植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2016年06月25日

投票に行きましょう

 

英国の国民投票でまさかのEU離脱が決まりました。

以前ブログで討論型民主主義のことを書いた際、
いざ投票となると、十分な情報を持たないまま、
意思決定を迫られることが多いのではないかという
コメントをしています。

今回の国民投票ではどうだったのでしょうか。


ところで、投票結果は離脱が51.9%、残留が48.1%で、
その差は約127万票でした。

登録有権者数が約4650万人で、投票率が72.2%なので、
投票しなかった人が1200万人ほどいたことになります。

年代別の投票率はまだ発見できていませんが、
BBCによると、2015年の英国総選挙(キャメロン首相が
国民投票の実施を公約し、保守党が勝った選挙)では、
65歳以上の投票率が78%だったのに対し、
18~24歳は43%、25~34歳は54%だったそうです。

加えて、EU離脱に関する各種の世論調査では、
高齢層ほど離脱を支持し、若年層は残留を支持する
という結果がはっきりしていました。

「どうせ残留なんだから・・・」と投票に行かなかった
若年層がもし投票に行っていたら、結果が違っていた
という可能性が十分あるわけですね。

今回の結果を見ると、投票に行かなくて、今になって
後悔している英国の若年層が大勢いるのかもしれません
(あくまで推測ですが...)。


日本でも参議院選挙があります。うちの息子は、

「選挙権が18歳以上になったといっても、全体から見たら、
 たったの2%なんでしょう。他方で、お年寄りには選挙権が
 いつまでもあるんだから、老人の声ばかり反映されるよね」

なんてことを言いますし(でも選挙には必ず行かせます^^)、
最近お会いした某大学の先生も、

「何だか初めからあきらめているんですよね。気が付いたら
 今の憲法が自分たちの権利を弱める方向に変わってた、
 なんてことにもなりかねないのに」

などと寂しいことをおっしゃっていたのですが、
今回の英国の結果から、投票に行くことの重要性を
しっかり伝えたいですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は数年前のものです。右はバイブリー。

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2016年06月19日

イールドカーブの低下

 

日本銀行は16日の金融政策決定会合で
追加的な金融緩和措置の実施を見送りました。

ただし、今後とも「物価安定の目標」の実現のために
必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元で、
躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じるとのことです。


「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」により、
金利水準は大きく下がりました(特に超長期ゾーン)。

<財務省:国債金利情報から>
          2015.3.31   2016.3.31   2016.6.16
 10年金利    0.398% ⇒ -0.049% ⇒ -0.208%
                   (-0.447)    (-0.159)
 20年金利    1.133% ⇒  0.441% ⇒  0.103%
                   (-0.692)    (-0.338)
 30年金利    1.357% ⇒  0.547% ⇒  0.148%
                   (-0.810)    (-0.399)
 40年金利    1.464% ⇒  0.632% ⇒  0.194%
                   (-0.832)    (-0.438)

この結果、生保各社が公表するEVは、3月末から
さらに下がってしまいます(大手で▲数千億円?)し、
商品戦略も、もしかしたら抜本的な見直しが必要に
なるのかもしれません。

長期にわたり利率を保証するという点で大変なのは
年金も同じです。

確定給付企業年金の予定利率は2%以上のところが
多いようですから、予定利率を引き下げるところが
増えていくのではないでしょうか。

危うい金融商品なども出回っていそうですよね。


黒田総裁は同日の記者会見で、

「マイナス金利政策の効果は、実体経済面にも徐々に
 波及してきており、今後、より明確になっていくのでは
 ないかと思っています」

と述べ、イールドカーブの引き下げが実質金利を下げ、
実体経済を刺激する効果があるとしています。


これに対し、全国銀行協会の國部会長は16日の会見で、

「足元では、設備投資など企業の前向きな動きは
 まだ出てきていない」

「企業が設備投資をするときには、もちろん金利も一つ
 のファクターであるが、国内で設備投資をする場合は、
 日本経済の期待成長率がある程度見込めないと
 設備投資をしないということだと思う」

とコメント。そもそもマイナス金利政策の波及経路は

「円安あるいは株高という経路によって消費であるとか
 投資を刺激し、実体経済の拡大を狙うものと思っている」

という見方なので、今の円高・株安基調のなかでは
実体経済へのポジティブな影響は期待できないという
ことなのでしょう。


また、金融庁の人事情報を探していたら、麻生大臣が
14日の会見で次のようなコメントをしているのを発見。

「(ヘリコプターマネーに関する質問に対し、)今現在でも
 問題なのは、お金があるないという話ではなく、実体経済に
 おける需要の絶対量が不足しているところが問題なのですから、
 そういった意味で金利を安くしたからといって特に需要がなければ、
 そのお金は生きてこないというのは、これまでで既に証明は
 終わっていると思いますけれども」

失言の多いかたではありますが、これは強烈です。


そうはいっても、2%の物価目標から程遠い現状を見れば、
日銀による「金利も」「量も」という緩和政策は今後も続くのでしょう
(=やめる理由がありません)。

長期の保障を提供する主体にとって非常に厳しい政策だと
いうことを、日銀はどこまで認識しているのでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※築地の青果市場です。スイカがたくさんありました。

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2016年06月12日

執筆・講演のご案内など

 

