植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2016年02月29日

コメント掲載の一時休止

コメント欄を今後どう運営するか、多少お時間をいただき、
考えてみることにしました。
このため、しばらくの間、コメント掲載を休止といたします。

ブログのほうは引き続き週1回程度のペースで書くつもりです。
よろしくお願いいたします。

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2016年02月27日

マイナス金利と生保経営

 

東洋経済オンラインに生保関連の記事を寄稿しました。
テーマは「マイナス金利政策と生保経営」です。
東洋経済オンラインのサイトへ


報道では貯蓄性商品の値上げや販売停止ばかりが
取り上げられるので、つい執筆を引き受けてしまいました。

記事をご覧になればわかりますが、タイトルの
「マイナス金利でリスクテイクが困難に」とは、
次のような意味です。

マイナス金利政策に伴う金利水準の低下によって
生保が超長期の保障を提供する負担はより重くなりました
(提供できなくなったとは言っていませんので念のため)。

そのようななかで、生保が資産運用によるリスクテイクを
積極化させるとは私には思えないのですね。


報道によると、生命保険協会の筒井会長(日本生命社長)は、

「日本国債を中心とする運用はもはや困難」

「外債へのシフトがメーンにならざるを得ず、外債以外もさらに
 ポートフォリオの分散にこれまで以上にチャレンジしていかな
 ければならない」

と2月19日の記者会見でコメントしたそうですが、同時に、

「保険商品も資産運用も両面でもっと創意工夫をこらせということ」

とも述べており、日本生命が大胆なポートフォリオ・リバランスに
踏み切るという話ではないと受け止めました。

それに、どんどんリスクテイクできるような体力があるのだったら、
従来はどうしてそれを契約者等に還元せず、貯めこんでいたのか
(あるいは、ターゲットとする健全性の水準を見直したのか)、
という疑問につながってしまいます。

いずれにせよ、期末に向けた生保各社の動きに注目しましょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※築地市場です。カモメがエサ(?)に群がるような光景も
 あと少しで見納めです。


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2016年02月20日

決算短信の見直し案

 

「非財務情報の開示」についての議論を聞くために
金融審議会ディスクロージャーWGに出席したところ、
情報開示が後退しかねない話をしていて驚きました。

このWGでは、持続的な企業価値の向上に向けて
企業と投資者の建設的な対話を促すという観点から、
開示情報の提供のあり方を有識者が議論しています。
金融審議会WGのサイトへ

議論のなかで、3つの開示書類、すなわち「決算短信」
「事業報告・計算書類」「有価証券報告書」について、
開示内容をそれぞれの目的に応じて整理しました。

決算短信の目的は「投資者の投資判断に重要な情報を
迅速かつ公平に提供する」となります。

そこで決算短信について次の提言案が示されました。

①情報についての速報性が要求され、公表前の監査は
 不要であることを明確にする。

②速報性がそれほど求められない項目(例えば、経営方針)
 については、有価証券報告書で記載することとする。

③記載を要請する事項をサマリー情報、経営成績等の概況、
 連結財務諸表及び主な注記に限定し、その他は企業が任意に
 記載できることとするなど、義務・要請事項を可能な限り減らす。


同時に示された東証の静委員による見直し案は次の通りです。
資料(静委員)

上記に沿った内容ですが、4ページが見やすいでしょう。
サマリー情報(=短信の表紙の部分)を「義務」から「要請」
としたうえで、

・財務諸表と主な注記の開示を要請していたものを、
 投資判断を誤らせる恐れがない場合には開示不要

・「継続企業の前提に関する重要事象等」も開示不要

などが示されています。


これらの整理・合理化によって、「より自由な開示を促す」
「空いた時間を投資者との対話にあてる」というのが
このWGの提言なのでしょうか。

そもそも現在の決算短信で開示義務があるのは
サマリー情報のうち、いくつかの指標だけ(監査も不要)。
あとは取引所の「要請」に基づいて記載しているもので、
有価証券報告書のような記載義務はありません。

「義務」と「要請」の違いは、WGの1回目で静委員から
説明があり、議事録では「要請」はあくまで任意と読めます。


それでも上場会社が充実した決算短信を出すのは
東証のガイドラインがあり、半ば義務として従っている
からなのか。私はそれだけではないと思います。

多くの投資家やアナリストは決算発表時に出てくる
決算短信を最も重要な情報源として捉えています。

有価証券報告書が公表されるのはだいぶ先なので、
まずは決算短信をもとに対話がなされるはずです。
だからこそ、上場会社も充実した決算短信を作成し、
公表しているのでしょう。

