植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2016年09月24日

健康年齢

 

バイタルデータ(生体情報)、すなわち、BMIや血圧、
コレステロールといった健康状態に関連する指標を
使った保険商品・サービスが注目されています。

20日には、第一生命グループの一員である
ネオファースト生命が「健康年齢」を活用した
生活習慣病保険を12月に発売すると発表しました。
ネオファースト生命のサイトへ

ノーリツ鋼機グループの日本医療データセンターが
保有する約160万人の健診データ等の医療情報を
もとに健康年齢を判定し、更新時の保険料を決める
という仕組みです。


日本データ医療センターの医療情報を保険料算出に
活用した商品は、すでにノーリツグループが設立した
健康年齢少額短期保険会社で販売されています。
健康年齢少短保険のサイトへ

1年更新の医療保険で、5大生活習慣病(がん、
脳卒中、心筋梗塞、高血圧、糖尿病)で入院したら
80万円の給付金を受け取れるというものです。
毎年、「健康年齢」を算出し、保険料が決まります
(ネオファースト生命の「健康年齢」とは別の基準)。

試しに健診データを入力してみたところ、
実年齢よりかなり若い結果が出て、思わずニッコリ。


ただ、考えてみれば、どうしてこの健康年齢に
判定されたのか、〇歳という総合評価だけなので、
見当がつきません。

これまでのバイタルデータを使った保険では、
例えば「ノンスモーカーかどうか」などのように、
ある程度の納得感がある指標で割引が決まります。

これに対し、「健康状態が良好であれば、保険料が
安くなる(または、割引がある)」のはわかるものの、
何となくブラックボックス感が強いという印象です。

総合評価だけでなく、判定についての説明があると
いいのかもしれませんね。
更新時までの生活の参考になるかもしれません。

あるいは、健康年齢が低いと生活習慣病に
どの程度かかりにくいのかというデータを示すのも
一案ではないでしょうか。

リスク細分型の保険では、もちろん、信頼できる
客観的な指標を使うことが大前提ですが、
それをどう示し、顧客にいかに納得してもらうかも
普及のカギとなるように思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は金山の大堰と小学校です。

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2016年09月22日

街並みづくり100年運動

 

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」ですか。
超長期債利回りの極端な低下はなくなったようにも
思えますが、そもそもこれは金融緩和なのでしょうか?


さて、少し前になりますが、夏の終わりに山形県の
金山(かねやま)という町を訪ねました。
かつては羽州街道の宿場町として栄えたところです。

金山町に入ると、写真のような切妻屋根に白壁の家を
あちこちで見かけました。
中には数百年の歴史を持つ建物もあるようですが、
多くはそれほど古い建物ではありません。

歴史ある町の取り組みというと、古い建物を保存し、
観光客を集めようというものが多いようです。

しかし、金山町の「街並み(景観)づくり100年運動」は、
普段の暮らしや風景を重視しています。

例えば、古い建物を保存するのにとどまらず、
切妻屋根に白壁の「金山型住宅」の建築を奨励し、
風景と調和した街並み(景観)づくりを行っています。

金山型住宅を建てると、町から助成金が出ます。
助成件数は約1500件に達しているとのことです。

とはいえ助成金の金額は50万円が限度ですから、
住民が100年運動に共感し、金山型住宅を選び、
建てているのでしょう。

金山型住宅によって美しい街並みをつくるとともに、
地元の木材を使い、地元の職人が建てるので、
地域振興にもつながります。

町内には金山型住宅のモデルハウスもありました。
「若い世代が住みたくなる家とライフスタイルの提案」
がコンセプトです。


金山町では「ドイツ研修」も継続的に行っています。
行政関係者だけではなく、地域の若手リーダーや
関係業界リーダーなど100人以上が、金山町に
よく似たスケールの街々を視察するのだそうです。

「街並み(景観)づくり100年運動」の「100年」とは、
100年かけて美しく住みやすい町を作ろうという
息の長い取り組みなのですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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2016年09月17日