今週は日本銀行の金融政策決定会合ですね
(15日~16日)。
生命保険協会の筒井会長は10日の定例会見で、
「追加緩和策としては、マイナス金利や国債購入枠の
拡大ではなく、ETFの買い入れを増やすことが望ましい」
と語ったそうですが、果たしてどうなるでしょうか。

さて、今回は執筆・講演のご紹介・ご案内です。

【講演】金融ファクシミリ新聞社セミナー

「ソルベンシー規制強化など保険ERM経営を取り巻く
環境の変化と保険業界の対応」というタイトルで
講師を務めます。7月4日(月)の13:30からです。

金融ファクシミリ新聞社のセミナー講師を務めるのは
約3年ぶりとなります。

この間、ソルベンシー規制のほうは、海外を中心に
いろいろな動きが見られました。
保険業界の対応状況はどうなっているのでしょうか。

ご関心のあるかたはこちらをご覧ください。


【執筆】週刊金融財政事情の書評

このところ四半期ごとに書いている「一人一冊」です。
今回は「未来型国家 エストニアの挑戦」をチョイス。
(旅の準備として読んだ本ということがバレバレですね^^)

5月7日のブログでご紹介したように、独立回復後の
エストニアはIT立国化を進め、いまや世界が注目する
デジタル社会を実現しています。

本書がクラウドファンディングによって誕生した
というのも興味深い裏話です。

ところで、今回から書評の掲載場所が変わっていて、
「営業店コーナー」というピンク色のページになりました。
だからといって、編集部から特段のリクエストはなく、
今のところ、どんな本を選んでもいいと言われています
(この書評は評ずる本を自分で選ぶのです)。




【執筆】 weekly inswatch への執筆

保険代理店向けメールマガジンinswatchへの寄稿です。
今回は3メガ損保が国内損保事業の成長性、収益性を
どう見ているのかについて取り上げました。

ここ数年間と違い、収入保険料の伸びは鈍化し、
コンバインドレシオの低下にもあまり期待できない
という厳しい見方をしていることがうかがえました。

月曜配信ですので、機会がありましたらご覧ください。

なお、inswatchのサイトにもバナー広告がありますが、
以前ご紹介した「RINGの会オープンセミナー」の
申込締切が近づいています(6/22まで)。

改正保険業法施行後の保険流通現場の生の情報に
触れるいい機会だと思いますので、こちらもぜひどうぞ。
RINGの会 オープンセミナー

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※義父の「歌の発表会」の応援に新宿へ。
 昭和の歌謡曲を堪能(?)しました。


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2016年06月05日

生保の健全性指標

 

前回に続き、生保決算と実態のギャップについて。

2016年3月期決算で最も実態から乖離した指標は
「実質純資産額」(または「実質資産負債差額」)
だったように思います。

この指標はソルベンシー・マージン比率とともに
行政監督上の指標(=早期是正措置の発動基準)
となっていて、もし数値がマイナスとなった場合には、
当局は業務停止命令を出すことができるという
重要度の高い指標です
(ただし、ALMと流動性を考慮した措置があります)。

実質純資産額は時価ベースの資産の合計から
負債の合計(資本性の高い負債を除く)を差し引いて
算出します。

全ての保有区分の有価証券含み損益が反映される
一方、ソルベンシー・マージン比率では支払余力として
考慮される劣後ローンは、こちらでは反映されません。

 参考:生命保険会社のディスクロージャー

2016年3月期決算では、株価下落にもかかわらず、
各社とも実質純資産額が1年前よりも増えました。

例えば明治安田生命の公表資料を見ると、
株式と外国証券の含み損益は▲9378億円でしたが、
実質純資産額は6163億円も増えています。

同社のソルベンシー・マージン比率の分子
(支払余力)は▲3851億円減っているのに、
実質純資産額が増えたのは、全ての保有区分の
公社債含み損益が反映されるためです。

公社債含み損益は全体で約1.5兆円増えています。
その内訳は次の通りです。

 その他有価証券(公社債): +1483億円
 満期保有目的債券     : +3422億円
 責任準備金対応債券   : +1.0兆円

同社にかぎらず、生保が保有する超長期債の多くは
「満期保有目的債券」か「責任準備金対応債券」なので、
日銀のマイナス金利政策を受けた金利低下によって
債券価格が上昇し、実質純資産額を押し上げました。

しかし、生保が超長期債を大量に保有しているのは
超長期の保険負債の金利リスクをコントロールする
ためなので、保有する超長期債の価格が上がり、
実質純資産額が増えたからといって、決して喜ばしい
状況ではありません
(保険負債の価値はもっと増えているので)。

そのことは生保の経営者もよく理解しているはずで、
例えば、昨年から今年にかけて複数の国内系生保が
外部から劣後債務の調達を行い、支払余力の水準を
引き上げようとしていることからもうかがえます。


もっとも、EVやESR(経済価値ベースの資本十分性)を
公表していない会社の場合、金利低下による影響を
外部から判断する手掛かりがほとんどありません。

いくら自己資本の絶対額を示されても、果たして
会社が望ましいと考えている健全性を確保できている
のかどうかわかりませんので、手掛かりとなる情報を
ぜひ開示してもらいたいものです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※日比谷公園のバラがきれいでした。

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