植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年10月26日

保険の国際規制が固まる

 

保険会社向け(正確にはG-SIIs向け)の国際資本規制となる
BCR(基礎的資本要件)の最終文書をIAISが公表しました。
IAISのサイトへ

来月15~16日のブリスベーンG20サミットで承認されれば、
保険会社に対する初の国際資本規制の策定となります。

文書を見ると、7月に公表された市中協議文書の内容から
大きくは変わっていないようで、Fair ValueやCurrent Estimate
にリスク係数をかけるシンプルな計算方法です。

注目されていたBCRの水準感は、7月の市中協議文書では、
「7、8月の調査結果を見てから決める」としていましたが、
変更の余地を残したうえで、とりあえず公表した係数を
そのまま適用することになりました。

・ALMリスクは対象外
・分散効果も明示的には考慮せず

というのも7月の市中協議文書と同じです。
ただ、損保のリスク計算では、自然災害などの巨大リスクを
明示的に反映するような計算式となった模様です。

今回のBCRは「保険分野に国際資本規制を導入する」
という意味では歴史的な話だとは思いますが、締切があり、
とにかく導入することを最優先したのでしょう。

しばらくはBCRの数値が公表されないこともあり、
むしろ次の議論(上乗せ資本の水準やICSの内容)が
どうなっていくのかに、より注目したいと思います。

ここから先は、日本のソルベンシー規制見直しとの関係も
気になるところですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします

※写真の脇町潜水橋は、増水時には沈んでしまいます。

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2014年10月23日

うだつの町並み

 

美馬市脇町のうだつの町並みを10年ぶりに訪れました。
徳島駅からディーゼル特急で約40分の穴吹駅で降り、
吉野川の大きな橋を渡ってしばらく歩くと脇町です。

「うだつ」とは隣家と接する二階に設けた小さな壁です。
本来は防火が目的なのですが、江戸から明治にかけて
藍の商売や吉野川の水運で栄えた脇町では、商家が
競うようにして立派なうだつを上げ、今に残っています。

うだつの町を歩いていると、どこからか香ばしい匂いが。
見ると、おばちゃんが店で田楽豆腐を焼いています。
匂いにつられて中に入ってしまいました。

一人で熱々の田楽豆腐を食べながら店内を見渡すと、
窓ガラスに赤い字で「横倉生活改善グループ」とあります。

横倉生活改善グループは、標高600mの山の中にある
横倉地区の女性たちによるグループで、当初は不便な
暮らしを少しでも良くしようという活動だったようです。

しばらくして豆腐作りが始まり、今では豆腐のほか、
田舎だんごや寿司などを生産し、地域ブランド商品として
うだつの町などで販売しているとか。

おばちゃんいわく、

「山の中だから、このままだと誰もいなくなってしまうし、
 なんとかしなくっちゃ、ということで始まったんだよ」

「最近は補助金目当ての団体もあるみたいでしょう。
 うちはそうじゃないよ。ちゃんとやってるんだから」

よくよく聞いてみると、グループ結成は1969年だそうで、
もう45年も続いていることになります。

そのうちグループの女性たちが集まってきました。
お客は私だけだったので、

「お客さん、どこから来たの?」「お茶を入れようね」
「だんご食べる?(=お饅頭のようなだんごでした)」

といった調子で、気が付いたら「くいしん坊!万歳」の
松岡修造さんのようになっていました^^


このところ地方に行くと、「歴史ある町の吸収合併」
「山村留学の休止」といった寂しい発見が続いていたので、
久しぶりに元気な話を聞くことができました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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2014年10月20日

保険学会の全国大会

 

週末に高松で開かれた日本保険学会の全国大会に
参加してきました。

今年の大会は、初日のシンポジウムのテーマが
「IT技術の進歩と保険事業の展開」、
2日目の共通論題が「保険業規制と国際的調和」、
いずれも料理するのに難しそうなテーマでした。

それでも研究者の皆さんにとって、テーマになりそうな
論点がいろいろと見つかったのではないかと思います。


「保険業規制と国際的調和」では、複数のパネリストから、

・保険事業の国際化に伴い、健全性規制の共通化が必要
・ただし、各地域の特性等を踏まえたものであるべき

という話が出たので、「共通化と個別性の両立」について
フロアから質問してみました。

もしかしたら意地悪な質問に聞こえたかもしれません。
しかし、矛盾を突いたのではなく、保険事業は銀行以上に
市場ごとの事業・リスク特性の違いが大きいように思うので、
議論に値するテーマだと考え、質問したものです。


また、企業会計と金融規制の両面で進む経済価値ベースの
評価をテーマにした上野先生(静岡県立大学)に対しては、

・変動が大きくなることで、起こさなくてもいい行政措置
 (早期是正措置など)を招くのではないか?
・「変動が大きくなるから経営者にとってリスキー」と言うが、
 これまでよく見えなかったものが見えるようになるだけでは?

