植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2017年02月26日

日本版FD規制の導入

 

FD規制とはフェア・ディスクロージャー規制、
すなわち、上場企業などが公表前の内部情報を
第三者に提供する際、同じ情報を他の投資家にも
出さなければならない、というものです。

日本ではFD規制がまだ導入されていません。
ただし近年、上場企業が証券会社のアナリストに
未公表の業績情報を提供していた事件などがあり、
金融審議会の作業部会が日本版FD規制を検討し、
昨年12月に規制導入を求める報告を行いました。
金融庁のサイトへ(2016/12の金融審報告)

報告書では、規制導入による積極的意義として、

「発行者側の情報開示ルールを整備・明確化する
 ことで、発行者による早期の情報開示を促進し、
 ひいては投資家との対話を促進する」

「アナリストによる、より客観的で正確な分析及び
 推奨が行われるための環境を整備する」

などと述べられているのですが、その一方で、
以前から導入に伴う副作用として、

「(FD規制導入で)企業が情報を提供することに
 消極的になるのではないかとの指摘や、報道
 機関やアナリストによる正当な取材活動等が
 困難になるのではないか」

といった懸念も示されています。
金融庁のサイトへ(2016/4の金融審報告)


2月20日に公表された日本IR協議会による
上場企業を対象にしたアンケート調査の結果も
規制による副作用が心配されるものでした。
調査結果(PDF)

Q:FDルール導入により、貴社の情報開示に
  どのような影響があるとお考えですか

  大きく影響する 8.0%
  やや影響する 43.9%
  変化なし     31.4%
  わからない   16.7%

Q:影響すると回答した企業の具体的な理由

  情報開示に消極的・保守的になる  24.1%
  開示実務の負担が増加する      13.6%
  線引きの判断が必要となる      13.0%
  規制対応や指針・方針の見直しが  11.7%
  必要となる
  中長期的な対話が促進される     1.9%


もし、FD規制の対象となる重要情報の範囲が
よくわからないままだと、規制を強く意識した場合、
「全員に伝える」か「誰にも伝えない」かの二択に
なってしまうのでしょうか(極論ですが)。

とはいえ、確かに下記の線引きは難しそうです。

 「発行者または金融商品に関係する未公表の
  確定的な情報であって、公表されれば発行者
  の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋
  然性があるもの」【規制対象】

 「他の情報と組み合わさることによって投資判断
  に影響を及ぼし得るものの、その情報のみでは、
  直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない
  情報(いわゆるモザイク情報)」【規制対象外】

やはり、FD規制導入後に企業の情報開示が
後退する可能性をある程度は覚悟すべき
なのかもしれません。


ただ、ガバナンス改革として政府が進めてきた
「建設的な対話の促進」は基本的に1対1の対話を
念頭に置いているのだと思います。

企業が求める建設的な対話には、「重要情報」
「モザイク情報」なんてことは些細な話であり、
必要なのは広い視野と深い分析力、というように
有識者の皆さんは考えているのかもしれません。

しかし、広い視野と深い分析力を持つには、
いろいろ話を聞き、知識のストックを増やすことが
不可欠です。

決算データを読むにしても、自分だけで考えるのと、
企業の担当者とやりとりしながら考えるのでは、
理解がだいぶ違います。

FD規制が結果としてそのようなやりとりの場を
なくしてしまうようなことにならないといいですね。

先日取り上げた「顧客本位の業務運営」にも
共通する話ですが、情報の出し手や事業者への
規律を促し、あとはアナリストやFP等におまかせ、
というだけでは片手落ちではないでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※慶大・深尾光洋教授の最終講義に参加しました。

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2017年02月18日

生保の第3四半期決算

 

生保の第3四半期(2017年4-12月期)決算が
出そろいました。

報道では4-12月期の減収減益を伝えるものが
多かったようですが、10-12月期に限って見れば、
トランプ相場による株高や円安の恩恵を受け、
それほど悪い四半期ではなかったようです。

EVを公表している上場会社の数値からも、
悪い決算ではなかったことがうかがえます。

ただ、外貨建資産のウエートが一段と高まり、
大手生保では一般勘定資産の20~30%に
達しています。


さて、例によって、10-12月期の保険料収入を
引き算して確認してみました。

大手は日本、第一、明治安田が減収となる一方、
住友は7-9月期を上回る保険料収入となりました。
同社の新契約年換算保険料を確認すると、
個人年金が7-9月期を上回る水準で売れています。
逆張り戦略なのでしょうか?

