植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年04月09日

経済教室「ベキ分布」

 

7日の日経「経済教室」は、明治大学の高安秀樹さんによる
「平均の概念 意味なさず」でした
(「統計の常識」超す大災害の本質という副題あり)。

興味深く拝読したものの、どこかモヤモヤが晴れませんでした。

ポイントは次の通りです。

・特異な性質を持つ「ベキ分布」の研究進む
・大震災、ブラック・スワン現象が随所に発生
・想定外への対処、ヒト、モノ、知恵総結集で

ベキ分布とは、発生する確率がその値のベキ乗(累乗)に
比例するというもので、地震をはじめ、多くの自然現象や
経済現象、社会現象で観測される非常に重要な分布だそうです。

Wikipediaへ

高安さんは本稿のなかで、

「ベキ分布に従う災害では、過去のデータから平均的に
リスクを推定するという常識的な科学の方法自体に
本質的な限界がある。残念ながら、この問題の深刻さは
まだあまり広く認識されていない」

と述べています。
ただ、少なくとも金融界でリスク管理に関わっていれば、
これはもはや常識ではないでしょうか(ベキ分布は知らなくても)。

金融危機で正規分布を踏まえたリスク管理の限界が示された後も
相変わらずVaRなど正規分布を前提としたツールを使っているのは
代わりとなる適当なツールが見当たらないからにすぎません。

そして、ツールの限界を補うためにストレステストを実施したり、
エマージングリスク対応を行ったりしているのが実情です
(どこまで有効に機能しているかどうかはともかく)。


過去データから分布図を描き、それで管理ができるのであれば
正規分布でもベキ分布でも活用可能のように思えます。

問題は分布の形状ではなく、どの程度の規模の事象が
どういう頻度で発生するかを、過去データから本当に予測できるのか、
という点ではないでしょうか。

したがって、私には問題の本質は分布の違いにあるとは思えないのです。


なお、日経新聞ばかりで恐縮ですが、9日の国際面に興味深い記事
「震災、変わる海外のまなざし」が出ていました。

欧米では「考えられないことを考えよ」「決して起こらないとは
決して言うな」が安全保障や危機管理の専門家の合言葉。
これに対し、日本では「起こってはならないこと」とのこと。

むしろ「大災害の本質」はこちらなのかもしれません。


※いつもの通り個人的なコメントということでお願いします。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 16:13:02 | コメント(6)  | カテゴリー : 06. リスク管理関連 |

2011年04月05日

人は見たいものしか見ない

 

情報提供というよりは、自戒を込めて。

週末にSPEEDI(放射能影響予測ネットワークシステム)
の存在を知り、さらに、ドイツやオーストリアの気象庁が
放射性物質の拡散予測図を随時公表していると知りました。
ドイツ気象庁のHP(予測図は下のほうにあります)

ドイツ気象庁が公表しているのは、福島から放出される
放射性物質の相対的な濃度の予測図です。

「相対的」というところが重要で、実際の濃度は反映されておらず、
単に放出された有害物質がある気象条件のもとで、
どのように広がって(薄まって)いくかを予測したものです。

ですから、別途に放射性物質の濃度を確認しなければ
この予測図だけでは危険度はわかりません。
ただ、もし高い濃度の放射性物質が放出された場合には、
この予測図が参考になりそうです。


ところで、私は「週末に知った」と書きましたが、
実は2週間くらい前に同じような情報を、息子から聞いたようなのです。

しかし、その時の私は多忙だったこともあり、
「ネットでは不安を煽るような情報が多い」とか何とか言って、
ちゃんと話を聞かなかったらしいのです(全く記憶にありません)。

地震で高校が早々と休みになり、自宅でPCに向かってばかりの
息子の情報で、しかも、どこかにネット世界への偏見もあり
(自分でもブログやSNSをやっているにもかかわらず)、
全く心に響かなかったというわけですね。

同じような話は会社の経営陣とスタッフの間でも
しばしば起こるだろうなあと、つくづく考えてしまいました。
ERMは奥が深いです。


※日吉駅で横浜マリノスの募金活動です。
  もちろん私も募金に協力し、中村俊輔選手と握手しました^^


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 19:41:14 | コメント(0)  | カテゴリー : 06. リスク管理関連 |
植村信保ブログ プロフィール ライブラリー お問い合わせ