植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年07月27日

「賢い支払い術」に学ぶ

 

先日あるカード会社からDM(ダイレクトメール)が来ました。

 お得なキャンペーン実施中!
 今ならギフトカード1万円分が当たるチャンス!

とあり、カードの賢い支払い術を指南するとのこと。
中面を見ると、リボ払い・分割払いの勧誘でした。

今月の支払いに不安を感じたAさんに対し、
助っ人が「リボ払い・分割払いへの変更」を伝授し、
Aさんの不安が解消されるというストーリー。

ただ、支払い方法をリボ払い・分割払いに変更すると、
当然ながら手数料(利息)が発生しますよね
(私の場合、リボ払いだと実質年率15%かかるはず)。

そんなことは裏面にいかないと書いてありませんし、
説明文の字が小さく、かつ、私にはわかりにくかったです。

このような勧誘がカード業界では行われているんだなあと
思いつつ、せっかくなのでDMを大学生の息子に見せ、
金利やリボ払い、カード会社の収益源について解説しました
(ちゃんと聞いていたかどうかは疑問ですが...)。

もっとも、カード会社がリボ払いなどの普及に務めているとはいえ、
調べてみると、依然としてカード支払い方法の90%以上は
利息のかからない非割賦方式(一括払い、ボーナス払いなど)
なのですね。

割賦方式(リボ払い・分割払い)も伸びてはいるものの、
むしろ非割賦方式のほうがより伸びているようです。


さらに改めてわかったことは、そもそも日本ではいまだに、
個人消費に占める決済手段の5割以上が現金だということ。
クレジットカードは全体の13%を占めるにすぎません
(クレディセゾンのIR資料から引用。データは2012年)。

米国と違い、一括払いが中心で利息が発生しないので、
日本のカード会社は加盟店手数料を下げられず、
その結果、加盟店が増えず、カード利用の裾野が広がらない...

あるいは、日銀券への信認の厚さもあるのかもしれませんし、
文化的な要素もありそうです。例えば、結婚式など冠婚葬祭には
現金を持っていきますよね。

とはいえ、今年からパスモをオートチャージにして以降、
個人的には現金を使う機会をかなり減らしています。
例えば5000円以上の支払いはクレジットカードを使い、
小口の買い物は、パスモが使えればそれで決済。
年々増えているネット通販も、決済はカードが中心です。

カード会社にとって悪いお客さんではないと思うのですが^^


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※私の父と娘の誕生会をしました♪


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| post at 21:51:04 | コメント(0)  | カテゴリー : 05. 金融・経済全般 |

2014年07月20日

「日銀、『出口』なし!」

 

日銀ウォッチャー加藤出さんの近著です。
副題は「異次元緩和の次に来る危機」。

日本銀行が現在行っている量的質的緩和策は、
終わるに終われない状況に陥るのではないか。
これを「ホテルカリフォルニア化」と言うのだそうです。

日銀は出口政策についての議論を封印していますし、
筆者によると、国債市場の多くのプレーヤーは、
「インフレ率は日銀が言うペースでは上昇しない」
と思っているなかで、出口論は早いのかもしれません。

しかし、そもそも異次元緩和策は時間稼ぎ策であって、
どこかで終わらせなければなりません。
財政危機と通貨の信認凋落を招かないためにも。

加藤さんは、日本の国債市場の自律的な機能は
日銀の買いオペによってかなり失われており、実態は
国債直接引き受けに限りなく近くなっていると述べています。

そして現在、多くの国債市場関係者は、

「インフレ予想が上がって国債の金利が急騰を始めたら、
 日銀は今以上の巨大な規模で国債を買い支えるに違いない」

と予想し始めているそうです。
これでは、日銀が本来、出口政策に向かうべき時に、
さらに大規模な金融緩和策を行うということになってしまいます。

アベノミクスがモデルにしたという高橋是清の政策。
出口政策として日銀国債引き受けの縮小と軍事費削減を
打ち出した高橋是清は、2・26事件で殺されてしまいました。
その後、財政の拡張に歯止めがかからなくなります。

