植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2013年12月30日

最近の読書から

 

早いもので今年も残すところあと2日。
今回は最近読んだ本の中から3冊ご紹介します。


「金融再編の深層 高橋温の証言」

1998年から2005年まで住友信託銀行(現三井住友信託銀行)の
社長を務めた高橋温さんが、日本長期信用銀行との合併交渉や
UFJ信託銀行の買収交渉など、過去20年間の金融危機・再編を
当事者として語った本です。

「自らが体験した事実をきちんと書き残し、経営者としての
 私の経験をぜひ、今後の教訓として生かしてほしいと考えた」

とあるように、本書は、長銀の合併問題やUFJ信託の争奪戦など、
高橋さんが大手信託銀行トップとして関わった事件についての
貴重なオーラルヒストリーです。

「なぜUFJは三井住友ではなく、三菱東京を選んだのか?」

という問いについても高橋氏の考察があり、興味深く読みました。




「医療保険はすぐやめなさい」

著名FPの内藤眞弓さんによる最新刊です。
タイトルや帯は刺激的(「やめた人から得をする!」とあります)
ですが、民間医療保険との付き合いかたについて
丁寧にわかりやすく書かれています。

特にいいなと思ったのは、がんの治療費の目安です。
がんになったら、実際に「いつ」「どれだけ」費用がかかるのか。
内藤さんはまずここから解説したうえで、保険に頼れる部分と
そうでない部分を示しています。

それにしても、がん保険は難しい。
死亡保険と違い、給付金が支払われる条件が様々なのですね。
例えば、2回目以降の診断給付金を受け取る条件には
4パターンもあるそうです。




「部下を持ったら必ず読む『任せ方』の教科書」

著者はライフネット生命のCEO、出口治明さんです。
私は本書がターゲットとしている読者層ではなさそうですが、
日本の会社、日本的経営ガバナンスについて考えるなかで、
たまたまこの本と出合いました。

・決定権を持つものが一人で決める
・異質な社員に権限を委譲し、任せる
・課長の決定に、部長は口を出してはいけない
・労働時間から「労働生産性」に焦点を変える  などなど

おそらく本書で出口さんが説く「あるべきマネジメント」の
裏返しが、日本の会社には多いのではないでしょうか。

もちろん、タイトルに「部下を持ったら必ず読む」とある通り、
本書には上司になったら何をすべきかを考えるヒントが満載です。




※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は年末でにぎわう築地場外市場です。

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| post at 00:42:46 | コメント(0)  | カテゴリー : 14. 書評 |

2013年12月22日

生保の資産・負債ギャップ

 

先日、2014年度の国債発行計画についての報道があり、
30年債の発行を増やすとありました。

これに関連して、先月のものではありますが、財務省のHPに
生保の資産・負債ギャップに関する資料を見つけました。
超長期国債の需要がまだあることを示すものです。
国の債務管理の在り方に関する懇談会(第26回)議事要旨
(資料4が「生命保険会社の投資動向について」です)

資料のなかに、「資産および負債の金利感応度」がありました(P2)。
第一、住友、明治安田が開示しているEVを基にした試算によると、
金利水準が50bp低下すると、資産が2.2兆円増えるものの、
負債は3.0兆円も増えてしまうことが示されています。

EVの開示では、前提条件を変更した場合の感応度が示されていて、
・修正純資産の変化≒資産の変化
・保有契約価値の変化≒負債の変化
としている模様です。

「金利が下がると生保経営は厳しい」と単に言われるよりも、
「資産は増えるけど、負債はもっと増えてしまう」と示されるほうが、
理解しやすいかもしれませんね。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は汐留のイルミネーションです。


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2013年12月15日

監督指針等の改正案

 

金融庁は先週、「保険会社向けの総合的な監督指針」と
「保険検査マニュアル」等の改正案を公表しました。
今事務年度の監督方針で予告のあったORSAの概要が
示されたことになります。
金融庁のHPへ

改正案はIAIS(保険監督者国際機構)が2011年に採択した
ICP16、すなわちERMと、リスクとソルベンシーの自己評価
(ORSA)の実施を受けたものです。
特に監督指針は全面的な見直しとなっています。

詳しい内容はHPをご覧いただければと思いますが、
よくわからないのは監督当局の関わりかたです。

ICPには「監督者はORSAのアウトプットを活用すべき」
とあります。

統合的なリスク管理態勢の整備は「特に、大規模かつ
複雑なリスクを抱える保険会社にとって重要」とあるものの、
ORSAそのものは全社が対象です。
米国ORSAのように一定規模の会社だけではありません。

ところが、指針案には「リスクとソルベンシーの自己評価を
定期的に実施し、取締役会に報告することが求められる」
とあるだけで、それを当局に提出するとは書いてありません。

