植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2015年06月28日

地震保険制度の見直し

 

事務年度末が近づいているためか、
金融庁からの公表物が相次いでいます。

保険関係では、フィールドテストの結果金融検査結果事例集が、
いずれも26日にアップされました。

保険監督者国際機構(IAIS)も資本上乗せ基準(HLA)
国際資本基準(ICS)の導入スケジュール見直し
(実質的な延期でしょうか?)を25日に公表しました。


こちらは後ほどじっくり鑑賞するとして、
今回は地震保険制度の見直しについて。

「保険料がまた上がる」という話ではありますが、
財務省が24日に公表した「議論のとりまとめ」を見ると、
悩ましい選択をしたことがわかります。

もともとは、東日本大震災で明らかになった
「損害査定の簡素化」「損害区分の細分化」といった
地震保険制度の課題について検討するものでした。

例えば、現行の損害区分は全損(保険金を100%支払い)、
半損(同50%支払い)、一部損(同5%支払い)の3つです。
どの損害区分とされるかで支払割合が大きく異なるので、
低いほうとされた契約者から不満が続出したようです。

そこで、半損を2つに分け、区分間の格差を縮める案が
提案されました(大半損は60%、小半損は30%支払)。

ところが、2014年12月に政府の地震本部が予測地図を
大幅に見直しました。その結果、地震保険の保険料率を
28%も引き上げないと、制度が維持できなくなりました。

この「とりまとめ」ではわかりにくいのですが、
大半損と小半損の境目を動かし、大半損を小さくすることで
料率の引き上げを19%に抑える提案をしています。

つまり、これまでの半損は一律50%の支払いだったものを、
2つに分けることで、損害区分の細分化は実現するのですが、
料率引き上げの抑制と引き換えに、半損の支払(見込)総額を
減らすという苦肉の策なのですね。

補償を減らす方向での見直しは、初めてではないでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※日本酒の会に参加。美酒をたくさんいただきました。
 ただし、最後のほうはよく覚えていないような...

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2015年06月21日

保険会社と代理店

 

先日ご案内した「RINGの会オープンセミナー」の申込者が
今年も1000名を超えたそうです。

申し込みの締め切りは23日(火)なので、
参加を考えているかたはお忘れなきよう。

⇒ 24(水)まで大丈夫だそうです!

↓お申込みはこちらから↓
RINGの会 オープンセミナー

RINGメンバーの準備も着々と進んでいるようです。
連日のようにRINGメールが飛び交っています。

肝心のセミナーの中身ですが、第一部では先日、
登場メンバー(中崎さん、栗山さん、増島さん、私)で
打ち合わせ会を行いました。

パネルディスカッションの打合せはなかなか難しくて、
全体の流れを確認するのですが、多くの場合、
打ち合わせで話が盛り上がってしまうのですね

しかし、ここで盛り上がりすぎると、パネル当日よりも
打ち合わせのほうが面白かったということになりがち。
経験者ならおわかりになると思います。

そうかといって、文字通りの顔合わせだけでは、
何のために事前に集まったのかわかりません。

コーディネーターの役割は当日だけではなく、
もう始まっているんだなあと実感しました。

当日は多少アドリブを交えつつ、各パネリストから
できるだけうまく話を引き出したいものです。
会場の皆さんの期待を裏切らぬよう、頑張ります。


パブコメの結果もざっと読んでみました。

保険会社に加え、初めて募集人に対しても
規制をかけることになったので、両者の関係を
どう整理したらいいかは注目ポイントです。

しかし、例えば、募集文書の承認に関する質問が
(おそらく代理店から)たくさん出ているなかで、
回答は「一義的には私人間の契約上の問題」
というコメントだけだったりします。

保険会社の役割と代理店の役割をどう整理するか、
新しい募集ルールが実質的に確立するまでには
しばらく時間がかかるのかもしれません。

このあたりもパネルで議論してみたいと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※父の日に娘からスイーツをもらいました^^v

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2015年06月14日

銀行勘定の金利リスク

 

先週(8日)、バーゼル銀行監督委員会が
銀行勘定の金利リスクに関する市中協議文書を
公表しました。
金融庁のサイトへ

現在のバーゼル規制では、第1の柱として求められる
自己資本比率の計算に銀行勘定の金利リスクは
入っていません。

保険会社の健全性規制を見慣れた人からすると、
えっ、そうなの?という声も聞こえてきそうですが、
第2の柱で対応することとなっています
(アウトライヤー規制と呼ばれるものですね)。

