植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2015年03月29日

外資系生保の市場シェア

 

最近、外資系生保について調べる機会がありました。

2013年度末の市場シェアは、保険料等収入で3割弱、
総資産で14%(かんぽ生命を除くと19%)です。

意外に小さいと見るか、あるいは、大きいと見るかは
人により違うとは思いますが、銀行や損保に比べると、
生保では外資系の存在感がかなり大きいと言えそうです。

日本の生保市場で外資系の存在感が高まったのは
2000年代前半のこと。それ以前の外資系の存在感は
非常に小さなものでした。

外資系生保の会社数(支店形態を含む)は、
1999年度末の9社から、2001年度末には17社に増加。
総資産シェアは1999年度末の4.0%から、2001年度末に
10.5%、2004年度末には14.7%となりました。

その後も外資系生保の総資産シェアは上昇基調ですが、
当時に比べると緩やかです(会社数は横ばい)。

2000年代前半に外資系生保の存在感が高まったのは、
経営不振・停滞に陥っていた既存生保の買収のほか、
国内系生保への不安感や不信感、チャネル規制の緩和
(銀行窓販の解禁など)などがありました。

現在、日本勢による海外進出の機運が高まっています。
過去の日本の例を見ると、外資(先進国)系だからといって
市場シェアを獲得できるわけではなく、環境要因も大きい
ということがわかります。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は井の頭公園です。

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| post at 14:00:54 | コメント(2)  | カテゴリー : 03. 保険市場の動向 |

2015年03月21日

資金循環統計から

 

資金循環統計(2014年第4四半期速報)の参考図表には
興味深い情報がいろいろ載っていますので、ご紹介です。
日本銀行のサイトへ

最も注目されたのは、個人金融資産が1694兆円と
過去最高を更新したことかもしれません。
資金の流入(主に投信)と時価上昇(株式と投信)で、
9月末と比べて40兆円増加しました。

「部門別の資金過不足」の推移もあります。
資金余剰主体である家計が、資金不足の一般政府を
賄っているという構図に変化はありません。

ただ、資金余剰が続いていた民間非金融法人企業が
この四半期は資金不足となっていました。
今後のトレンドに注目です。

「国債等の保有者別内訳」にも注目しましょう。
中央銀行(=日銀)の構成比が25%となりました。
異次元緩和を続けているので当然の動きですが、
現在の政策が続くかぎり、構成比は一段と高まります。

なお、「日銀が国債をどこまで買えるか」というタイトルの
面白い記事を見つけましたので、ご参考まで。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※久しぶりにつくしを摘みました。春ですね。


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2015年03月19日

きんざいの書評(その2)



12月に続き、週刊金融財政事情の今週号(2015.3.16)に
書評(一人一冊)が載りました。
今回は「12大事件で読む現代金融入門」を選びました
(著者は倉都康行さん)。

「だれもが耳にしたことのある危機のストーリーを通して、
 現代までの金融の流れや今日の経済の仕組みが
 ざっくり理解できる本」

ということで、国際金融の実務家ならではの視点で
約40年間に起こった12の事件を取り上げています。

同じような事件が繰り返し発生していることがわかり、
 「金融パーソンには学習能力がない」
 「過去を知っても金融危機は避けられない」
という絶望感に襲われてしまうのですが、それでも、
何も知らないよりはずっと有利とのことでした。


ところで、この号は珍しく保険特集でして、
それも保険商品を取り上げた意欲的な企画でした。

取り上げているのは次の6つです。
 ・テレマティクス自動車保険
 ・ガン団信
 ・畜産業者向けの費用補償保険
 ・長割り終身
 ・少額短期保険
 ・アニコム損保(ペット保険)

銀行が主力とする貯蓄性の強い保険ではなく、
市場のイノベーションにつながった事例等を示し、
多種多様な「将来への備え」を示したところが
なかなか興味深いです。



※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※4年ぶりに日本工業倶楽部に行きました
 (東日本大震災のとき以来です)。


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2015年03月14日

個人契約者の増配

 

11日の日経1面トップは、日本生命が個人契約者の配当を
7年ぶりに増やす方針を固めたという記事でした。
他の大手生保も増配を検討しているとのことです。

過去にも増配報道の不思議さについてコメントしましたが、
決算発表の際にも「増配」が取り上げられるでしょうから、
今のうちに疑問点を2つ挙げておきましょう。


疑問1:「増配総額」だけで「配当総額」はいいのか?

