
2012年02月26日

AIJ投資顧問の運用資産消失事件には驚きました。
年金資産は信託銀行が分別管理しているので安心、
というのは私の単なる思い込みだったようです。
おそらく運用会社の監督強化が求められるのでしょう。
ただ、今回の問題の本質は果たしてそこなのでしょうか。
生保とは違い、企業年金の収益源は運用リターンだけ。
予定利率を下回る運用では積立不足が発生してしまいます。
積立不足を解消するには母体企業に穴埋めしてもらうか、
制度を変える(=掛け金を上げる/支給額を減らす)、
あるいは解散するしかありません。
もし予定利率が国債利回りと連動しているのであれば、
リスクを取った運用をしなくても制度は回るでしょう。
しかし、予定利率を2.5%未満としている企業年金は
わずか1割強しかないそうです。
みずほ総合研究所の資料
企業年金のうち、中小企業が多い厚生年金基金には、
未だ予定利率が5.5%のところが500以上もあるとのこと。
これはすなわち、リスクを取らない運用をしていたら、
確実に積立不足に陥るというわけですね。
リスクを取った運用がうまくいかずに積立不足になるばかりでなく、
リスクを取らなくても積立不足に陥ってしまう。
今回の事件の根底には、このような現状があるように思います。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
※写真は横浜ベイシェラトンです。
2012年02月18日

3メガ損保の2011年4-12月期決算発表があり、
自然災害の影響により3グループとも赤字となりました。
タイ洪水に伴う支払見込額は正味で約4500億円です。
東日本大震災の支払見込額(家計向け地震保険を除く)が
約2000億円ですので、これを大幅に上回ります。
ロイズが保険業界全体の支払見込額を150~200億ドル
と試算しています(2/14)。3メガ損保の支払見込額が、
報道の通り9000億円(元受ベース)だとすると、
全体の5~7割を日本勢が占めることになりますね。
3メガ損保は統合リスク管理の現状を公表しており、
リスクに対する資本の余裕度を示しています。
例えばMS&ADは5500億円超、NKSJは5000億円程度
(いずれもタイ洪水の影響を反映)とのことですから、
グループ全体の経営が揺らぐことはなさそうです。
ただ、リスク管理という観点から考えてみると、
今回の多額損失の発生は、従来の自然災害による損失とは
かなり異なっているように見えます。
過去に多額の保険金支払いが発生した自然災害は、
主に台風などによる国内の風水災です。
それなりに信頼性のあるリスク計測モデルがあり、
保険会社にとってある程度「知っている」リスクでした。
もちろん、過去に経験したことのない巨大台風により
支払いが予想外に膨らんだケースもありましたが、
どの規模の災害が発生すれば、どの程度の損失となるか、
その前提として、自社のエクスポージャーはどの程度なのか、
保険会社はこれらを十分把握していると思います(期待を込めて)。
しかし、今回のタイ洪水でここまで保険損失が拡大するとは、
誰もわからなかったのではないでしょうか。
①大雨が降る → ②洪水が発生 → ③保険の対象に被害が発生
50年ぶりの記録的な大雨に加え、
・熱帯雨林の減少による森林の保水能力が低下していた
・ダムの放水が遅れ、複数のダムで同時放水となった
・デルタ地帯なので、洪水が起きるとなかなか排水されない
などが被害を大きくしたと言われています。
あるいは、ムーディーズのニュースリリース(2/6)によると、
再保険業界はタイの洪水災害に関するリスクモデルを
持っていないとのことですから、保険業界がタイ洪水のリスクを
過小評価していた可能性もあります。
これら①や②の話に加え、③についても気になります。
例えば、保険会社はどのような引き受けかたをしていたのか、
グループとしてエクスポージャーの全体像を把握していたのか、
といった点です。
いずれにしても、「予想外の自然災害なので仕方がなかった」
で終わらせてはいけないのでしょうね。
あくまで個人的なコメントですが...
2012年02月10日

保険会社の抱えるリスクには、リターンを得るために
能動的に取るリスクと、できるだけ避けたいリスクとがあります。
システムリスクは後者の代表的な例です。
2日に東京証券取引所でシステム障害が発生しました。
海外取引所との競争にさらされている東証にとって、
システム障害はかなりのダメージです。
9日の朝日新聞によると、東証の担当者が2日の午前1時半ごろ、
システム(サーバー)の故障に気づき、富士通に連絡したところ、
富士通から「予備のサーバーに自動的に切り替わる」と言われました。
しかし、その5時間後、東証は予備サーバーに切り替わって
いないことに気づきます(証券会社からの苦情でわかったようです)。
その後、手動で予備サーバーに切り替えたものの、
動作確認などを行う必要があり、取引開始に間に合わず、
241銘柄が売買停止となってしまいました。
「どうして予備システムに自動的に切り替わらなかったのか」
というのが直接の問題ですが、この記事が本当だとすると、
「どうして予備システムに切り替わっていないことに
5時間も気がつかなかったのか」
という話になりますね。
なお、金融庁が1月20日に公表した、
「金融機関におけるシステムリスクの総点検の結果について」
を見ても、点検項目のうち、「システムリスクに対する認識等」
「障害発生時等のリスク管理態勢のあり方」などは、
更なる改善が必要な状況とのこと。保険会社はどうでしょうか。
金融庁のHPへ
※写真は横浜の風景です。
植村信保(Uemura Nobuyasu)。
保険アナリストとして、主に生命保険会社や損害保険会社の経営分析を行っています。
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