第2の柱の場合、各国当局の判断に委ねられるため、
もし基準を超過しても、機械的に資本積み増しの
対象にはなりません。


公表された市中協議文書では、第1の柱に入れる案
(リスク量を計測し、自己資本比率の分母に反映)と、
現在の第2の柱を強化する案の二つが示されました。

バーゼル委員会ではパブコメを募集し(9/11締切)、
その後議論を再開するようなので、決着までには
まだ時間がかかりそうです。


「銀行の国債保有に新規制」との報道もありましたが、
確かに保有する国債の金利リスクが反映されるとはいえ、
これはちょっとミスリードのように思います。

今回の案は、国債の信用リスク(ソブリンリスク)を
反映させるような規制案ではありません。

また、金利リスク計測の対象は、資産として保有する
国債だけではなく、貸出金、負債の預金も入ります
(資産と負債の金利リスクが相殺されます)。

負債サイドでは、定期預金に加え、コア預金
(実態として長期間滞留する流動性預金)も対象です。

基本的な枠組みは財務会計ベースではなく、
経済価値ベースということになりますね。

さてさて、どのような案に落ち着くのでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※アジサイがきれいな季節になりましたね。

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2015年06月12日

ガバナンスコード適用開始

 

コーポレートガバナンス・コードが6月から適用となりました。
すでに東証に報告書を提出した会社もみられます。

大手金融機関では、みずほフィナンシャルグループが
適用初日に報告書を東証に提出しました。
みずほFGのサイトへ

注目の「政策保有株式」(原則1-4)に関しては、
「その保有の意義が認められる場合を除き、保有しない」
という基本方針が示されました。

同社では、個別銘柄ごとに定期的かつ継続的に
保有の意義を検証するのだそうです。

また、取締役会の実効性評価(補充原則4-11③)については、
「(ガバナンス改革について)順調にスタートできたものと評価」
「取締役会が自己評価を絶えず行い、(中略)現時点において、
 第三者評価は必要ないものと考えております」
という記載でした。

これだけでも前進とは思いつつ、期待外れの感も否めません。

今回のガバナンスコードは「基本原則」「原則」「補充原則」の
三層構造になっているのですが、東証の記載要領は、

 ・コードの各原則を実施しない理由
 ・コードの各原則に基づく開示

を新たに求めるだけなので、ガバナンスコードのうち、
明確に開示が求められているいくつかの項目
(1-4、1-7、3-1、4-1①、4-8、4-9、4-11①②③、
 4-14②、5-1)だけに対応すればOKという感じです。

しかし、コードを読むと、基本原則の具体的な項目として
原則や補充原則があるのではなく、いずれについても
実施していることを示さなければならないはずなのです。

例えば、基本原則3には、

「会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・
 経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務
 情報について(中略)主体的に取り組むべきである」

とあり、開示内容は限定されていません。
ところが、東証の記載要領は基本原則3ではなく、
「開示すべき」となっている原則3-1のみ意識しています。

このため、原則3-1に列挙された項目だけ開示すればOK
となってしまい。そもそもの基本原則3はどうなのか、
甚だ心もとない状況となっています。

コーポレートガバナンス・コード制定の趣旨からすれば、
開示項目だけ満たせばいいというのはおかしな話でして、
基本原則3の内容も実行する必要があるはずです。

ということで、これから出てくるガバナンス報告書に加え、
有価証券報告書やアニュアルレポートなどを見て、

「ひな型的な記述や具体性を欠く記述となっており
 付加価値に乏しい場合が少なくない、との指摘もある」
(ガバナンスコード第3章より引用)

が少しでも改善するかどうか、注目する必要がありそうです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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2015年06月06日

生保資金はどう動いたか

 

日銀の異次元緩和(2013年4月)から2年。
生保の資産構成はどう変化したのでしょうか。

まず、大手生保4社の一般勘定資産に占める
国内株式のウエートは、この2年で2ポイントほど
上昇しました。

しかし、その大半は時価上昇によるものです。
株式を実質的に減らしたかどうかは微妙ですが、
生保資金が株式に向かったようには見えません。

他方、外貨建資産のウエートは年々高まり、
一般勘定資産の2割前後に達しました。
もっとも、異次元緩和を受けたものというよりは、
その数年前からの動きです。

同時に、為替ヘッジのないオープン部分も
徐々に増えているようです。
住友を除く3社の為替エクスポージャーは
一般勘定資産の1割強となりました
(2年前は3社とも8%程度でした)。

国債など国内公社債はどうなったかというと、
一部に残高を減らした会社が見られるとはいえ、
責任準備金対応債券を増やす動きが続いており、
かつ、第一と住友は残存期間を伸ばした模様です。

その他有価証券区分の国内公社債が多かった
第一と明治安田は責準対応債券への移行を進め、
その他有価証券区分の公社債が全体の2割程度
となりました(4年前には5割前後でした)。

ということで、2014年度決算をざっと見るかぎりでは、
異次元緩和後の生保資金は外貨建資産への投資が
やや目立つものの、大きな変化は見られないようです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※今年も慶大で講師を務めました。

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