今回の各紙報道は「増配総額は約30億円」とあるものの、
配当総額がどの程度になるかの報道がありません。

これが株主配当であれば、増配もさることながら、
利益のうち配当還元がどの程度なのか注目されるはず。

それでは、前年の大手生保の個人向け配当総額は
いったいいくらだったのか。実は公表されていません。

相互会社では、剰余金処分額に「社員配当準備金」があり、
配当財源として社員配当準備金にあてた金額はわかります
(例えば昨年度の日本生命は2017億円)。

ただし、ここには団体保険、団体年金の配当も含まれていて、
両者がそこそこ大きな金額を占めているのです。

ディスクロ誌には「社員配当準備金明細表」という表があり、
保険種類ごとに当期の配当金支払がわかるのですが、
直近決算の支払額が掲載されるのは次のディスクロ誌です。

また、「当期の配当金支払」は必ずしも当期の配当所要額では
ないので、個人向け保険ではこれを配当所要額とみなすのは
ちょっと厳しいのではないかと思います。

ということで、配当準備金の内訳を公表してほしいのですが、
大手生保のなかで内訳を公表しているのは第一生命だけ。
保険マスコミの皆さまに期待しましょう。


疑問2:生保の配当はどうやって決まるのか?

日経だけではなく他紙も含め、増配の理由として、

「株高や円安で資産運用収益が増え、保有契約数の反転など
 本業の改善も確実になったと判断」

とほぼ同じ書きぶり。円安・株高の恩恵というわけです。

ただ、ここで言う「資産運用収益」とは何でしょうか。
基礎利益に注目するのであれば利配収入なのでしょうし、
円安・株高で資産価値が上がり、売却益をあてるのかも
しれません(まあ、増配総額30億円ですしね)。

いずれにしても、何がどうなったら生保は配当を増やすのか。
基礎利益なのか当期剰余なのか、あるいは支払余力なのか。
いくら経営の裁量で決められるとはいえ、株主配当に比べると
あまりに手掛かりがないと感じるのは私だけでしょうか。

そのようななかで、

「生保の増配は株や外貨建て商品を持たない保険の契約者にも
 円安や株高の好影響が及ぶ」(日経)

とは、ちょっと強引な感じがしますね。

日本生命の昨年12月末のソルベンシーマージン総額は
12.6兆円(前期末比+3.2兆円)に達しているのですから。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は娘の作品です(中3家庭科)。
 親バカということでご容赦下さい^^


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2015年03月07日

ジュネーブ協会のレポート

 

保険業界の国際シンクタンク組織であるジュネーブ協会が、
日米生保の破綻事例に関するレポートを公表しています。
ジュネーブ協会のサイトへ

日本は主に2000年前後の中堅生保の破綻事例を、
米国はMutual Benefit(1991年破綻)など3社の事例を
取り上げ、いずれも契約者負担を和らげることができ、
金融安定を確保できたと結論付けています。

日本の記述を見ると、

「破綻後の契約条件の変更等がなければ、業界負担が
 約6兆円に達した可能性がある(実際には0.78兆円)」

という分析がありました。
負債のデュレーションを15年として試算した数値のようです。

6兆円と0.78兆円の差額を誰が負担したのかといえば、
破綻会社の契約者です(再建スポンサーではありません)。
改めて当時の生保破綻における契約者負担が大きかった
とわかります。


著者の大久保さんには申しわけありませんが、
日本の記述を見て、いくつか気になるところがありました。

米国の事例では、破綻が他のライバル生保の契約に
波及しなかったとのことですが、日本では違いました。

1997年に日産生命が破綻すると、多くの中堅生保で
解約が増えています。「相次ぐ破綻で解約が増えた」と
破綻直後の記者会見でコメントした社長もいました
(東京生命の事例)。

私自身は、解約が殺到して資金繰りに行き詰まり、
破綻に至った会社はなかったという分析をしていますが、
このレポートで当時の解約増について触れていないのは
ちょっと不思議な感じがします。

もう一つ、金融安定ということなので、当時の生保と銀行の
関係について何らかの記述があるとよかったかもしれません。

日本の場合、銀行危機と生保危機が同時進行でした。
当時の両者は今よりも相互に資本(基金や劣後ローンを含む)
を持ち合う関係となっていましたので、連鎖的な経営悪化が
懸念されたと記憶しています。

最終的には、大手銀行を中心に政府が公的資金を投入
(預金者は100%保護)し、連鎖的な経営悪化を避ける一方、
親密銀行からの支援を得られず破綻した生保も数社ありました。

生保が破綻しても銀行は大丈夫、という判断だったのか、
このあたりは私ももう少し知りたいところです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※箱根旧街道を湯本から芦ノ湖まで歩きました。
 石畳の道は歩きにくいです。

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