銀行窓販の保険料収入も総じて細っているようで、
第一フロンティアや三井住友海上プライマリー
といった窓販専門会社の減収が目立ちました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は韓国南西部の港町、木浦です。
 旧東本願寺が残っていました。

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2017年02月11日

顧客は事業者を選べるか

 

保険流通の業界誌「インスウォッチ」2月13日号で
「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」について
書きました。

金融事業者自身が主体的に創意工夫を発揮して、
顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い、
より良い取組みを行う事業者が顧客から選ばれる。

金融庁は、こうしたメカニズムを実現するため、
「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定し、
事業者に受け入れを呼びかけ、より良い金融商品
・サービスの提供を競い合うよう促そうとしています。

インスウォッチでは、この原則が保険業界にも
関係があるということを示しました。


もっとも、先のメカニズムがうまく機能するためには、
事業者が顧客本位の業務運営に努めるだけでなく、
顧客がより良い取組みを行う事業者を選べるような
環境作りが不可欠です。

この点に関し、12月公表の金融審WG報告書では、

 (1)金融事業者の取組みの「見える化」
 (2)顧客の主体的な行動
 (3)顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化

をあわせて実行していくことが適当としています。
(1)は原則そのものですので、あとは(2)(3)を
どう実現するかです。

金融審WGでは(2)のなかで、

「有識者等で構成される第三者的な機関が、金融
 事業者全般あるいは各金融事業者の取組方針や
 取組状況を顧客の立場から評価し、評価結果を
 公表するといったメカニズムが存在すれば、顧客が
 金融事業者を選別するうえで参考になるのではないか」

という論点が挙げられ、注目していました。

ところが、報告書を見ると、「第三者的な機関」が
「第三者的な主体」に修正されるとともに、続けて、

「例えば民間における自発的な取組みとして形成され」

という文言が加わっていました。

議論の結果、当局主導で第三者的な機関を作るのを
断念したのか、あるいは初めからそのような考えは
なかったのかもしれませんが、残念に思います。

金融事業者には顧客本位の取組みを強力に促し、
あとはマーケットに委ねるということになりますが、
果たしてそれでこのメカニズムが確立・定着するのか。
かつての「(保険の)比較討論会」を思い出します。
「保険の比較情報」はどうなったのか?

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※鹿児島の市電です。軌道の緑化を進めているとか。

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2017年02月05日

知覧特別攻撃隊

 

保険流通の勉強会(RINGの会です)で鹿児島へ。
この機会に、前から訪問したかった知覧に行きました。
写真(左)のような武家屋敷の美しい町並みのほか、
特攻隊の出撃基地があった場所として知られています。

町から少し離れた場所にある知覧特攻平和会館には、
沖縄戦の特攻作戦で戦死した隊員の遺書・手紙などが
遺影とともに展示されていました。

特攻を作戦と呼ぶには抵抗がありますが、
作戦成功イコール死ですから、まさに「十死零生」。
それをわかっていながら飛び立った隊員たちの心情は
どのようなものだったのでしょうか。

遺書や手紙には、「必中必沈」「大命により征かん」
「立派に死ぬことこそ軍人の本分」といった言葉のほか、
「何の恩返しも出来ず、親不孝をお詫び致します」
「御両親様、決して人前では泣いて下さいますな」
などとあり、彼らと同じ二十歳前後の子どもを持つ
親として、胸が締め付けられる思いでした。

写真(右)は当時の軍の指定食堂だった「富屋食堂」を
復元したものです。食堂を経営していた鳥浜トメさんは
隊員たちから母親のように慕われていたそうです。
トメさんの証言を記録した映像にも心を打たれました。

知覧は鹿児島の中心からバスで1時間以上かかりますが、
機会があれば、ぜひ訪れていただきたいところです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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