植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2015年04月29日

銀行のリスクアペタイト

 

「リスクアペタイト・フレームワークの構築」を読みました。
著者は大山剛さんです。

銀行のリスクアペタイトに関する規制当局の動向と、
銀行がどう対応したらいいか、詳細に書かれています。

大山さんは、当局によるリスクアペタイト・フレームワーク
(RAF)構築の提案を、

「金融機関の手足だけではなく、脳や神経系統まで
 縛ろうという動き」

と刺激的な表現を使っていますが、RAFそのものを
否定しているのではなく、あるべき姿から乖離した別物が
RAFとして定着してしまうことを懸念しているようです。

このあたりの議論は保険会社のERMと共通していますね。

ちなみに本書には次のようなくだりもあります。

「(リスクアペタイトの概念は)保険の世界において、
 活発に議論されていた概念である」

「保険の世界の中でいち早くRAの概念が導入された
 背景には、保険という業種そのものが『リスクを積極的に
 引き受ける』業種だということが影響している」

確かに、本書が示すRAF構築の作業ステップをみると、
銀行で言うRAFはERMに限りなく近いと感じました。



※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真はお台場です。聞こえてくるのは中国語ばかりでした。

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| post at 23:42:06 | コメント(2)  | カテゴリー : 14. 書評 |

2015年04月25日

福井地裁判決と保険リスク

 

福井地裁の交通事故判決が話題となりました。

「もらい事故で損害賠償義務?」ということで
判決を疑問視する声が多かったようですが、
公表された判決文原告代理人の説明を見ると、
判決がおかしいと言い切るのも難しそうです。

センターラインを越えて走ってきた車の任意保険は
家族限定だったのに、家族以外の人が運転していたとか。
これは気を付けたいですね。


ところで、福井地裁判決とは直接の関係はないのですが、
リスク管理の世界では、「経済情勢や保険事故の発生率等が
保険料設定時の予測に反して変動することにより、保険会社が
損失を被るリスク」を「保険引受リスク」としています
(上記定義は金融庁の保険検査マニュアルを引用)。

そして保険会社では、何らかの手法を用いることで
この保険引受リスクを定量評価するのが一般的です。

また、健全性指標であるソルベンシー・マージン基準では、
当年度保険料×リスク係数、または、平均保険金×リスク係数
のいずれか大きい額を一般保険リスク相当額としています。

こうして計算した数値をリスク管理部門がモニタリングすれば
保険引受リスクを管理したことになるのでしょうか。

例えば、交通事故の発生率が予測に反して変動する要因は、
景気の変動もあるでしょうし、ドライバーの年齢構成の変化、
交通法規の変化、異常気象の発生、保険会社の引受姿勢など
いろいろ考えられます。

これらのなかには営業・SCの現場でなければ
なかなか変化の兆しに気が付かないものもあるでしょう。

「リスクはリスク管理部門が管理するもの」という考えが
間違いであることがわかります。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は小田急ロマンスカーです。

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| post at 19:08:05 | コメント(1)  | カテゴリー : 06. リスク管理関連 |

2015年04月18日

IFRS適用レポート

 

金融庁は国際会計基準(IFRS)を任意適用した企業の
実態調査を行い、そのレポートを公表しました(15日)。
金融庁のサイトへ

まず、日本におけるIFRS任意適用企業(予定を含む)が
すでに75社に達していることに驚きました。
米国会計基準からの移行が相次いでいる模様です。

業種別には、電気機器、医薬品、卸売業、サービス業、
情報・通信業、輸送用機器、化学といった業種で
適用企業が多いとのことです。

他方で任意適用企業が存在しない業種もあり、
このなかには「銀行業」「保険業」が含まれています。

保険業の場合、保険契約(IFRS4)がまだ策定中なので、
現時点で任意適用がないのは仕方がないかもしれません。
しかし、グローバル展開を志向する保険グループの場合、
IFRSの任意適用は時間の問題のようにも思えます。

レポートによると、任意適用を決めた理由としては、

 ・グループとして経営管理上のモノサシをそろえる
 ・同業態社との比較可能性の向上を目指す

などを挙げる会社が多かったようです。

そして、移行による実際のメリットをたずねると、
任意適用を決めた理由と概ね共通していますが、

 ・会計や財務報告のあり方について、経営層を含め
  全社的に議論する良い機会となっている
 ・業績面での子会社との認識の相違を避けられる

といった回答も見られます。

「誰がIFRSへの移行を提案したのか」という質問への
回答も興味深い結果が出ています。

回答の半数が「経理部門」、半数が「CEO」「CFO」でした。
経理部門という回答、つまりボトムアップが過半数だと
想像していたのですが、トップダウンも多いのですね。

レポートでは移行によるデメリットも確認しています。
回答を得た46社のうち、27社が「実務負担の増加」を挙げ、
複数帳簿管理や開示量の増加などが聞かれたようです。

ちなみに、「のれんの定期償却がない(=日本基準と違う)」
「株式評価損がP/Lに計上されない(=日本基準と同じ)」
といったコメントはレポートには出てきませんでした。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※久しぶりに月島でもんじゃ焼きを食べました
 (もんじゃ焼きの写真は撮り忘れました)

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2015年04月11日

政策保有株式

 

日経平均株価が2万円を回復したタイミングを
ねらったわけではないのですが、次のinswatch
最近のガバナンス改革で政策保有株式の在り方が
問われているという文章を寄稿しました。

