植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2016年07月31日

社外取締役インタビュー

 

昨日(7/30)のNHKドラマ「百合子さんの絵本」
第二次世界大戦中、スウェーデン駐在武官として
諜報活動を行っていた小野寺夫妻の話でした。

価値ある情報を送っても、東京では活用されない。
戦後の座談会のシーンも、いかにもという感じ。

キャストが香川照之、薬師丸ひろ子だったので
見ごたえのあるドラマでしたね。

なお、先日ご紹介した「大本営参謀の情報戦記」にも、
ヤルタ会談でのソ連参戦決定を伝える小野寺電が、
大本営作戦課で握り潰されていたことが記されています。


情報と言えば、2016年版のディスクロージャー誌
(または統合報告書)が各社のサイトにアップされつつ
あります。

最近の特徴として、ここ数年のガバナンス改革を反映し、
報告書に「社外取締役インタビュー」を掲載する会社が
増えているようです。

2016年版を確認したところ、大手保険グループでは
第一生命と明治安田生命が社外取締役インタビューを
載せていました。

ご参考までに、インタビューの項目は次の通りです。

<第一生命 ジョージ・オルコット氏(慶大教授)>
 ・日本企業および第一生命のガバナンスを
  どう評価しているか

 ・取締役会における社外取締役の役割

 ・グローバル企業においてガバナンス面で
  考えていくべきことは何か

<明治安田生命 服部重彦氏(島津製作所相談役)>

 ・これまでの当社のコーポレートガバナンスの
  取り組みをどう評価しているか

 ・筆頭社外取締役として果たすべき役割は何か


メガ損保グループの2016年版報告書は未公表ですが、
2015年版の損保ジャパン日本興亜HDの報告書には、
社外取締役4名からのメッセージがありました
(東京海上HDは社外監査役インタビューがありました)。

ちなみに、メガバンクの報告書には、3グループともに
社外取締役インタビューが掲載されています
(みずほは取締役会議長メッセージ)。


インタビューを掲載しても、情報として役に立たない、
形だけのアピールで意味がない、という声もありそうです。

ただ、インタビューを受ける社外取締役にとっては
いい意味でのプレッシャーとして機能するのではないかと
私は前向きに受け止めています。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※久しぶりにプロ野球観戦に行きました。
 野球よりもファンの観戦(観察)が面白かったです^^

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2016年07月24日

IFRSの適用状況

 

本題に入る前にセミナーのご案内です。
8月9日(火)の18:00から損保総研で講師を務めます。

「マイナス金利下における経営環境の変化と
今後の保険会社経営の方向性」という演題で、

 ・マイナス金利政策のインパクト
 ・ソルベンシー規制の進展
 ・新たな環境下での保険会社経営の方向性

についてお話する予定ですので、ご関心のあるかたは
ぜひご参加ください ⇒ 損保総研のサイトへ


さて、一部報道にもありましたが、22日(金)に開催された
企業会計審議会・会計部会の資料によると、国際会計基準
(IFRS)を任意適用する会社(適用予定を含む)が121社に
達しました。このうち適用済の会社は86社です。
金融庁のサイトへ

この「121社」は金融庁による7/15時点のデータですが、
東証の資料によると、6月末時点の任意適用(予定を含む)
会社は141社で、時価総額は東証全体の29%とのこと
(このうち適用済の会社は85社、17%)。

適用会社が着実に増えているなかで、保険業や銀行業には
実のところ適用会社が存在しません。

大手保険グループや大手銀行は外国人投資家が多く、
海外展開も積極的に進めているのに、不思議ですよね。

保険業と銀行業でIFRSの任意適用会社がないのは、
IFRS第4号「保険契約(修正版)」とIFRS第9号「金融商品」
という、両者に影響の大きい会計基準が未完成だったことが
大きいと思います。

ただし、第9号は2018年に発効することになっており、
第4号の修正版も早期の発効に向けて動いていますので、
こちらの制約はいずれ解消されるでしょう。

もう一つの制約としては、業法の存在が挙げられます。
保険業や銀行業にはそれぞれ保険業法、銀行法があり、
事業報告書を作成、提出しなければなりません。

IFRSを任意適用した場合、規制上の手当てがなければ、
有価証券報告書の連結決算をIFRSで作成したとしても、
事業報告書は従来通り、日本基準で求められるので、
二種類の連結決算を作る必要があると思われます。

保険業や銀行業のIFRS任意適用を促すのであれば、
金商法と業法の関係、さらには健全性規制との関係を
整理する必要がありそうです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※早大でも「ポケモンGO」でした。

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2016年07月17日

ドイツ生保と低金利

 

少し前の話で恐縮ですが、IMFがドイツ銀行を
システミックリスクの影響が最も大きい銀行と
指摘したというニュースをご覧になったでしょうか。

遅まきながらIMFの報告書(6/29公表)を確認したら、
これはドイツに対する金融セクター評価プログラム
(FSAP)のストレステストに関するものでした。
IMFのサイトへ

FSAP GERMANYなので、G-SIBに指定されている
ドイツ銀行のシステミックリスクに関する分析結果が
載っていたのですね。

次回のFSAP JAPANでは、3メガバンクの分析結果が
出ることでしょう。


ところで、この報告書にはドイツ生保のストレステスト
の結果も示されています。

金利低下や株価下落、公社債のスプレッド拡大
といったショックに対し、ソルベンシーIIのSCR比率
(日本で言えばソルベンシーマージン比率でしょうか)
がどこまで影響を受けるかをテストしたものです。