本書を読んで、改めて出口政策の難しさを感じました。



※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※山下公園の前でワッショイワッショイ。
 市内各地からお神輿が集まっていたようです。


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2014年07月13日

保険の国際規制の進展

 

9日に保険の国際規制に関する発表があったので、
こちらにリンクしておきます → 金融庁のHPへ

保険には国際的な資本規制がなかったのですが、
現在、保険監督者国際機構(IAIS)を中心にして、
「グローバルにシステム上重要な保険会社(G-SII)」
および「国際的に活動する保険グループ(IAIG)」向けの
資本基準の策定が急ピッチで進んでいます。

今回の市中協議文書の発表は、G-SIIに適用する
基礎的資本要件(BCR)に関するものです。

この市中協議文書に対する意見を踏まえたうえで、
IAISと金融安定理事会(FSB)で内容を固め(9-10月)、
11月のG20で承認、というタイトなスケジュール。

このため、BCRは「保険金額×係数」「時価×係数」
といった非常にシンプルな計算方法となっているうえ、
重要なリスクカテゴリー(特に生保)である「ALM」は
対象外となってしまいました。

係数の水準感は、まだよくわかりません。
7-8月の調査結果を見てから決めるとのことです。

他方、BCRと対比する自己資本のなかで、
Margin Over Current Estimateと呼ばれる部分
(≒保険負債の含み益)をコア資本とするかは
まだ議論中のようで、こちらも今後に注目です。
⇒修正:「含み益」は言いすぎで、うちリスクマージン部分ですね

IAISの調査によると、G-SIIのコア資本の38%を
この部分が占めるそうなので、小さい話ではありません。


なお、以前自分のブログでも書きましたが、
「G-SII」と「IAIG」の2系統の話が同時に進んでおり、
流れがわかりにくくなっています。

5月に出たニッセイ基礎研・荻原さんのレポート
参考になるかもしれません。

また、日本損害保険協会のHP(国際保険監督規制)も有益です。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真の左は現在の国分寺、右はかつての国分寺の跡地。
 奈良時代には七重塔が建っていたそうです。


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2014年07月06日

金融モニタリングレポート

 

今回も金融庁関連で恐縮です。
年度替わりでいろいろと公表されるものですから...

昨年9月に公表された金融モニタリング基本方針の成果をまとめた、
「金融モニタリングレポート」が公表されました。
金融庁HPへ

本レポートは、

・金融システムの現状
・業態別の金融モニタリングの概要
・テーマ別の水平的レビューの概要
・当局としての取組み

という構成で、全部で111ページあります。

業態別のところでは、「3メガバンク」では海外G-SIFIsとの対比
(海外G-SIFIsについてかなり調べたようですね)が目立ち、
「グローバルな金融システムのなかでのメガバンク」という
金融庁の意識が強く伝わってきます。

また、「地域銀行」では、モニタリングの一環として
大口融資先へのヒアリングなども行っており、
ビジネスモデルの中長期的な持続性を探っています。

これらに比べると、保険会社(特に生保)のモニタリングは
あまり踏み込んだ話がなく、ちょっと拍子抜けしました。
問題がなかったということでしょうか?

あえて言えば、損保の統合的リスク管理(ERM)の記述が、

 「経営戦略と一体となったリスク管理態勢については、
 総じて整備途上」

 「エマージングリスクについては、リスクの洗出しなどの
 取組みを開始した段階」

など、前回のブログで取り上げた「ORSAヒアリング」と違い
「損保は進んでいる」というトーンではなかったこと。

生保に比べれば進んでいるとしても、絶対評価としては
まだまだということなのでしょうか。
もう少し記述があるといいのですが、10行ちょっとでは...

