植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2014年04月27日

「公的年金運用を考える」

 

先週の日経「経済教室」(4/24、25)をご覧になったでしょうか。

テーマは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産運用。
24日は伊藤隆敏先生による「債券減らし 分散投資急げ」、
25日は玉木伸介先生による「リスク投資 国民の理解を」でした。

どちらの論文も、昨年11月に公表された有識者会議の報告書
(伊藤先生はこの会議の座長ですね)を踏まえたものだったので、
この分野にはあまり明るくないものの、改めてこの報告書を読んでみました。
有識者会議報告書(PDF)へ

有識者会議の主な提言は次のようなものです。
 ・国内債券を中心とする現在のポートフォリオを見直す
 ・運用対象の多様化を図り、分散投資を進める
 ・ガバナンスやリスク管理の見直し

最初に「国内債券を中心とするポートフォリオの見直し」、
つまり、国内債券の比率を引き下げろということなのですが、
報告書にはその理由として、次のようにあります。

「デフレからの脱却を図り、適度なインフレ環境へと移行しつつある
 我が国経済の状況を踏まえれば、収益率を向上させ、金利リスクを
 抑制する観点から、見直しが必要」

これって、要は相場観ですよね。

私が最も気になるのは、有識者会議の報告書を見ても、
経済教室の両論文でも、公的年金の財政や負債特性について
あまり考慮されていないように思えることです。

例えば、経済教室の伊藤論文には、次のようにあります。

「毎年5%の利回りを確保すれば、元本を減らすことなく
 毎年6兆円の取り崩し要請に応えていけるが、利回り0.6%台の
 国債の大量保有に固執していれば、6兆円の取り崩しの継続で
 元本はどんどん減少していく」

今の年金財政の検証では積立金を取り崩さないどころか、
後述する「マクロ経済スライド」まで見込んでいるのですが...

それはそうとして、現役人口が減っていくため、保険料収入と
年金給付のバランスが悪化していくのはほぼ間違いありません。

しかし、その際の選択肢は「リスクをとった運用」だけなのでしょうか。

確かに資産ポートフォリオのリスクを高めれば、高いリターンが
期待できるものの、大きな損失が出る可能性も高まります。
リスクをとらず、保険料をさらに上げるという方法もあるでしょう。

選択肢を示さないということはく、初めから運用リスクの拡大
(というか債券から株式へのシフト)ありきに見えてしまうのですね。


先に触れたとおり、今の公的年金には「マクロ経済スライド」、
すなわち、給付削減の仕組みが採り入れられています。

例えば前回の財政検証結果をみると、100年間のシミュレーションを行い、
約20年間のマクロ経済スライドの実施により、財政均衡を図っています。
H21年の財政検証要旨(PDF)

つまり、制度としてはすでに給付削減を組み込んでいる中で、
財政バランスをどのようにしてとるべきかという話をすべきであって、
単に「国債を減らせ」「運用の専門家を置け」という議論ではないはず。


ちなみに、伊藤先生が挙げている「海外の先進的な年金基金」
の代表例が新聞掲載の「ノルウェー」「オランダ」等だとすると、
「ノルウェー政府年金基金グローバル」をネットで調べてみたところ、
これはノルウェーの石油・ガス収入を積み立てているものなのですね。
「オランダ公務員総合年金基金」は文字通り公務員のための年金です。

GPIFが運用する資金は基本的に国民からの保険料と税金ですし、
給付を受けるのも公務員ではなく一般の国民です。
資金の性格はかなり異なると思います。

なお、公的年金には定額部分と報酬比例部分があり、
負債特性が異なるはずですが、今回はスルーさせて下さい。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※お花がきれいな時期になりましたね。ハナミズキとチューリップです。
RINGの会 オープンセミナー

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2014年04月20日

今年もオープンセミナー

 

今年も国内最大規模の保険(流通)業界向けセミナー
「RINGの会オープンセミナー」の季節が近づいてきました。
6/14(土)に横浜で開催されます。
詳しくはこちら → RINGの会オープンセミナーのHPへ

私が関わるようになったのは2007年以降のことです。
セミナーはもう16回目にもなるのですね。

ちなみに毎年のテーマはご覧の通り(2007年以降)。

 第 9回(2007年) 代理店経営の近未来戦略 ―最新保険業界事情―

 第10回(2008年) これからの代理店経営を語る
             ・・・あなたの未来戦略に一石を投じる・・・

 第11回(2009年) 保険大再編!! 「顧客・代理店はどうなる」

 第12回(2010年) プロ代理店は死滅の道を辿るのか?

 第13回(2011年) 期待と課題(今私達に求められる事・出来る事)

 第14回(2012年) 代理店価値の再認識

 第15回(2013年) 主役交代 ~その最前線を知れば、変化の道筋が読める~

 第16回(2014年) 2024年、進化した保険代理店が業界を変える!
             ~RINGの会が分析する近未来の保険代理店像とは~

その時その時の保険流通を取り巻く外部環境を踏まえつつ、
代理店経営を考えていこうという内容になっています。

当日は朝から夜まで保険漬け。会場での情報交換を含め、
普段はなかなか得られない情報や気づきがあるはず。


特に今回は保険業法が改正され、保険流通の規制環境が
抜本的に変わるなかでの開催です。
ご参考 → 保険業法等の改正案(PDF)

そのような状況で、午前中のパネルには、金融庁時代の同僚で
この分野に非常に明るい増島弁護士が昨年に続き登場します。
さらに午後のパネルには、「イノベーション」というキーワードで
ライフネット生命保険社長の岩瀬大輔さんも登壇します。

今回はこの二人の話を聞くだけでも、セミナーに参加する価値が
あると思いますよ。
(RINGのHPではあまりアピールしていないようですが...)

