植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年05月17日

一時払終身保険のALM

 

報道によると、明治安田生命の銀行チャネルを通じた
一時払終身保険の収入保険料が1兆円を超えたそうです
(2010年度)。
記事では住友生命や日本生命の商品も紹介されています。

他方、第一生命グループは定額の一時払終身保険ではなく、
同じ一時払いでも変額終身保険に力を入れているとか。
死亡保険金は保証されていますが、解約返戻金は
運用成果に左右されます。

同じ大手生保でも銀行窓販の販売戦略がここまで異なるのは
非常に興味深いですね。


興味深いといえば、記事のなかにも、
「金利上昇時に解約が殺到する可能性が高く、リスク管理が難しい」
とあるように、私も一時払終身保険のALMは気になるところです。

営業職員チャネルによる平準払いの終身保険と違い、
銀行チャネルを通じた一時払終身保険には、
「一時払い」「銀行チャネル」「高齢層」「貯蓄重視」
などの特徴がありそうです。

平準払いの終身保険であれば、予定利率が低い契約でも
おそらく契約者の多くは保障目的で加入しているので、
金利上昇時に解約が殺到する可能性は低いでしょう。

ですから金利リスクを減らすには、マッチング戦略が
基本となるように思います(解約等への考慮も必要ですが)。

他方、銀行に勧められて一時払終身保険に加入した場合、
金利上昇時にどのような行動がとられることになるのでしょう。
解約返戻金が一時払い保険料を上回った状況であれば、
銀行は顧客に他の商品への乗り換えを勧めそうです。

しかし、例えば相続対応として加入した面が強ければ、
思ったほどは解約に動かないのかもしれません。

つまり、保険会社は超長期の金利リスクの管理をしつつ、
顧客の持つ解約オプションにも備える必要があるわけです。
しかも、顧客がそのオプションを行使するかどうかは
金融市場の動向だけでは決まりません。

果たして各社がどのようなALMを構築しているのか、
非常に興味がありますね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は鶴見川の源流の泉です。
 ボランティアのかたが案内してくれました。


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| post at 23:37:16 | コメント(3)  | カテゴリー : 06. リスク管理関連 |

2011年05月14日

東電のリスク情報の開示

 

決算短信には「事業等のリスク」というリスク情報の開示があり、
「投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる
事項」を記載することになっています。

公的管理下に置かれることになった東京電力の開示を見ると、
原発事故に直接言及するような記述は見当たりませんでした
(2010年3月期)。

ただ、リスク情報の最初の項目である「(1)電気の安定供給」には、

「自然災害、設備事故、テロ等の妨害行為、燃料調達支障などにより、
 長時間・大規模停電等が発生し、安定供給を確保できなくなる可能性
 があります。その場合、復旧等に多額の支出を要し、当社グループの
 業績及び財政状態は影響を受ける可能性があるほか、社会的信用を
 低下させ、円滑な事業運営に影響を与える可能性もあります」

という記載があり、今回の事態はこれに該当すると見るべきでしょうか。

東京電力のHPへ


他の電力会社はどうかというと、例えば中部電力も、
2010年3月期は東京電力と同様でした。
「(3)その他のリスク ①操業トラブル」のなかで、

「地震・台風等の大規模な自然災害、事故やテロ行為等により、
 当社及び当社が受電している他社の供給設備にトラブルが
 発生した場合には、業績は影響を受ける可能性がある」

と書いてあるだけでした。

しかし、2011年3月期には「(2)①供給設備の停止」が設けられ、
原発事故を踏まえた浜岡原発についての記載がありました。

中部電力のHPへ


関西電力は2011年3月期でも、前年とあまり変わっていません。

「⑦操業リスクについて」で、

「台風や地震・津波などの自然災害や事故、コンプライアンス上の
 問題等により、当社の設備および当社が受電している他社の
 電源設備の操業に支障を生じた場合、当社グループの業績は
 影響を受ける可能性があります」

とあるだけです。もっとも、リスク情報の冒頭に、

「今後、東日本大震災を契機とした、経済状況やエネルギー・
 環境政策の変化などの影響を受ける可能性があります」

という記載がありました。


リスク情報は単に投資家のために開示するというよりは、
まずは経営が自社のリスクプロファイルをきちんと把握し、
それを投資家にも開示するというのが本来の姿です。

しかし、電力会社はここで書かれている情報を
経営で活用しているのでしょうか?

「電気の安定供給」「操業トラブル」に記載された内容だけでは、
あまりに粗くて使いようがないと思うのですが。


※今回も伊豆の写真。かつての通勤・通学電車との再会です。


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