金融庁のレポート

 

15日に金融庁が公表した2つのレポートについて
ごく簡単にコメントします。

1.平成27事務年度 金融レポート

金融庁が1年前に公表した「金融行政方針」の
進捗状況や実績等の評価をまとめたものです。
金融レポート(金融庁サイト)

報道では地域金融機関のビジネスモデルのあり方
(6割以上の地銀が赤字となる試算結果を掲載)が
目立ちましたが、家計における金融資産の動きを
分析した「貯蓄から資産形成へ」も充実した記載です。

保険会社の主なモニタリング結果は、
「M&Aにおけるガバナンスの発揮状況等」「ERM評価」
「保険金等支払管理態勢」だけで、やや寂しいかと
(このうち「ERM評価」は後述のレポートを別途公表)。

生保の資産運用高度化に関する記述(p.74~)も
非常にあっさりしています。

ただし、「貯蓄から資産形成へ」のところに、
銀行等による貯蓄性保険商品の提供・販売について
検証結果が載っていて、

「このパッケージ商品を構成する外国債券と投資信託、
 (掛け捨ての)死亡保険を別々に購入・契約することでも、
 このパッケージ商品と同等の経済効果を得ることができる。
 (中略)今回の検証においては、金融機関代理店の中で、
 このような代替策を提案しているところは見られなかった」

「(販売手数料の上乗せキャンペーンや販売員向けの
 インセンティブ供与について)付与競争の様相を呈しており、
 最終的に、顧客が支払う保険料を上昇させる要因の一つ
 となっている」

といった問題提起がなされています(p.65~)。

全部で100ページ以上ありますが、金融行政の方向性を
知るうえで参考になりますので、連休中にでもぜひ。


2.ERM評価の結果概要について

「保険会社におけるリスクとソルベンシーの自己評価に
 関する報告書(ORSAレポート)及び統合的リスク管理
 (ERM)態勢ヒアリングに基づくERM評価の結果概要
 について」

というのがレポートの正式名称です。
保険会社のERM評価(金融庁サイト)

事実関係を整理すると...

・2015年度から保険会社がORSAレポートを作成し、
 金融庁に提出することになった。

・金融庁はORSAレポートをもとにERMヒアリングを
 行い、保険会社56社のERM評価を実施した。
 
・ERM評価は5段階(プラス/マイナスは不明)あり、
 多くの保険会社がレベル2か3だった(5が最高)。

格付アナリスト経験者からすると、何はともあれ、
評価目線の概要公表は素晴らしいと思います。

保険会社が高評価を取得するのが目的ではなく、
評価を通じて保険会社のERMが実質的によくなる
方向に促すためのツールなので、この「目線」は
おそらく継続的に見直していくのでしょう。

一つ気になったのは、4つの評価項目のうち
「リスクコントロールと資本の十分性」の内容です。

この項目では態勢だけでなく、健全性の充足状況
そのものも評価対象であるように読めます。
ここでいう「健全性の充足状況」が何を示すのか、
保険会社自身の判断でいいのか、あるいは、
金融庁として何らかの目線があるのでしょうか。

今月締切のORSAレポートは日銀によるマイナス金利
政策後の新たな金融環境を反映したものでしょうから、
次のERM評価では、このあたりがより明らかになると
いいですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真はいずれも新庄で見つけたものです。
 「戦友共済生命保険」は実在した会社でして、
 設立してわずか14年後の1932年に第一徴兵保険
 (1999年に破綻した東邦生命の前身)に吸収され、
 消滅しています。 

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2016年09月10日

建設的な対話

 

日本価値創造ERM学会のシンポジウムで、
オムロンのIR担当役員である安藤聡さんと
京都大学・川北英隆教授の対談を聴いてきました。

オムロンはIR優良企業として知られています。
対談といっても、専ら川北さんが安藤さんに
問いかけるスタイルでしたが、安藤さんのお話は
なかなか刺激的なものでした。

