植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年03月10日

国債保有のストレステスト

 

前々回のブログでは、次のようなコメントをしました。

「生保の超長期債投資に全くリスクがないとは言いませんが、
 銀行とはかなり状況が異なるように思います」

しかし、生保の保有資産が国債に集中しているのは確かです。
さらに強いストレスを加えた場合にはどうでしょうか。


週刊ダイヤモンドの人気コラム「野口悠紀雄の『超』整理日記」
最新号(3/12)は「日本国債に関してこれから起こること」でした。

野口先生はコラムのなかで、

・国債消化が困難になれば、日銀が引き受けるにしても、
 海外で購入してもらうにしても、インフレ&円安がもたらされる。

・以上のような事態が予測されると、資産の海外逃避が
 起こる可能性がある。

と述べています。

このようなシナリオを想定した場合、生保の国債保有に
どのような影響が考えられるでしょうか。

このシナリオでは、おそらく長短金利は上昇しています。
前にも触れたとおり、ミスマッチ(負債が長い)を前提にすると、
金利上昇で負債の価値が小さくなり、全体として会社価値は
改善します。

ただ、契約者から見れば、インフレは将来受け取る保険金等が
目減りすることを意味します。
物価が仮に10倍になってしまえば、1000万円の保険金は
実質的に100万円の価値になってしまうわけです。
これでは「生命保険は役に立たない」となってしまいます。

しかも、円安の進行です。強権的な為替管理でもないかぎり、
保険を解約して(円預金の引き出しが先かもしれませんが)
ドルやユーロなど外貨建ての資産に移す動きが加速し、
生保がALMを崩さざるを得なくなる...

個人がそこまで機敏に動くとは考えられないかもしれません。
でも、そういえば1990年代初頭の高金利時代には、
長信銀のワイドを求めて長い行列ができたのを思い出します。


「インフレによって生命保険への信認が揺らぐなか、
 円安を背景に生保からの資金流出が加速する」

というシナリオ設定にどこまで現実感があるかどうか。
これにはまだまだ議論の余地がありそうです。

同時に、ストレステストの難しさも理解できるのではないでしょうか。


※いつもの通り個人的なコメントということでご容赦下さい。

※有松から徒歩20分くらいのところに桶狭間の古戦場がありました。
 公園として整備されたのは最近のようです。


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2011年03月02日

銀行と生保のALMの違い

 

銀行の国債購入が目立っており、金利上昇時に
損失が発生するリスクが懸念されています。

他方、生保も超長期債などの投資を増やしているため、
「生保も大丈夫?」という声を時々耳にします。

ただ、同じ国債投資でも、銀行と生保のALMはかなり違います。

銀行の負債は預金が中心なので、長い債券の購入は
金利リスク(金利上昇時に損失を被るリスク)につながります。
しかも、金利上昇時に預金が流出するリスクも無視できません。

これに対し、生保の負債は一般的に非常に長いので、
超長期債を購入しても、そう簡単には資産と負債の
ミスマッチが埋まらないという現状があります。


もう一歩踏み込んで、生保が抱える超長期債に
損失が発生するのはどのような時か考えてみましょう。

金利が上昇しても、保有区分が「責任準備金対応債券」か
「満期保有目的債券」であれば、含み損を抱えることがあっても
損失は発生しません。
ミスマッチ(負債が長い)を前提にすると、金利上昇時には
負債の価値が小さくなるため、全体として会社価値は改善します。

金利上昇時に含み損を抱えた債券をやむなく売ることになれば、
もちろん売却損が発生します。生保がALMをやむなく崩すとしたら、
多額の保険金等の支払いか、解約の急増でしょうか。

ただ、生保の死亡率や発生率は損保に比べると安定しており、
通常の個人保険で資金繰りに苦しむほどの支払いは考えにくいです。
毎月の保険料収入も資金繰りを緩和します。


解約について想定されるのは、金利上昇時の資金流出と
信用不安に伴う解約ラッシュの2つでしょうか。

確かに銀行が販売した一時払いの貯蓄性商品では
金利上昇時に解約が増える可能性が高いように思います。
しかし、平準払いの保障性商品でALMを崩すほどの
解約ラッシュが発生しうるかどうか
(保険会社はどこまで想定しているのでしょうね)。

信用不安時の顧客動向を予測するのはなかなか困難ですが、
過去の破綻事例をみると、団体年金の流出は目立ったものの、
銀行のように資金繰りに詰まって破綻した生保はなかったようです。


もう一つ考えられるのは、債券をバイ&ホールドではなく、
入れ替えを前提にALMを行っている場合には、
含み損を抱えた債券を売ることになるのかもしれません。

ただ、多くの生保がミスマッチ状態にあることを踏まえると、
入れ替えによるALMの調整がどの程度必要なのか、
純粋なリスクコントロールの観点からはやや疑問です。


こうして検討すると、生保の超長期債投資に全くリスクがない
とは言いませんが、銀行とはかなり状況が異なるように思います。
ちょっと頭の体操をしてみました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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