といったコメントがありました(後者は私)。


論文発表では、黒木先生(名古屋商科大学)による
「日本生命の戦後の相互会社化」が興味深かったですね。

「藤本談話のオーラルヒストリー分析を中心に」という副題が
あるように、当時のキーパーソンのオフレコ談話を発掘し、
他の資料と比較検討することで、真相に迫りました。

その結果、財閥系のようにGHQの指導ではなかったにせよ、
やはり、相互会社理念が主たる動機の相互会社化では
なかった可能性が高いと結論付けていました。

レジュメには「戦後のわが国相互会社経営の形骸化と、
戦後の相互会社化との関連性」という記述もあり、
今後の研究の進展が楽しみです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は帰りに空港で食べた釜揚げうどんです。


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2014年10月12日

正味収保は過去最高を更新

 

inswatch」(保険代理店のための週刊メールマガジン)
の原稿を書くため、最新の損保ファクトブックを見ていたら、

「正味収入保険料の最高額は2013年度の7兆7713億円」

という記述に目がとまりました。昨年度の正味収入保険料は、
これまで最高だった2006年度を上回っていたのですね。
ファクトブックはこちら

元受正味保険料の過去最高額は1996年度とのことですが、
収入積立保険料を除くと、やはり昨年度が最高額のようです
(こちらは「2012年度に続き、過去最高額を更新」かもしれません)。

主要種目の元受保険料を、底だった2010年度と比べると、

・自動車保険が約3200億円の増収
・火災保険が約2000億円の増収
・新種保険が約1500億円の増収

と、この3種目で全体の増収(約7000億円の増収)の大半を
説明できます(積立・自賠責を除くベース)。
自動車保険だけではなく、火災・新種(費用・利益など)も
増収に貢献していることがわかります。

収入保険料は過去最高となり、事業費率もかつての40%弱から
30%近くまで下がっているのですが、損害率は、ならして見ても
10~20年前に比べると高水準で推移しているというのが
損保の保険収支の現状と言えそうです。


ちなみに「inswatch」では、台風19号の接近を踏まえ、
損保と自然災害をテーマにした原稿を書きました。
機会がありましたら、ぜひご覧下さい。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は横浜港です。

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2014年10月06日

今年の生保・損保特集号

 

先週発売された2014年版の生保・損保特集号
(週刊東洋経済の臨時増刊)を読みました。

昨年に続き、今年もレポートを書いています。
タイトルは「主要生損保のリスク戦略」。
決算データからリスク戦略の違いを探ったものです。
機会がありましたら、どうぞご覧下さい。



さて、今回の特集号ですが、昨年版とは違い、
「保険グローバル競争」「保険販売大激震」
「女性活躍推進」と、テーマを明確にしたことで、
読みやすくなったと感じました。

グルーバル競争のところでは、ニッセイ基礎研・松岡さんが、

「ASEAN各国は決して遅れた保険市場ではない」

「近年のASEAN諸国への外資参入は、出遅れていた
 米国や日本の保険会社がM&Aを通じて参入している
 という側面が強い」

という分析をしています。


本号の目玉とも言える保険販売の特集では、

「当面、損保専業代理店は、地域密着型のスモールビジネス
 モデル、保険会社の販社機能を持つ直資型代理店モデル、
 独立系で全国展開するグループモデルに3分化されていく」

という保険ジャーナリスト・石井さんの記事が印象的でした。
保険流通のレポートは事例や取り組みの紹介記事が多く、
全体としてどうなっているのかを示したこの記事は貴重です。

恒例の生保レディ覆面座談会では、新人の育成や推奨商品
への取り組み姿勢が、もしかしたら、早くも会社によって
違ってきているのかなあと、興味深く読みました
(「A子」「B子」という表現にはちょっと抵抗がありますね...)。


ということで、前向きなコメントで終わりたいところですが、
今回は巻末のデータ集をやめ、「保険会社四季報」と
なってしまいました。これには困りました。

これまでのデータ集には、記者クラブにだけ公表され、
ディスクロ誌には掲載されないデータが載っていたのです
(例えば「平均予定利率」「銀行窓販額」など)。
それ以外のデータも、統計号のように使えて、結構便利です。

保険会社四季報もいいですが、長年の読者としては、
次回からはぜひデータ集を復活していただきたいですね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は築地市場(青果部)です。季節を感じます。

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