒアリングなども行っており、
ビジネスモデルの中長期的な持続性を探っています。

これらに比べると、保険会社(特に生保)のモニタリングは
あまり踏み込んだ話がなく、ちょっと拍子抜けしました。
問題がなかったということでしょうか?

あえて言えば、損保の統合的リスク管理(ERM)の記述が、

 「経営戦略と一体となったリスク管理態勢については、
 総じて整備途上」

 「エマージングリスクについては、リスクの洗出しなどの
 取組みを開始した段階」

など、前回のブログで取り上げた「ORSAヒアリング」と違い
「損保は進んでいる」というトーンではなかったこと。

生保に比べれば進んでいるとしても、絶対評価としては
まだまだということなのでしょうか。
もう少し記述があるといいのですが、10行ちょっとでは...

テーマ別の水平的レビューで私の目を引いたのは、
「内部監査」「ITガバナンス」のところです。
メガバンクの項目と同様に、海外G-SIFIsとの対比を通じ、
不十分なところを浮き彫りにしようという手法が見られます
(ITガバナンスの「連邦型」「中央集権型」など)。

全般的に、今回は海外大手金融機関の経営管理の把握に
力を入れたことがうかがえますね。


ちなみに今後についてですが、3メガバンクは

 「来事務年度においても、引き続き・・・」

とある一方、保険会社では、

 「引き続き、契約者や経営に影響を与える顧客保護等管理態勢
 や経営管理態勢を中心にモニタリングを強化する必要がある」

 「保険会社は規模やビジネスモデルが多様であることから、
 業務特性やリスクプロファイル等を踏まえ、リスクの高い分野に
 重点を置いたモニタリングを徹底する必要がある」

これだけを見ると、大手以外の会社に対するモニタリングを
強めていくのではないかと思えます(あくまで私の想像です)。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※松坂屋の姿がなく、免税店(ラオックス)が賑わっており、
 銀座の中央通りはだいぶ様子が変わりましたね。


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2014年07月03日

ORSAヒアリング

 

金融庁が「統合的リスク管理態勢ヒアリング」の結果を
HPで公表しました(6月30日)。
金融庁HPへ

ヒアリングの中身もさることながら、今回はORSAレポート
(≒ERMに関する自己評価)の試作と提出を要請し、
そのレポートに基づいてヒアリングを実施したことが特徴です。

しかも、対象となった保険会社・保険持株会社25社を見ると、
大手保険グループだけではなく、朝日火災、オリックス生命
といった中堅生損保や、かんぽ生命も含まれています。

注目される「ORSAレポートの提出義務化」に関しては、
「検討を引き続き行って参りたい」としかありませんでしたが、

・監督当局として各保険会社のERM態勢を、業界横断的に
 横串を通して把握するツールとして有用であることが確認できた

・多くの会社から社内・グループ内におけるリスク文化の醸成・
 ERM態勢の浸透に有用なものであるとの声が多く聞かれた

といった前向きなコメント。


今回はレポートの試作にあたり、予め項目を示した模様です。
この記載要領をどこまで示すべきかは悩ましいところでしょう。

自己規律という点を重視するのであれば、大項目だけを示し、
不足分はヒアリングでカバーすればいいと思います。
ただ、レポートを検証する行政当局は大変です。

他方、記載要領を細かく規定すればするほど、当局としては
横串を通しやすくはなるものの、記載要領に当てはめる作業が
ORSAレポート作成の中心になってしまいがち。
それでは何のためのORSAだかわからなくなってしまいます。

個人的にはあまり細かくしないほうがいいと考えていますが、
いかがなものでしょうか。


さて、内容についての詳細はHPでご覧いただくとして、
私が興味深く感じたのは次の2点です。

まず、ORSAの定義として広義と狭義の2つを示していることです。

狭いほうは、

「自らが抱えるリスク量と、リスクに対する備えとなる資本を比較する
 ことにより、自らの健全性を評価するもの」

と、文字通り「リスクとソルベンシーの自己評価」を示すのに対し、

「保険会社・グループが現在及び将来のリスクと資本等を比較し、
 資本等の十分性の評価を自らが行うとともに、リスクテイク戦略等の
 妥当性を総合的に検証するプロセス」

「ORSAは統合的リスク管理(ERM)における中核的なプロセス」

など、金融庁は広い意味でのORSAの定義も示しており、
ORSAレポートはこちらのORSAについての記載を求めています。
すなわち、「リスクテイク戦略等」を含むレポートです。

もう一つは、次のくだりです。

「損害保険会社に加え生命保険会社においても、リスク選好に基づく
 ERM フレームワークの具体的な整備を実施ないしは検討を開始する
 社があり、ERM 態勢の改善・充実が進展していることが確認できた」

前回のヒアリング結果には、「損害保険会社が進んでいる」という
記載はなかったので、興味深く読みました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※今年も慶大で講師を務めました。質問は少なめでしたが、
 熱心な学生さんが多かったようで、うれしいですね。


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