投資家には日本版スチュワードシップ・コードが、
上場企業にはコーポレートガバナンスコードが
それぞれ入り、企業と投資家の「建設的な対話」が
期待されています。

しかし、安藤さんによると、長期視点を標榜する
投資家であっても、対話を通じて有益と感じるのは
わずか1割程度とのことでした。

なかには、「会社がスチュワードシップ・コードを
採択したので、対話をしなければならない」から
対話を希望する不勉強なアナリストもいるとのこと。

セルサイドのアナリストへの目線も厳しく、
レポートがショートターミズム(短期志向)のもの
ばかりで、本源的価値を見ようとするアナリストは
ごくわずかという話でした。

もっとも安藤さんは、建設的な対話のためには
企業による情報開示が必要とも話していました。

同じ趣旨のコメントを、最近読んだ、
「点検 ガバナンス大改革」(格付投資情報センター編)
でも見つけました。

「2つのコードが機能し始めた状況のなかで、
 筆者は『投資家の行動は確実に変わりつつ
 ある』と実感しているが、一方で劇的に変化
 したとはいえないことも事実である」

「建設的な対話やその先にあるエンゲージメントを
 行うためには、まず企業がESG(環境、社会、
 ガバナンス)を含めた、さまざまな経営情報を
 自発的に開示することが必要条件だからである」

 ※いずれも同書から引用

もちろん、機関投資家が長期視点で分析・評価し、
企業価値向上のために有益な提案を行うことを
求められているとはいえ、それは十分条件であり、
まずは企業による情報開示が必要ということです。

コードを制定し、社外取締役を入れたからといって
それだけで攻めのガバナンスが実現するのではなく、
むしろここからがスタートなのでしょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は山形新幹線「つばさ」です。
 いまはこのようなカラーなのですね。

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2016年09月03日

解約返戻金の推移

 

生保の四半期開示を時系列でみると、いくつかの会社で
2013年頃から解約返戻金が高水準で推移していました。
ただ、昨年後半から減少に転じ、ピークは過ぎた模様です。

解約返戻金が多かったのは、オリックス(ハートフォード)、
エヌエヌ(旧アイエヌジー)、三井住友海上プライマリー、
東京海上日動フィナンシャル、マニュライフ、などなど。

この顔ぶれは、かつて銀行チャネルで変額個人年金の
販売上位だった会社ですね。

第二次安倍内閣が発足した2012年末の少し前からの
株価上昇で、2000年代前半に購入し、元本割れしていた
変額年金の時価が元本を上回るまで回復したのでしょう。

最低保証があるのに解約するのは、預金代替として
変額年金を購入していた契約者が、再び元本割れとなる
事態を嫌ったのかもしれませんし、あくまで想像ですが、
銀行に勧められ、他の商品に切り替えたのかもしれません
(変額年金を買うときも銀行に勧められたはずですし...)。

このあたりの現場情報がわかれば、手数料開示などの
議論をするに際し、参考になりそうですね。


それでは、高水準だった変額年金の解約返戻金が、
昨年後半あたりからなぜ落ち着いたのでしょうか。

2万円だった日経平均株価が16000円まで下がったように、
変額年金の時価が再び下落した影響はありそうです。

直近の2016年4-6月期は、その前の期に比べると
株価下落の影響はマイルドだったはずなのですが、
解約が落ち着いているにもかかわらず、変額年金の
資産残高は前の期並みに減っています
(時価下落以外の影響も考えられますが...)。

あるいは、時価が回復したら現金化したいという契約者は
概ね解約してしまい、年金として受け取ろうという層が
残っているという可能性もありますね。

このあたりの契約者行動は、おそらく日本の変額年金の
輸入元である米国とは同じではないように思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※築地市場の正門にあった移転案内が撤去されていました。
 環状2号の工事はどうなってしまうのでしょう(写真右)。 


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