また、大企業では当日または数日後に決算説明会を
開いており、ここでは決算短信を予め分析したうえで
質疑応答がなされています。

投資家と企業との建設的な対話を促すという観点が
議論の出発点であるはずなのに、現在行われている
対話の重要なツールを後退させるような話になるのは、
いったいどうしてなのでしょうか。

しかも、見直し案は速報性の促進とバーターではなく、
投資家やアナリストにとって一方的に状況が悪化する
という内容です
(これ以上早くしてほしいという声は少なそうですが...)。

ご参考までにWGメンバーの名簿も挙げておきましょう。
投資者の声を代表する委員が少ないような気がします。
WGメンバー名簿


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※銀座には意外なところに路地がありますね。
 写真は銀座8丁目です。

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| post at 20:27:37 | コメント(5)  | カテゴリー : 08. ディスクロージャー |

2016年02月14日

国内系生保の資産運用

 

先週、生保の2015年度第3四半期(4-12月期)決算が
公表されたので、国内系生保の資産構成を中心に
9月末からの動きをざっと確認してみました。

引き続きあまり大きな変化は見られないようですが、
あえて特徴を挙げるとすれば、次の3点でしょうか。

1.「責任準備金対応債券」の減少

国内系生保10社のうち6社で小幅ながら減っています
(9月末対比。取得価額ベース)。
低金利のなかで資産長期化を見送る動きなのでしょう。

2.外貨建資産の増加

ヘッジ状況は非開示なので、ヘッジ外債を増やしたのか、
オープン外債を増やしたのかまではわかりませんが、
10社のうち8社で増えています(こちらは時価ベース)。
ただし、増加ペースは以前よりも緩やかです。

3.代替投資の増加

上半期に続き、「外国株式等」「その他の証券」を
増やしている会社が目立ちます。
中身はわかりませんが、投信・ファンドなどを購入すると
これらの区分に入ります。
他方で国内株式を増やす動きはあまり見られません。


1月以降の金融市場混乱は、国内系生保には総じて
逆風となっています。

まさかのマイナス金利政策で金利水準が一段と下がり、
株価急落、円高進行も、リスクテイクしている会社には
厳しい状況です。

もちろん、これまでの内部留保の蓄積を踏まえると、
財務の健全性を云々するような段階ではなさそうですが、
商品戦略をはじめ、今後のビジネスモデルについては
十分検討する必要がありそうですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※横浜アリーナが大規模改修工事を行っていました。

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| post at 18:51:34 | コメント(2)  | カテゴリー : 02. 保険会社の経営分析 |

2016年02月07日

保険収支と損益の関係

 

ある筋からのご依頼により、この記事を取り上げました。
生命保険大手がM&Aに走る理由?

まず、念のため記事の要旨をお示しします。

①生保の海外M&Aは「かんぽ」上場が引き金。パイを「かんぽ」
 に奪われるとの危機感が、大手各社をM&Aに駆り立てる。

②保険収支(=保険料等収入-保険金等支払金)が3.7兆円、
 運用収支(=資産運用収益-資産運用費用)が11兆円と
 2014年度は運用収支が圧倒的に多い。つまり、経常利益でも
 運用益が大きな比重を占めることになる。

 生保大手がM&Aに走るのは、今後、高齢化と人口減少で
 保険料収入が減る一方、支払保険金が急増し、保険収支の
 悪化が加速するのが目に見えているから。

③独自のニッチ路線を行く会社もあるが、42社は多過ぎる。
 再編が進まない理由は、大半の生保がとる「相互会社」
 という企業形態にある。

 今後、海外に活路を見いだすことが難しい多くの中小生保の
 経営が行き詰まるのは目に見えている。破綻が続けば
 社会不安を起こしかねない。

 相互会社再編の道さえ開ければ、大手生損保主導による
 国内生保業界の健全化が見えてくる。


M&Aの背景に「かんぽ」上場があるかどうかはともかく、
②と③には事実とかなり異なる記述がありますので、
この点をコメントいたしましょう。

まず、②の「経常利益に運用益が大きな比重を占める」
ですが、「保険収支」について誤解があるようです。

ここで言う「保険収支」とは、その期の保険料等収入と
保険金等支払金を比べただけなので、損益とは無関係です。
おそらく筆者のかたは「責任準備金」の存在をご存じない
のだと思います。

