植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年10月22日

「保険会社と金融システム」

 

先のIAIS(保険監督者国際機構)ソウル年次総会で
日銀総裁が「保険会社と金融システム:中央銀行の視点」
というスピーチをしています
(恥ずかしながら知人に教えてもらいました^^;)
日本銀行のHPへ

講演録(の邦訳)を見ると、いくつか気になるところがありました。

現在のグローバル金融市場の動きを踏まえ、

①現在の低金利をごく例外的な事例と位置づけてよいものか、
 保険会社の経営者も規制・監督当局もよく考えなければならない

②ソブリン・リスクの高まりは、保険会社が推進してきたリスク管理の
 高度化(=超長期国債の購入によるミスマッチのリスクの削減)の
 見直しを迫ることになるかもしれない

③長期的な視点から投資ができる保険会社にとって、
 市場のゆがみをとらえて投資に踏み切ることが期待されるが、
 仮にそうした行動をとりにくくなっているとしたら、その原因は何なのか、
 当局はどのように対応すべきなのか、よく考えなければならない

と話しています。

①はそうだと思いますし、②もわからなくはない(日本のこと?)ですが、
③の「市場のゆがみをとらえて投資に踏み切る」とはどういうことでしょう。
「ファンダメンタルズから乖離していると判断したら投資しろ」
(株式?為替?)ということなのでしょうか。

低金利が続くかもしれないなか、ソブリン・リスクの高まりによって
超長期債購入による金利リスクの削減もままならない、
そんな状況で、保険会社に「市場のゆがみをとらえた投資」
(=リスクをとることですよね)を期待するのが本当にいいのか
「よく考えてみなければなりません」。


もうひとつ、「規制・監督の設計:必要なバランス」のところでは、

「長期調達のウェイトの高い保険会社は、銀行に比べ
 金利リスクや流動性リスクにさらされにくい」

という指摘があります。日本では「金利リスク」が顕在化して
「逆鞘問題」が発生しているはずなのですが...

どうも銀行からみた生命保険会社への理解は、
「すぐに返さなくてもいい負債を持つ長期投資家」
「(時価評価しなければ)金利上昇でも大丈夫」
といったもののように感じてしまいます。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は神戸・ポートアイランドです。
 日本保険学会の年次大会に参加しています。

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2011年10月19日

わかってもらうには?

 

「アゴラ」というオピニオンサイトのなかに、
比較的最近書かれたこんな記事を見つけました。
あなたの生命保険は大丈夫 -超長期国債依存が進む生命保険会社-

ご覧いただければわかりますが、生保のリスク特性を
全く理解していない内容となっています。

・地方銀行と同様に、生保も国債価格が下落すると、
 多額の損失が発生し、経営危機となる会社も出てくるはず。
・万が一のリスクに備えてと保険を売っておきながら、
 保険会社自らは国債の下落リスクに無頓着。

言うまでもなく、短い預金を長期国債で運用する地方銀行と
超長期の保障を提供する生保では、金利上昇による影響は
全く異なります。
これまでブログで何度も書いてきた通りです。

ただ、少し視点を変えて、相手の土俵で考えてみましょう。
すなわち、「経済価値ベース」という言葉を使わずに
相手を説得できるかどうかです。

相手が銀行についてはそれなりに理解している前提で、
例えばこんなのはどうでしょうか。

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Q: 銀行のように生保も国債を大量に保有しているので
 国債価格が下がる(つまり金利が上がる)と大変なのでは?

A :銀行と生保では資産と負債、つまり調達と運用の構造が
 全く違います。
 銀行のように調達よりも運用のほうが長いと、金利が上がると
 調達金利が先に上がるので苦しくなります。
 ところが生保は運用よりも調達のほうがはるかに長いので、
 運用金利が上がって楽になるのです。

 考えてみて下さい。この20年、生保は金利が下がり、
 逆ざやで苦しんでいたのですよね。
 だから、金利が上がったら当然楽になるのです。
 金利が上がっても下がっても厳しい、なんてことはありません。

Q: その前に国債価格の暴落で大変なことになるのでは?

A: もちろん、欧州某国のように、元本が毀損するような事態
 にでもなれば話は別ですが、そうでなければ大丈夫そうです。

 生保の超長期国債は「責任準備金対応債券」といった
 時価評価しなくてもいい区分で持っていることが多いので、
 損失計上は解約が殺到し、資産売却を迫られたときだけです。
 売らなければ基本的に損失は表面化しません。

Q: 損失が表面に出ないだけで、資産は劣化してるのでは?

A: 確かに資産の価格は下がりますが、資産だけを見るのは
 片手落ちではないでしょうか。
 金利が上がると将来支払う保険金も実質的に小さくなりますよね。
 つまり保険会社の負債が小さくなるということです。

Q: 金利が上がったら、解約して金利の高い保険に流れるのでは?

A: 貯蓄目的の保険ではそのようなことがあるかもしれません。
 ただ、保障を目的とした商品が中心で、他の金融商品と比べ、
 これらは金利感応度があまり高くはなさそうです。
 それに生保に加入するには健康状態も影響しますよね。
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いかがでしょうか。なかなか難しいものですね。
「金利上昇リスク」への説得はなんとかなりそうですが、
「日本国債への集中リスク」についてはどうでしょうか。

「経済価値ベース」のいい説明方法とともに、
皆さんのお知恵をぜひお貸し下さい^^


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※秋の大運動会がありました。
 初めて開門直前に行ったところ、開門と同時に先頭集団が猛ダッシュ。
 まさに早朝の大運動会でした。


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