テーマ別の水平的レビューで私の目を引いたのは、
「内部監査」「ITガバナンス」のところです。
メガバンクの項目と同様に、海外G-SIFIsとの対比を通じ、
不十分なところを浮き彫りにしようという手法が見られます
(ITガバナンスの「連邦型」「中央集権型」など)。

全般的に、今回は海外大手金融機関の経営管理の把握に
力を入れたことがうかがえますね。


ちなみに今後についてですが、3メガバンクは

 「来事務年度においても、引き続き・・・」

とある一方、保険会社では、

 「引き続き、契約者や経営に影響を与える顧客保護等管理態勢
 や経営管理態勢を中心にモニタリングを強化する必要がある」

 「保険会社は規模やビジネスモデルが多様であることから、
 業務特性やリスクプロファイル等を踏まえ、リスクの高い分野に
 重点を置いたモニタリングを徹底する必要がある」

これだけを見ると、大手以外の会社に対するモニタリングを
強めていくのではないかと思えます(あくまで私の想像です)。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※松坂屋の姿がなく、免税店(ラオックス)が賑わっており、
 銀座の中央通りはだいぶ様子が変わりましたね。


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2014年07月03日

ORSAヒアリング

 

金融庁が「統合的リスク管理態勢ヒアリング」の結果を
HPで公表しました(6月30日)。
金融庁HPへ

ヒアリングの中身もさることながら、今回はORSAレポート
(≒ERMに関する自己評価)の試作と提出を要請し、
そのレポートに基づいてヒアリングを実施したことが特徴です。

しかも、対象となった保険会社・保険持株会社25社を見ると、
大手保険グループだけではなく、朝日火災、オリックス生命
といった中堅生損保や、かんぽ生命も含まれています。

注目される「ORSAレポートの提出義務化」に関しては、
「検討を引き続き行って参りたい」としかありませんでしたが、

・監督当局として各保険会社のERM態勢を、業界横断的に
 横串を通して把握するツールとして有用であることが確認できた

・多くの会社から社内・グループ内におけるリスク文化の醸成・
 ERM態勢の浸透に有用なものであるとの声が多く聞かれた

といった前向きなコメント。


今回はレポートの試作にあたり、予め項目を示した模様です。
この記載要領をどこまで示すべきかは悩ましいところでしょう。

自己規律という点を重視するのであれば、大項目だけを示し、
不足分はヒアリングでカバーすればいいと思います。
ただ、レポートを検証する行政当局は大変です。

他方、記載要領を細かく規定すればするほど、当局としては
横串を通しやすくはなるものの、記載要領に当てはめる作業が
ORSAレポート作成の中心になってしまいがち。
それでは何のためのORSAだかわからなくなってしまいます。

個人的にはあまり細かくしないほうがいいと考えていますが、
いかがなものでしょうか。


さて、内容についての詳細はHPでご覧いただくとして、
私が興味深く感じたのは次の2点です。

まず、ORSAの定義として広義と狭義の2つを示していることです。

狭いほうは、

「自らが抱えるリスク量と、リスクに対する備えとなる資本を比較する
 ことにより、自らの健全性を評価するもの」

と、文字通り「リスクとソルベンシーの自己評価」を示すのに対し、

「保険会社・グループが現在及び将来のリスクと資本等を比較し、
 資本等の十分性の評価を自らが行うとともに、リスクテイク戦略等の
 妥当性を総合的に検証するプロセス」

「ORSAは統合的リスク管理(ERM)における中核的なプロセス」

など、金融庁は広い意味でのORSAの定義も示しており、
ORSAレポートはこちらのORSAについての記載を求めています。
すなわち、「リスクテイク戦略等」を含むレポートです。

もう一つは、次のくだりです。

「損害保険会社に加え生命保険会社においても、リスク選好に基づく
 ERM フレームワークの具体的な整備を実施ないしは検討を開始する
 社があり、ERM 態勢の改善・充実が進展していることが確認できた」

前回のヒアリング結果には、「損害保険会社が進んでいる」という
記載はなかったので、興味深く読みました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※今年も慶大で講師を務めました。質問は少なめでしたが、
 熱心な学生さんが多かったようで、うれしいですね。


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