植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2015年12月25日

ERM関連書籍が出ました



中央経済社から「経済価値ベースのERM」が出ました。
今週から書店に並んでいるようです。

これで、損保総研による「保険ERM経営の理論と実践」、
保険毎日新聞社の「保険ERM戦略」に続き、私が関わった
保険ERM関連の書籍としては3冊目となりました。

アマゾンの内容紹介を見ると、

「保険会社の保険金支払い能力は、資産や負債を変動リスクも
 含めて市場価値で評価するよう世界的に見直されている。
 本書はその背景や理由、今後のERMの進展について論じた」

としか書かれていないので、もう少し情報をご提供しましょう。

本書は武蔵大学ERM研究会での成果を取りまとめたものです。
研究会では毎回メンバーまたはゲストスピーカーが発表を行い、
それを受けたディスカッションを実施しました。

目次と執筆者は次の通りです。

 序章は武蔵大学の茶野努さんが執筆

 第1章 経済価値に基づくソルベンシー・マージン規制の必要性
      (執筆は早稲田大学の大塚忠義さん)

 第2章 ソルベンシー規制の国際動向
      (執筆は住友生命の増井正幸さん)

 第3章 ファイナンス理論の保険負債評価への応用
      (執筆は横浜国立大学の鈴木雅貴さん)

 第4章 破綻距離(DD)を用いた1990年代生保破綻の分析
      (執筆は茶野さん、大塚さん)

 第5章 リスク計測・管理手法の変遷と課題
      (執筆は住友生命の浅見潤一さん、千葉商科大学の西山昇さん)

 第6章 生命保険会社のERM-銀行との比較を通じて-
      (執筆は住友生命の浅見さん)

 第7章 損害保険会社のERM-自然災害リスク管理を中心に-
      (執筆はガイカーペンターの浜崎浩一さん)

 第8章 保険会社によるERM関連情報の開示
      (執筆は私です)

 第9章 リスク情報開示の現状と課題ーERMの観点からー
      (執筆は一橋大学の安田行宏さん)

 第10章 金融危機時における金融機関のCDS
       -流動性逼迫の影響とシステミック・リスク-
       (執筆は武蔵大学の大野早苗さん)

 第11章 損害保険会社はシステミックな存在になり得るか?
       -損害再保険ネットワークの分析-
       (執筆は神奈川大学の菅野正泰さん)


私は保険会社のERM関連情報とその開示をめぐる状況を
整理したうえで、開示により期待できる効果を考察しました。

ガバナンスコードにも非財務情報の開示が盛り込まれるなかで、
上場保険会社が任意に行っているERM情報の開示状況は
もっと注目されてもいいかもしれません。

また、第9章では安田先生が銀行の公表する「事業等のリスク」
(こちらは強制開示)を使った実証分析を行っていますので、
比べてご覧になると面白そうです。



※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※こんな感じで切り取ると、大倉山もなかなか素敵です。
 12月下旬とは思えない景色ですが...

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2015年12月19日

生保の営業職員チャネル

 

先週末に風邪をひいてしまい、辛い一週間でした。
それでも水曜日のスピーチを予定通り務めることができて
ほっとしました。皆さまもご用心ください。

さて、直近の週刊東洋経済(12月19日号)の保険特集に
「大手生保に押し寄せる『人手不足』の波」という記事があり、
特に都市部を中心に採用が難しくなっているとのことでした。

よりレベルの高い職員を採用したくても、応募者が減り、
厳選採用どころか、数の確保も難しくなっているそうです。

在籍率はかつてに比べると相当改善しているのですが、
これには育成期間を長期化した影響もあるでしょう。
果たして中堅職員層が育っているのかどうか。


記事には「進む高齢化」という見出しもありました。
これに関して、かつて東洋経済の臨時増刊号(2007年版)で、
次のように書いたことがあります。

「ベテラン層は厳しい販売環境の中でも一定の業績を
 残してきたが、高齢化が相当進んでいる。おそらく新人層を
 除いたチャネルの平均年齢は、軽く50歳を超えているだろう」