それでは皆さん、6/14に横浜でお会いしましょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※神戸・北野の洋館です。2年半ぶりに行きました。

RINGの会 オープンセミナー

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2014年04月12日

標準利率の見直し

 

少し前になりますが、金融庁が1日に改正案を公表し、
5月1日まで意見募集をしています。
金融庁のHPへ

生保の保険料は保険会社がそれぞれ設定できます
(ただし、金融庁の認可が必要です)。
他方、将来の保険金等の支払いに備え、保険会社が
用意しておく「責任準備金」の計算基礎となる利率は
法令で決まっているので、保険会社はこの利率から
かけ離れた保険料を設定することはできません。

今回の見直しは、一時払終身など貯蓄性の高い商品には
平準払いとは異なる利率を適用しようというものです。

「10年国債利回りの3年平均と10年平均のいずれか低い方」
を参照し、年1回だけ見直すという現行の枠組みのままでは、
金利が上昇に転じても利率がなかなか反映しないので、

・超長期国債の流通量が増えた
・ALMの高度化が進んだ

などを背景に、貯蓄性の高い商品の利率決定方式を

「10年国債利回りと20年国債利回りの和半」
「過去3か月平均と過去12か月平均の低いほう」
「年4回判定」

といった仕組みに見直そうというものです。

確かに反映が現行よりも早くなるとはいえ、金利が上がるにつれ、
「安全率係数(=掛目)」が小さくなる点はそのままなので、
例えば10年国債や20年国債の利回りが4%水準だった場合、
一時払終身保険の標準利率は2.65%にとどまります。

しかも、安全率係数の対象レンジが見直されているため、
例えば5%水準では標準利率が2.9%と、さらに差が広がります。
高金利になるとALMが難しくなると考えているのでしょうか?

「10年国債利回りと20年国債利回りの和半」というのも不思議です。
対象は一時払終身保険ですよね。
いくら銀行窓販で高齢者が多いといっても、どうしてなんでしょう。
「超長期国債の流通量が増えた」「ALMの高度化が進んだ」のに。


なお、今回の見直し案について、s_iwkのブログ
s_iwkさんが詳細な解説とコメントを記しているのを見つけました。
4回にわたる大作ですので、勝手ながらご紹介させていただきます
(私も大変参考になりました)。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は阪堺電車です。初めて乗りました。

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2014年04月09日

教養としての「世界史」

 

旅行中にライフネット生命・出口治明さんの近著
「仕事に効く 教養としての『世界史』」を楽しく読みました。

本書は出口さんも書いているように「歴史書」ではなく、
歴史を学ぶことの大切さや楽しさを教えてくれる本です。

ペリーが日本に来た本当の目的を考えるところから始まり、
中国の文書行政、キリスト教と仏教の誕生、ローマ教会、
東西交易、遊牧民の活躍、アヘン戦争などが取り上げられ、
最後にまた日本に戻ってきます。

あくまで私の感想ですが、本書のメッセージは、
次の記述に凝縮されているように思いました。

「世界のこと、過去のこと、今日のことなど、いろいろなことを
 知れば、一つの地域や国の歴史に引っ張られずに、
 ものの見方や考え方が多面的になります」(P328)

タイトルにある「仕事に効く」とは、「歴史を知っていると、
コミュニケーションをとりやすい」という狭い意味だけではなく、
地理的、歴史的背景を知り、いろいろと考えていくうちに、
多面的かつ論理的に物事を考えることができるようになる、
ということではないでしょうか。


それにしても、「歴史が好きなアマチュアの一市民」(はじめに)
である出口さんの博覧強記ぶりには驚かされます。

私は山川の世界史だけではなく、大学でも西洋史学科というところで
歴史を学んだはずなのですが、ローマ教皇の名前など、
すっかり忘れていました^^





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2014年04月06日

大阪で「プチ発見」

 

週末に家族で大阪・神戸へ行ってきました。
二泊三日の家族旅行でも、それなりに発見があるものです。

妻が気に入ったのは法善寺横丁で食べた「おでん」。
関東でおでんと言うと、鍋に大根や竹輪、はんぺんなどを
入れて煮込む鍋料理のことを指しますよね。

大阪で食べた「おでん」はあの料理ではありません。
汁気が少なく、田楽味噌がたくさんついたものでした。
こちらがおでんのルーツなのだそうです。


たこ焼き屋も面白かったです。ホテルが心斎橋だったので、
近くのアメリカ村にたこ焼き屋が何店もありました。

たこ焼きがとろっとして美味しかったのもさることながら、
見ていると、若い女性が夜一人でたこ焼きを買いにくるのですね。
家族へのお土産なのか、遅い晩ご飯なのかわかりませんが、
たこ焼きが身近な存在なんだなあと、妙に関心してしまいました。


最後は阪急電車の話。

阪急は梅田がターミナル駅で、ここから京都方面、宝塚方面、
神戸方面に電車が向かいます。
ヨーロッパのターミナル駅(あるいは上野駅)を彷彿させます。

これら3方面の特急や急行はなんと同時に発車するのです。
噂には聞いていましたが、3つの列車が同じ方向に走る姿は
なかなか見られるものではありません。
しかも、しばらく並んで走るので、なんだかワクワクしました。


いずれも関西人にとっては当たり前のことかもしれませんが、
関東人の私たちには発見の連続でした^^


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※左の写真は地下鉄心斎橋駅です。
 NHKの朝ドラ「ごちそうさん」でこの駅の話がありましたね。

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