植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年12月24日

保険の国際資本基準

 

先週のことですが、保険監督者国際機構(IAIS)が
国際的に活動する保険グループ(IAIGs)に適用する
リスクベースの国際資本基準(ICS)の市中協議文書を
公表しています。

このスイスからの素敵な「クリスマスプレゼント」は、
英文で159ページもありました(涙)
IAISのサイトへ

10月26日のブログで紹介した国際資本規制とは別に、
IAISは世界共通の保険監督の枠組み作りを進めており、
今回のICSはこちらの話です(参考:2013年10月14日のブログ)。
ちょっとわかりにくいですね。

対象となる「国際的に活動する保険グループ(IAIGs)」は
海外での保険料収入がグループ全体の10%以上を占め、
かつ、一定の規模(総資産または収入保険料)を満たす
保険グループと決められていて、日本勢としては、
3メガ損保グループと第一生命が該当するようです。

ただし、数値基準によらなくとも、行政当局の判断で
対象となる保険グループを決めることができるので、
最終的にどのグループが対象となるか、まだわかりません。

さて、市中協議文書をざっと眺めてみましたが、
肝心の資産・負債の評価方法については
「market-adjusted approach (市場整合的な手法)」と
「GAAP with adjustments approach (財務会計を修正)」
の2つが並存している状態です。

すなわち、米国との調整はこれからということで、
最終案にたどり着くにはまだまだ道のりが遠そうです。

ちなみに、2011年に採択された保険基本原則(ICP)では、

「資産・負債の評価は経済価値ベースである」

としたうえで、経済価値ベースの評価としては、
「市場整合的な評価」のほか、「償却原価による評価も
適切なものとなりうる」という決着が図られました。

ICSの最終化は2016年12月の予定ですから、
あと2年間しかありません。
今回はどのような決着が図られるのでしょうか。

日本への影響も大きいとみられるだけに、
引き続き注目していきたいと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※左の写真は日本テレビ、右は帝国ホテルです

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2014年12月20日

ERM経営の本が出ました



久しぶりに自分が関係する本の紹介です。

「保険ERM経営の理論と実践」が無事出版となりました
発売は22日と聞いていますが、すでにアマゾンでは
購入できるようです。

著者である「ERM経営研究会」は、昨年、損保総研が
立ち上げた、実務家と保険研究者の合同研究会です。

3メガ損保のリスクマネジャーをはじめとする実務家と、
金融・保険学者メンバーで、ERM経営のあり方について
議論を重ねてきました(各会の詳細は本書に掲載)。
その成果をまとめたものです。

保険ERMに関する本は、どうも規制の解説になりがちです。
本書はそうではなく、メガ損保のリスクマネジャーとして
ERM経営の現場で日々奮闘するメンバーが執筆しており、
参考になるところも多いのではないでしょうか。

また、第6章では保険会社のERMに関する学術研究を
取り上げています。ERM研究は萌芽期とのことですが、
学会でも急速に関心が集まりつつあるそうです。

私は第2章を執筆しました。自分の担当もさることながら、
今回は他の章をいかに充実したものとするかに注力しました。
おかげで、メンバーから相当嫌われたかもしれません^^

保険会社のERM経営(あえて「ERM経営」としています)は
発展途上の分野であるだけに、研究会でも議論が足りない
テーマがまだまだあると思います。
例えば、「グループベースのERM」「日本的ガバナンスとERM」
あたりは、さらに議論が必要かもしれません。

とはいえ、行政や格付会社への対応というのではなく、
自らが主体的・能動的に実践するERM経営について
本書が考えるきっかけになればいいなあと願っています。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします


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2014年12月13日

討論型民主主義

 

「経済成長を追求しつつ、財政再建も果たすべき」
そう考えていた人にとって、今回の選挙は選択肢がない
何とも苦い選挙だったのではないでしょうか。

しかも、あれだけ裁判で違憲判決が出ているのに、
一票の格差は是正されず、そのまま選挙に突入です。
どうも民主主義の限界を感じてしまいます。


ところで、先日の台北のリスク・カンファレンスでは、
金融危機などのテーマのほか、「討論型民主主義」という
私には耳慣れないものがありました。

民主主義とは基本的に多数決で決めることです。
しかし、年金や原発など、私たちの社会が抱える課題は
唯一の解がなく、判断が難しいことばかり。

いざ投票となる際に、十分な情報を持たないまま、
意思決定を迫られることが多いのではないでしょうか。

台北の会議では、米スタンフォード大学のフィシュキン教授
が登壇し、Deliberative Democracy(討論型民主主義)の
スピーチを行いました。

討論型民主主義は、ある課題について、専門家から十分な
情報提供を受けたうえで、小グループでじっくり討論し、
よく練られた世論を形成しようというものです。
参加者についても、国民の縮図になるよう工夫されます。

