植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2012年03月31日

日米の変額年金



東京海上日動フィナンシャル生命は28日、全保険商品の
新規取り扱いを7月から一時休止すると発表しました。
同社は変額年金保険を主力としてきた会社で、
変額年金の資産残高は1.9兆円に上ります(2011/12末)。

2008年の金融危機以降、変額年金の販売額は
大きく落ち込んでいます。
最大手だったハートフォード生命(同2.2兆円)は
2009年6月から保険商品の新規取り扱いを休止。
新規参入のアリアンツ生命が、営業開始からわずか3年半で
新契約休止を発表するといったこともありました。

これに対し、金融危機の震源地だった米国の動向は
日本とかなり異なるようです。

LIMRAによると、変額年金の販売額は2007年の1840億ドルから
2008年、2009年と大きく落ち込んだものの、その後は盛り返し、
2011年には1590億ドルと、2006年の水準に回復しました。
LIMRAのHPへ

主要プレーヤーの四半期ごとの売り上げを見ても、
MetLifeの市場シェア拡大やHartford Lifeの縮小、
あるいはAIGの回復など、それなりに動きはあるのですが、
日本のような極端な変動は見られません。

日米でどうしてこのような違いが出ているのでしょうか。
2年前にも同じテーマで書いているのですが(米国の変額年金販売)、
やはり販売チャネルの違いは大きいのでしょうね。
日本ではあまりに売り手主導になっているのだと思います。

銀行による一時払い商品の販売が、金融危機以降も
落ち込んでいないことはご存じのとおりです。
銀行が保険会社に求める商品は、投資商品というよりは、
預金代替商品なのでしょう。

日本の銀行が保険会社と長期的な関係を築こうという
意識が弱いのかどうかはわかりません。
ただ、事実として、多くの銀行が複数の保険会社の代理店となり、
結果的に売れ筋の商品が短期間で変わってきました。
米国ではどうなのでしょうね。

あと、保険会社が変額年金の最低保証を提供するに際し、
市場環境の違いも無視できません。
日本は10年国債利回りが1%前後で推移しているのに対し、
米国はだいぶ下がったとはいえ、10年債の利回りはまだ2%強です。
加えて株価動向の違いもあります。

もっとも、米国でもここまで金利水準が低くなると、
最低保証の提供はそう簡単ではないように思うのですが、
いかがでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は横浜赤レンガ倉庫です。
 商業施設としてリニューアルしてから10周年とのこと。


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2012年03月24日

生命再保険の分析

 

生命保険論集178号に、柳瀬典由さん(東京経済大学)による
「生命保険会社の商品・販売戦略と生命再保険によるリスク管理
 -2001年度から2010年度までのパネルデータ分析-」
が掲載されています。
日本の生命再保険市場を扱った貴重な論文です。
生命保険文化センターのHPへ

柳瀬さんは論文で元受生命保険会社の再保険料(=出再)が
1990年代前半に比べて大きく増加したことを示したうえで、
実証分析の結果、次の3点が明らかになったと述べています。

①保険種目が集中している、年金商品の取り扱いシェアが
 大きい生保会社ほど、出再に対して積極的
②新契約高を急激に拡大した会社ほど、再保険購入に積極的
③ソルベンシーマージン比率が高い会社ほど再保険購入に
 消極的である可能性

「2010年度の再保険料(合計額)は9820億円」とあるので、
そんなに大きいのかと思って調べてみたところ、
上位5社(マニュライフ、ハートフォード、プルデンシャル、
プルデンシャル・ジブラルタ・ファイナンシャル、メットライフアリコ)が
全体の7割、上位10社で9割を占めることがわかりました
(第一フロンティア、アイエヌジー、東京海上日動フィナンシャルなど)。

この顔ぶれからすると、変額年金の最低保証リスク対応が
かなりのウエートを占めていることが伺えます。
「出再に対して積極的」というよりは、「出再が前提」でしょうか。
グループ内への出再も多いですしね。

もうひとつ大きそうなのは、サープラス・リリーフ再保険です。
新契約の初期コストの未回収リスクの軽減を目的とするもので、
いくつかの会社で活用している模様です。
仮に日本がUS-GAAPのような新契約費を繰り延べる会計だったら
おそらく使われることはないのでしょう。

とはいえ、①と②はそれなりに実感と合うのですが、③はどうでしょうか。
資本不足の会社ほどリスクを回避しなければならないと思いますが、
活用状況からはあまり実感がわきません。


なお、受再サイドからも生命再保険について探してみました。
日本損害保険協会のデータを見ると、加盟会社の
正味収入保険料(生命再保険)は242億円でした(2010年度)。
これはトーア再保険によるもので、国内だけかどうかはわかりません。

加盟会社ではありませんが、スイス再保険日本支店の
正味収入保険料(その他)は106億円で、ここに生命再保険が
含まれるのではないかと思います。

いずれにしても、特定の用途を除いてみると、
日本の生命再保険市場はまだまだ未発達と言えそうです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真はベルギービールです。


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