ショック時の数値もさることながら、二種類のSCR比率、
すなわち、16年間の経過措置(※)の適用前後の比率で
ストレステストを行っているのが目を引きました。

 ※ソルベンシーIIでは低金利下での経過措置として
  16年かけて割引率または責任準備金を必要水準に
  段階的に収束させることが認められています。

これによると、2014年末のドイツ生保のSCR比率は、
ストレス前でも、経過措置の適応がなければ、
中央値は100%程度であり、100%を下回っている会社も
多いことがわかります
(100%が資本とリスク量がバランスした状態です)。

アリアンツやミュンヘン再保険など大手保険グループは
ソルベンシーII対応状況を投資家向けなどに公表し、
グループベースでみたSCR比率が良好な水準にあると
示しています。

しかし、ドイツの生保業界全体としては、やはり金利水準
低下の影響は深刻だということなのでしょう
(特に中堅会社の状況が厳しい模様)。


なお、ドイツの金融当局であるBaFinは6/30のリリースで、

・直近の2016年3月末の状況を分析したところ、
 金利水準が2014年末より大きく下がっているにも
 かかわらず、IMFのテスト結果よりも良好だった。

・BaFinでは8月に直近のソルベンシーII報告に関する
 何らかの公表を行うつもりである。

といったコメントをしていますので、8月の公表を
待ちたいと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※月島もんじゃストリートに行きました。

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2016年07月11日

銀行窓販の販売手数料

 

6日の金融審議会(市場ワーキング・グループ)では、
金融機関による顧客本位の業務運営実現に向けた
取り組みの一環として、銀行による保険の販売手数料
開示問題がテーマにあがった模様です。

しばらくしたら議事録がアップされると思いますが、
今のところ当日の資料のみ公表されています。
金融庁・金融審議会のサイトへ

知人の保険ジャーナリストによると、金融審WGの議論が
あくまで金融機関による貯蓄性保険の手数料だけなのか、
あるいは、営業職員や一般代理店が販売する貯蓄性保険
まで広がるのかに注目とのことでした。

確かに、保険会社から見ると、前者であれば金融機関
という一つのチャネルだけの話ですが、後者となれば、
保険商品のあり方全般に影響が及ぶかもしれません。


ご参考までに、2013年6月の金融審・保険WG報告書では、
「2-3-2 乗合代理店に係る規制について」のなかに
次の記載があります。

「手数料の開示については、上記のような見直しを通じて、
 乗合代理店による保険商品の比較販売について、一定の
 適切な体制が整備・確保されると考えられることから、現時
 点において、一律にこれを求める必要はないと考えられる」

「仮に、手数料の多寡を原因として不適切な比較販売が行
 われる事例が判明した場合には、手数料開示の義務づけ
 の要否について、改めて検討を行うことが適当である」
 (脚注62)


銀行にとって販売手数料の重要性は年々高まっています。

6日の金融審WGの資料には、販売手数料に占める割合と、
平均手数料率の推移が載っていました(スライド6)。
7日の日経の図表はここから引用したものです。

販売手数料が銀行決算にどれほど貢献しているのかは、
直近決算データとなると、個別に見ていくしかありませんが、
2014年度までならこの日銀レポート(銀行・信用金庫決算)
時系列で確認できて便利です。

国内業務の資金利益が減少傾向となっているのに対し、
大手行、地域銀行ともに役務取引等利益は増えています。

大手行の場合は、近年伸びている国際業務部門が
資金利益や役務取引等利益に寄与しています。

しかし、大手行の国内業務部門、あるいは地域銀行で
役務取引等利益の伸びを支えているのは、保険と投信の
販売手数料であることがわかります
(詳しくはレポートの15ページを参照)。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※週末にプライベートの東京湾クルージングを
 体験することができました。

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2016年07月03日

最近の読書から

 

7/2(土)に横浜でRINGの会オープンセミナーがあり、
保険代理店をはじめ保険流通の関係者が1400人も
集まりました。

第一部は保険業界の産業革命ということで
「InsurTech」を紹介するパネルディスカッション。
第二部は顧客関係構築をテーマにした講演。
第三部は「変化に対応したマーケットの創造」を
実践する現場からの報告でした。

テーマである「保険代理店進化論」に相応しい
内容を考えるのは結構大変だったと思いますが、
いかがでしたでしょうか。


さて、今回は最近読んだ本をいくつかご紹介します。
いずれも新書または文庫なので読みやすいです。

「捨てられる銀行」(講談社現代新書)

著者の橋本卓典さんは新聞記者(共同通信)です。
金融庁・森長官の打ち出した地域金融に関する
行政改革とその進捗状況をレポートしています。

金融庁は森長官の就任以前から、地域金融機関の
ビジネスモデルについて問題意識を持っていたので、
現体制を過度に持ち上げすぎという感はありますが、
地域金融機関の経営体質や好取り組み事例などは
参考になりました。




「左遷論」(中公新書)

日本の会社組織について、「左遷」という事象から
日本独自の雇用慣行を分析した良書です。

著者の楠木新さんは某大手生保に長く勤めたかたで、
自らの経験も分析を深める材料になっているのでしょう。

本書で示された日本企業の体質が、グローバル化や
コーポレート・ガバナンス改革、女性の登用などにより、
今後は変わっていくのでしょうか。




「大本営参謀の情報戦記」(文春文庫)

太平洋戦争中に大本営情報参謀として活躍し、
戦後は自衛隊で情報収集・分析に努めていた
堀栄三さんの回想録です。

副題に「情報なき国家の悲劇」と付いているように、
太平洋各地での玉砕と敗戦の悲劇は、旧日本軍が
事前の情報収集・解析を軽視したことに起因することが
当時の情報参謀の証言として示されています。

また、情報分析の仕事についての記述には共感する
ところも多く、20年前に書かれた本とはとても思えない
「新しさ」がありました。



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