具体的にはこちらの事例をご覧いただければと思いますが、
まだまだ実験段階とはいえ、苦い不美人投票ではなく、
このような形で民主主義のコストを払うのは、
ポジティブに考えられるのではないかと感じました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※お祈りする若い女性が多かったので聞いてみたら、
 縁結びの神様として有名な場所だそうです(写真右)。

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2014年12月07日

外貨建資産が増加(台湾)

 

前回のブログで、国内生保の外貨建資産ウエートが
20%に達したと書きました。

ところが、台湾生保の海外投資はそんなレベルではなく、
一般勘定資産の43%を占めています(2013年末)。
2001年には12%だったそうですから、大きな変化です。

外貨建ての保険が多いのかと尋ねてみると、そうでもなく、
責任準備金の大半は自国通貨建てとのことでした。

台湾の生保も長引く低金利に悩まされています。
10年国債利回りが2008年以降、1%台で推移する一方、
ある資料によると、平均予定利率は4%近い水準です。

しかも、台湾には十分な超長期債市場は存在しません。
また、多額の危険差益を得られる環境でもなさそうです。

そこで、当局は海外投資等に対する各種規制を徐々に緩め、
結果として、今のような資産構成となったと考えられます。

某大手では一定規模の為替ヘッジを行っているようでしたが、
業界全体としては、「各社が為替変動準備金を積んでいる」
(当局=金融監督委員会が2012年に導入したもの)
という声を何度も耳にしました。

ところが、ある記事を見ると、地元格付会社のコメントとして、
「準備金残高は海外投資の0.5%未満しかない」
「準備金を積極的に積もうという動きは見られない」
とありました。TAIPEI TIMESへ

低金利で金利リスク(ALMリスク)が顕在化しているなかで、
毎期の会計上の損益を確保するため外貨建資産に傾斜し、
為替リスクを増やしているという姿が浮かび上がります。


台湾では2009年のKuo Hua Lifeに続き、今年8月には2つの生保
(Global Life、Singfor Life)が当局の管理下に置かれました。
他にも当局の健全性基準を下回っている会社が複数あるようです。

ただ、日本の破綻処理制度とは違い、台湾では保険契約者が
100%保護されており、公的資金を使う枠組みとなっています。
Kuo Hua Lifeの処理コストは約3000億円と言われています。

充実したセーフティネットは破綻生保の契約者には福音です。
しかし、経営者のモラルハザードを高めることにもなりかねず、
制度設計の難しさを感じました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※かつて階段の上には神社があったそうです。

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2014年12月04日

外貨建資産が増加

 

出張で台北に来ています。
上着がいらないほど暖かいのに、厚着の人が多いです。
こちらに住んでいると、きっと寒く感じるのでしょう。


さて、前回に続き、主要生保の4-9月期決算から。

歴史の長い国内系生保の資産構成を見ると、
一般勘定に占める外貨建資産の比率が高まっており、
2014年9月末には9社合計で20%に達しました。

過去の推移をみると、比率の上昇が顕著となったのは
2012年度以降のことです。
特にこの上半期は外貨建資産が4.8兆円増えており、
増加資産(5.6兆円)の9割近くに達しました。

日銀の異次元緩和(と金利低下)・アベノミクスを受け、
国内長期債への投資にややブレーキがかかる一方、
生保資金は外貨建資産に向かっているようです。

外貨建資産への投資といっても、為替リスクを取った
資産運用には総じて慎重な姿勢を維持している模様。
(=ヘッジ付きが多いということ)。
国内債券の代替という意味合いがあるのでしょうか。


ただし、両者は同じ「円金利資産」とはいえ、
「負債を意識」という点では異なっていると思います。
ヘッジ外債は負債の金利リスクを減らそうとする
資産運用ではないからです。

それに、為替リスクを取っていないとしても、
現物と為替ヘッジの期間ミスマッチがあるとすれば、
イールドカーブの変化で勝ち負けがあるはず
(もちろん、ヘッジコストも変動します)。

ヘッジ外債にとって状況が悪くなりそうになった際、
果たして、ここまで積みあがった外債のポジションを
大きく減らすことができるかどうか。

市場流動性を心配しているのではありません。
外債のポジションが急減すると、おそらく各社の
利息配当金収入が大きく減ってしまうはずだからです。
まあ、そこまで考えてリスクテイクしているとは思いますが...


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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