植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年03月16日

関東部会でスピーチ

 

3/14(金)に日本保険学会・関東部会でスピーチをしました。
演題は「保険会社ERMの現状と金融行政の動向」です。
日本保険学会のHPへ

質疑応答の際、「行政がERMを促すのは不可解」という質問がありました。
ERMが会社価値の拡大を目的とするのであれば、行政がそれを促すのは
理解できない。最低資本要件だけ設定すれば十分ではないか、という
ご質問だったと思います。

確かに、保険会社にしてみれば、株主から言われるならともかく、
もし行政から「会社価値を高める経営をせよ」と言われるのは、
余計なお世話という気持ちになるのもわかります。

ERMはあくまで保険会社自身のために推進するものですし、
誰かに言われて取り組むものではないと思います。


他方、行政の立場になって考えてみましょう。

保険契約者を保護するには、もちろんコンプラ面も重要ですが、
何より保険会社が潰れてしまっては困るわけです。
そこで行政は保険会社の健全性を確保するため、規制を設けます。

一番簡単なのは、万一に備え、バッファーを持たせることです。
最低限保有すべき資本を設定し、保険会社に守らせます。

しかし、設定すべきバッファーの水準はなかなか難しいものです。
バッファーが小さければ、万一の際に役立ちません。

求めるバッファーを大きくすると、潰れる確率は減るものの、
契約者や株主への還元は犠牲になります。
極論すれば、あまりに要求されるバッファーが大きいと、
保険会社に投資する株主はいなくなってしまいますし、
保険会社を経営しようという人がいなくなってしまいます。

しかも、バッファーが大きくなると、経営者が安心してしまい、
リスク管理が疎かになりがちです。

そこで行政が目を付けたのがERMです。

保険行政として「リターンを挙げて下さい」とは言わないまでも、
「健全性を確保しつつ、会社価値の持続的向上を図る」ための
ERMであれば、健全性の確保という点で契約者保護が図れますし、
「会社価値の向上」ということで経営者の関与も期待できます。

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政府が財宝を泥棒から守るため、ガードマンを雇うことにしました。
まず、ガードマンを雇う基準を決めなければなりません。

そこで、強いガードマンを雇うべきという考えから、明確な基準として
「100㎏のウエートを持ち上げられること」としました。
100人の応募があり、政府はこのうち10人を採用しました。

ところがある日、財宝の一部が泥棒に奪われてしまいました。
政府が残る財宝を守るためには、どうしたらいいでしょうか。

ガードマンを雇う基準を厳しくして、100㎏のところを200kgにする。
それも一案かもしれませんが、応募者は減るでしょうし、
そもそもこの基準がリスクに見合っていないのかもしれません
(まあ、そうでしょうね)。

ある警備会社に聞くと、「うちでは、単なる力持ちではなく、
A、B、Cの条件を満たしたガードマンを派遣している」とのこと。
その結果、この会社は業界で優良企業と言われています。

もう一つの警備会社にも聞いてみました。すると、
「A、C、Dの条件を満たしたガードマンを育て、事業を拡大している」
とのことでした。

どうやら警備業界では、強いガードマンをそろえるのではなく、
A、B、C、Dなどの条件を満たしたガードマンを派遣している会社が
顧客の支持を得ているようです。

そこで政府はガードマンの採用基準を見直すことにしました。
ウエートを150kgに上げるとともに、A、B、C、Dの条件を満たす
ガードマンを雇うと発表し、10人を採用しました。
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やや無理がある例えかもしれませんが、このような政府の行動は
不可解でしょうか?


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真はオランダの市場です。

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| post at 21:39:50 | コメント(1)  | カテゴリー : 06. リスク管理関連 |
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