そして、2007年の記事にはそこまで書きませんでしたが、
あと数年たつとベテラン層が引退を迎え、チャネル弱体化が
深刻化する可能性があると考えていました。

現実はちょっと違ったようです。あれから8年たちましたが、
ベテラン層の多くは引退しませんでした。

近年の育成期間の長期化を踏まえて試算してみると、
新人層を除いた平均年齢は大手各社とも60歳近いようです。
現場に近い方々からも、「優績者は全員70代以上」とか、
「50代以下の営業職員がいない」という話を耳にします。

しかし、60代や70代の職員に依存している営業拠点が
10年後どうなるのか。

先日お話を伺ったライフネット生命の出口さんも、
地方都市の拠点長から「どうしたらいいか」と相談された
というエピソードを紹介していました。

国内系生保にとって高齢化の影響は、保険マーケットよりも
自らの販売チャネルにとって、より深刻なのかもしれません。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※日比谷公園でクリスマスマーケットをやっていました。

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2015年12月12日

「生保の将来」

 

先日、ライフネット生命の出口治明会長の
お話を伺う機会がありました
(聞き手は保険業界関係者です)。

当日の演題は「生保の将来」でしたが、
「数字・ファクト・ロジックのみで考える」ということで、
人口動態や世帯当り所得、OECD加盟国における
日本の位置付けといった各種のデータをもとにした
スピーチは非常にわかりやすく、参考になりました。

「社会構造が変わったのに、何もしていない」
「ということは、何かやれば伸びしろは大きい」

結論としては、前者だけではなく、後者を考えれば、
日本の将来は明るいという話でした。


タイトル「生保の将来」に直接関係した話としては、
出口さんが次の2つを挙げているのに注目しました。

・死亡保険から就業不能保険に(主役の交代)

・終身介護保険(年金)への挑戦

日本ではすでに世帯の主流が夫婦と子ども世帯ではなく、
大人一人家族になっているなかで、働けなくなった時の
保障はもっと注目されてもいいでしょうね。

終身年金に関しては、保険会社がニーズに応えるには
トンチン性、すなわち、長生きした人がより多くの給付を
受けられる仕組みを使うしかないとのご主張でしたが、
確かにタブー視せず、考えるべきテーマだと思いました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※左が丸ビル、右が帝国ホテルです。


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2015年12月05日

ざっくり30年史

 

ニッセイ基礎研究所の安井義浩さんによる
「日本の生命保険業績動向 ざっくり30年史」
という連載は、バブル期以降の日本の生保業界を
概観しようというもので、改めて勉強になります。

1日に発表された第2回では、過去30年間の
新契約や保有契約の推移を追っています。
ニッセイ基礎研のサイトへ

個人保険の保有契約高が1996年度をピークに
減少傾向となっていることはよく知られていますが、
団体保険は1997年のAグループ問題による急減の後、
概ね横ばいで推移しているのですね。

例えば、個人保険は10年前の77%水準なのに対し、
団体保険は98%とほぼ同水準なのです。

ちょっと気になったので内訳を確認してみると、
いわゆるグループ保険である団体定期保険は
10年間前の85%水準とそれなりに減っています。

他方、団体信用生命保険は10年前の105%水準です。
つまり、住宅ローンを借りる条件として加入する保険が
保有契約の下支えとなっていたというわけでして、
個人保険からグループ保険へのシフトが起きたのでは
なさそうです。


最後に、メディア登場のご案内を2つほど。

1.月刊BOSSのインタビュー記事

かつての「経営塾」だと思いますが、直近の月刊BOSSで
生保特集があり、そこで私のインタビュー記事が出ました。
テーマは生保のM&Aです。
月刊BOSSのサイトへ

日本生命の筒井社長、明治安田生命の根岸社長の
インタビュー記事も掲載されています。


2.週刊金融財政事情の書評

12月7日号に書評が載りました。
今回は「ガイトナー回顧録 金融危機の真相」です。

ティモシー・ガイトナー氏はニューヨーク連銀総裁
および財務長官として、金融危機の発生・対応から
再発防止の改革まで関わっています。

600ページ超もある大著ですが、興味深く読めました。
冬休みにいかがでしょうか。
ガイトナー回顧録(アマゾンのサイトへ)


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※どちらも茨城ゆかりの鉄道です
 (左は関東鉄道。右はつくばエクスプレス)。

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