生保は自転車操業(=その期の収入でその期の支出を賄う)
をしているのではありません。その期の保険料等収入のうち
翌期以降に支払いが見込まれるものは責任準備金に繰り入れ、
その期に支払う保険金や給付金、返戻金は責任準備金から
支払います。

確かに長期にわたり保険収支のマイナスが続くのは、
持続的成長を目指す観点からは好ましくないかもしれませんが、
その期の保険収支を見ても、会社が儲かっているかどうかは
判断できません。


運用収支と経常利益の関係にも誤解があるようです。

生保は平たく言えば契約者に一定の利率(予定利率ですね)
を保証しており、これを運用益で賄っています。

利率保証にかかる毎期のコストは責任準備金繰入額に
含まれているのでわかりにくいのかもしれませんが、
毎期数兆円のコスト負担があるので、運用収支11兆円が
そのまま利益とはなりません。

もし運用収支がそのまま利益となるのであれば、
「逆ざや」など発生しようがありませんよね。


長くなったので、③についてはごく簡単にコメント。

「再編が進まない理由は、大半の生保がとる『相互会社』
 という企業形態にある」

とのことですが、相互会社は今や5社しかありませんし、
中小生保は全て株式会社形態です
(総資産5兆円超の会社を「中小」とは言わないでしょう)。


以上から、筆者のかたは一見して生保経営について
ご存じではないことがわかるにもかかわらず、

・海外に活路を見いだせない多くの中小生保は経営が
 行き詰まる。破綻が続けば社会不安を起こしかねない

・相互会社再編の道さえ開ければ、大手生損保主導による
 国内生保業界の健全化が見えてくる

という刺激的(?)なご主張をしているわけです。

少なくとも保険関係者のかたであれば、これをそのまま
情報提供してしまうのは、私には疑問に感じましたので、
失礼ながら今回このようなコメントをした次第です。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※久しぶりに横浜スタジアムを見ました!

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| post at 18:45:38 | コメント(1)  | カテゴリー : 02. 保険会社の経営分析 |

2016年02月01日

最近の読書から

 

※サーバーの不具合により、いろいろと試行錯誤しています。
 申しわけありませんがお含み置きください。


日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」に突入。
イールドカーブが一段とフラット化してしまいました。
ALMミスマッチを抱える生保経営には厳しい事態ですが、
出口はさらに遠のいた感があります。

さてさて、今回は久しぶりに読んだ本のご紹介。
この数か月に読んだなかから印象に残ったものを
ごくごく簡単にコメントします。


1.「新・観光立国論」(東洋経済新報社)

銀行アナリストとして有名だったデービッド・アトキンソン氏
(今は「小西美術工藝社代表取締役社長」です)による
「短期移民」による成長戦略の提唱です。

氏によると、日本は観光立国の4条件である「気候」「自然」
「文化」「食事」が全てそろう稀有な国なのだそうです。

ただ、昨年も日本を訪れる外国人観光客が増えていますが、
それで喜んでいる場合ではないことがよくわかります。



2.「NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか」
  (東洋経済新報社)

コーポレートガバナンスの専門家である上村達男教授
(早稲田大学。前経営委員会委員長代行)による、
NHKのガバナンス問題を指摘した書籍です。

NHK問題だけではなく、最近のガバナンス改革を
考えるうえでも参考になると思います。



3.「世界の壁は高くない」(廣済堂出版)

サンリオで海外戦略を担当した鳩山玲人氏による
「海外で成功するための教科書」(=副題)です。

海外事業を展開する際、「一番高いのは社内の壁」
というところが最も印象的でした。



4.「大世界史」(文春新書)

池上彰氏と佐藤優氏による対談ですから
面白くないわけがなく、一気に読み終えました。

お二人は「現代をよりよく理解するためには
歴史の学習が欠かせないという点で意気投合」
したそうですが、私もそう思います。



5.「会社のITはエンジニアに任せるな」(ダイヤモンド社)

著者の白河克氏は数年前、友人の関尚弘くんと
共著で老舗企業の業務改革プロジェクトについての
ドキュメンタリーを書いています。

本書はコンサルタントとしての豊富な経験から
ITと経営者の関係についてきちっと書かれていて、
参考になります。

いかにITを経営者自身の問題として取り組んでもらうか。
「IT」を「ERM(あるいはリスク管理)」に置き換えても
同じことが言えるのでしょうね。




※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は富山県高岡市・射水(いみず)市を走る「万葉線」。
 赤い電車は乗り心地が良かったですね。


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