先月策定されたコーポレートガバナンス・コードに
政策保有株式に関する原則が盛り込まれたことを
取り上げたもので、「禁止」「縮小」ではありませんが、
保有の合理性を具体的に説明する必要があると
紹介しました。

コーポレートガバナンス・コード(金融庁のサイト)

もっとも、主要投資部門別の株式保有比率を見ると、
直近(2013年度末)では保険会社は5.1%にすぎません。
1980年代から90年代前半までは15%程度だったものが、
2012年度末には10%を下回り、今に至っています。

都銀・地銀等(直近では3.6%)とともに、かつてに比べると、
株式市場における生損保の存在感が小さくなっていると
わかりますね。

銀行や生損保の保有比率が下がった一方、
事業法人等の保有比率はこの10年間、20%強で
ほとんど変化していないのは意外でした。
ただし、この中には取得した自己株式もあるので、
実質的な比率はもう少し低そうです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※東京駅の4階に素敵なラウンジがありました
 (宿泊客専用です)。


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2015年04月05日

米国保険監督の評価

 

IMFによる日本の金融セクターの評価プログラム
(FSAP JAPAN)について以前ご紹介しましたが、
IMFが昨年秋に米国に対して実施したFSAPの
評価レポートが公表されました。
保険セクターの評価レポートへ

さっそく保険セクターに対する評価レポートを見ると、
26の評価項目のうち、
 Observed(O)が8
 Largely observed(LO)が13
 Partly observed(PO)が5
 Not observed(NO)が0

という結果で、POという低い評価が5つありました。

POとなった項目は次の通りです。
 ICP1(監督者の目的、権限および責任)
 ICP2(監督者)
 ICP7(コーポレートガバナンス)
 ICP14(Valuation)
 ICP23(グループベースの監督)

ちなみに、2011-12年のFSAP JAPANでは、
 Observed(O)が12
 Largely observed(LO)が10
 Partly observed(PO)が4
 Not observed(NO)が0

という評価で、POとなった項目は、
 ICP2(監督者)
 ICP14(Valuation)
 ICP24(マクロプルーデンス)
 ICP26(クロスボーダー協力・協調)

でした。個人的な印象ですが、前回の日本よりも
低い評価だったのではないでしょうか。

IMFは「前回よりはかなり改善された」とするものの、
伝統的な州規制と、新たに創設された連邦規制の
調和が総じてうまくはかられていないと評価した
のかもしれません。

FRB(=連邦規制)に対しては、次のようなコメントも。

・規制の目的に保険契約者の保護が含まれていない
 (IMFは危機時のコンフリクトを懸念)
・グループベースの規制資本が定められていない
・ERMやORSAを求めるのであれば、保険監督に関する
 専門性を高めるべき
・規制には銀行と保険会社の違いを反映させるべき

英語なので読むのが大変ですが、米国の保険市場や
保険監督を知るのに参考になると思います。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※左は中目黒駅ホームからの写真です。

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2015年04月02日

今年もオープンセミナー

 

4月になったところで、RINGのオープンセミナーのご案内です。

今年で17回目を迎えるRINGの会オープンセミナーが
7/4(土)にパシフィコ横浜で開催されます。
毎年1000人規模が集う保険流通最大級のイベントです。

プログラムは例年通りの3部構成で、私は第1部のパネル
「制度改正は、本当に代理店を直撃するのか?」の
コーディネーターを務めます。

第2部と第3部についてはプログラムをご覧いただくとして、
第1部のパネリストは、損保協会シニアフェローの栗山さん、
増島弁護士、そして保険ジャーナリストの中崎さんと、
珍しくアドバイザーで固めてあります。

それにしても、プログラムのパネリスト紹介は控えめというか、
現在の肩書きだけなのですね。私が言うのもなんですが、
このテーマでは最強のメンバーだと思います。

ご存じないかたのために(勝手に)解説しましょう。

栗山さんは1990年代に安田火災(現・損保ジャパン日本興亜)
の社長室に所属し、その後広報部長を務め、2000年代後半には
常務執行役員として保険会社の経営を担っていたかたです。

ちなみに旧Y社の「社長室」は経営企画部門のこと。
自社の経営はもちろん、行政にも業界にも通じたポジションです。

増島さんは森・濱田松本法律事務所の「パートナー」。
彼は2010年から2012年にかけて金融庁の保険課で
法務担当をしていた弁護士さんです
(ちなみに当時私は彼の隣りに座っていました)。

今般の募集規制改革の議論は2012年6月に始まりました。
このとき彼は保険課唯一の弁護士として在籍していました。

中崎さんは保険流通に詳しい専門ジャーナリストとして
40年のキャリアを持ち、現在も全国を飛び回っています。

プロ代理店の世界をはじめ、保険流通を語らせたら、
中崎さんの右に出る人はいないのではないでしょうか
(この世界で若手が育っていないという見方もできますが...)

と、ここまで書いて、コーディネーターの責任の重さを
ひしひしと感じてしまいました。

ところで、このイベントが「オープンセミナー」なのは、
オープンではないセミナーがあるからなのですね。
RINGのアドバイザーは今回登場する私たちだけはなく、
いろいろな専門分野の皆さんが関わっています。

詳しいことはセミナー当日の「RINGブース」で
たずねてみてはいかがでしょうか。

↓お申込みはこちらから↓
RINGの会 オープンセミナー

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は皇居外苑です。「二重橋」はどちらの橋でしょう?

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