
2009年09月29日

金融庁が8月末に公表したソルベンシー・マージン比率の見直し案について、
あくまで個人的にではありますが、コメントを出しました
(なお、コメントの募集は29日の夕方に締め切られています)。
内容は二つ。
一つは責任準備金の一部(保険料積立金等余剰部分)に
算入制限を設けることについてです。
全く算入しないというのであれば、それはそれで理屈がつくのですが、
「期限付劣後ローン等の負債性資本調達手段等と合算して、
中核的支払余力(コア・マージン)を限度とする」
という案が示されています。そうすると、
・トータルバランスシートアプローチ(=支払い余力を確保するにあたり、
負債でも純資産でも同列に扱う)ではないということか?
すなわち、負債中のサープラスは重視されないということか?
経済価値ベースのソルベンシー規制に移行した際はどうなるのか?
・標準責任準備金(=純保険料式)の達成よりも、コア・マージンを
優先すべきなのか?
いわゆる純保行政との決別なのか、それとも両方求めるのか?
・経済価値ベースの負債評価やリスク管理を促す一方で、
会計上の純資産をあまりに重視すると混乱を招かないか?
などの疑問が浮かんできます。このあたりを確認してみました。
もう一つは実施時期の問題です。
2012年3月期からの導入となっていますが、少し遅いのではないでしょうか。
EUで経済価値ベースのソルベンシー規制(=ソルベンシーⅡ)が
導入されるのが2012年。IAISもグローバル規制の実現に向けて
精力的に動いています。
日本のこの動きを無視することはできないはずですが、
この見直し案の実施直後に新たな見直しが可能なのでしょうか。
健全性規制に明るくないかたには、ややわかりにくかったかもしれません。
ご容赦下さい。
※写真は伊勢・おかげ横丁です
2009年09月03日

7/16のブログで書いた金融商品会計の見直し案について
IASB(国際会計基準審議会)が東京で円卓会議を開いたので
私も出席してきました
(FASB=米国財務会計基準審議会との合同開催)。
IASBのHPへ
現在の保有区分は主に「満期保有目的」「売買可能」「トレーディング」です。
これをIASBは「公正価値/純利益」「取得原価」の2区分に集約する案を、
FASBは基本的に「公正価値/包括利益(売買目的、株式は純利益)」にする案を
それぞれ出しています。
円卓会議は午前、午後の2回開かれました。
午前の参加者は20人程度で、このうちアナリスト関係が6人、
コンサルタントが3人程度、銀行・生保関係が4人、メーカーが2人、
ASBJ=日本の企業会計基準委員会から3人、といったところでしょうか。
海外からの参加者もいました(韓国、香港、シンガポールなど)。
加えて、オブザーバーがたくさん。50人くらいいたでしょうか。
これは私には想定外でした。
会議では参加者がIASB/FASBのメンバーに対し、質問やコメントをしました。
名札を縦にすると、順番に発言の機会が与えられるスタイルでした。
やはり一番多かったのが、いわゆる持ち合い株式の評価についての発言でした。
IASB案では例外として、公正価値でも包括利益でOKという案を出しています。
ただ、売却益や配当収入が純利益に反映されないため、
多くの参加者からこの点についてコメントがありました。
IASBからは「例外の例外を作ろうというのだから、単なる要望ではなく、
そうするべき明確な理由を提案してほしい」とのこと。
そうでなければ動けないという感じでした(あくまで個人的な印象ですが)。
私はと言えば、発言者のなかで最もつたない英語で次のようなコメントをしました。
・FASBの「公正価値/包括利益/売買損益を純利益に反映」を支持
IASB案では現行の「満期保有」よりも自由度が高くなってしまうのが難点
・保険負債が公正価値になると、保険会社は資産・負債が時価・時価に、
他方、銀行は資産・負債とも償却原価が大半となると見られ、
両者を比べるのが難しくなる
・分析上、純利益をそれほど重視していない。ただ、多くの人が参考にしているので、
「純利益に反映」ではなく、「包括利益/売買損益を純利益に反映」が妥当
2時間はあっという間でしたが、かなり疲れました(TT)
※写真は大倉山「ピオン」のケーキです
2009年09月01日

今回もソルベンシー・マージン比率(SMR)の見直し案について。
見直し案が実現すれば、大手生保のSMRは現行の半分程度に
下がるとのことですが、自分でもざっと見てみました。
国内系生保では株式保有が多い会社ほど比率が下がるようです。
これはもともとの見直し案の通りです。
例の、「全期チルメル式責任準備金超過部分(全チルV超過部分)」
+「劣後特約付き債務」<「中核的支払余力」 という限度を設けた影響は、
少なくとも2009/6末時点では、それほど大きくなさそうです。
ただし、中核的支払余力の計算には「その他有価証券評価差損」
を含むのがミソとなっています(差益は含みません)。
つまり、内部留保の取り崩しだけではなく、有価証券含み損が拡大しても
中核的支払余力が減少し、全チルV超過額&劣後債務の算入限度が減り、
限度に達した会社ではソルベンシー・マージン比率が大きく下がる仕組みです。
また、新聞にコメントを出した段階では気がつかなかったのですが、
ソニーやオリックス、プルデンシャル、ジブラルタ、三井住友海上メットライフ
といった会社は、全チルV超過部分が中核的支払余力に比べて大きいため、
現状では比率がかなり下がるとみられます。
だからといって健全性に問題があるわけではありません。
おそらく経済価値ベースに移行した場合には、
また景色が違ってくるように思います。
※写真は地元・大倉山です。
植村信保(Uemura Nobuyasu)。
保険アナリストとして、主に生命保険会社や損害保険会社の経営分析を行っています。
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