指針案では、新たに「統合的リスク管理態勢ヒアリング」が
設けられています。
ですが、これまでのERMヒアリングは20社強が対象でした
(しかも、グループベースのヒアリングでした)。

もしかしたら、しばらくは任意のアンケートとして提出を求め、
義務化はしないということかもしれません。
ただ、これでは第三者に説明するのが難しそうです。
当局向けにはサマリー提出という手もあると思うのですが。

もっとも、全社のアウトプットを受け取ると規定した場合には、
受け取った内容を誰がどう確認し、どう対応するのかなど、
それはそれで大変だとは理解できます。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※せっかく青山に行ったのに、イチョウ並木はこんな感じでした。


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2013年12月10日

きんざいのコラム

 

今週の週刊金融財政事情の巻末コラムはなかなか辛口でした。
「生保は逆ザヤを生んだ経営を繰り返すな」というタイトルです。
金融界有識者が執筆しているとありますが、私ではありません^^

主なポイントを引用させてもらいます。

・かつて逆ザヤを生むに至った生命保険会社各社の経営体質は、
 まだ安心とはいえそうにない。

・(逆ザヤを生んだ)背景には、運用やリスク管理よりも保険の販売を
 優先する、生保経営の「量への偏重」があったが、この生保の体質は
 治っていないように思われる。

・たとえば、年金基金向けには、現下の短期金利がほぼゼロで
 長期国債の利回りでも0.6%程度の環境にあって、0.75%ないし
 1.0%といった利回りを保証して一般勘定の運用を引き受けるような、
 金融常識が欠如した営業行動を制御できていない。

・残念なことに、経営者の無能リスクをカバーする保険はないので、
 金融機関であることの自覚と常識をもってしっかり経営してもらいたい。

いかがでしょうか。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は丸の内のイルミネーションです。


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2013年12月07日

生保の資産構成

 

前回は生保上半期報告そのもののコメントをしなかったので、
日銀の異次元緩和を受けた資産運用の動きを見てみましょう。

結論から言うと、いわゆる「ポートフォリオ・リバランス」は
総じて見られないようです。

この上半期の生保資産構成(一般勘定)を確認すると、
株式ウエートが高まっているように見えますが、
残高を増やしたというよりは、時価上昇による影響が大半です。

外貨建資産を増やした会社はそこそこあったようです。
ただ、同時にヘッジポジションも増えています。

他方、公社債については、引き続き長期化を進めた会社と、
様子見だった会社に分かれたようです。
「その他有価証券区分」の公社債残高を減らす動きは、
この区分の残高が大きい会社で引き続き見られました。


なお、生保からの資金流出ですが、生保協会データによると、
保険金・年金・給付金と解約返戻金・その他返戻金の合計は
収入保険料を下回っています(43社合計)。

個別に見れば、過去に銀行を通じて変額年金や外貨建年金等を
積極販売した会社の解約返戻金が高水準で推移しています。
これをもって「保険から投信へ」とまで言えるかどうか。
こちらも引き続きウォッチしていきましょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真はどこかの紅葉の名所みたいですが、実は日比谷公園です。

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2013年12月02日

「逆ざや解消」報道に疑問

 

先週後半から大々的に風邪をひいてしまいまして、
ようやく回復しつつあります。
妻からは「長い!私なら1日で治すわよ!」とのお言葉。
日頃の不摂生がたたったのでしょうか。m(_ _)m

というわけで、少し遅れてしまいましたが、
先週の生保上半期報告(というか、その報道)について
コメントを少々。

日経をはじめ、「逆ざや解消」がキーワードとなり、
主要生保の利差合計が初めて順ざやとなったことが
注目されています。

「バブル期に販売した高利回りの保険が満期を迎えて減る
 などして、契約者に約束する平均利回りが年々下がってきた。
 加えて4-9月期は円安の影響で外債の利息収入がかさ上げされ、
 一気に逆ざやが解消した」(11/28の日経)

このブログで何度も苦言を呈していますが、特に今回はまずいです。
「逆ざや解消」がひとり歩きしてしまい、生保経営に対し、
「健全になったのだから、リスク資産へ投資しろ」という圧力が
高まるのではないかと心配です。


この「逆ざや解消」には何の意味もありません。

高利率の契約がだいぶ少なくなった印象を受けますが、
大手生保の個人分野の責任準備金に占める高利率契約
(=1995年度以前の契約)は、いまだに4割程度もあります。

生保の契約は非常に長いので、残念ながら高利率契約の負担は
なかなか小さくならないのです。

しかも、団体年金保険が見かけ上の平均予定利率を
押し下げていることも忘れてはなりません。
昨年度の責任準備金(一般勘定)に占める団体年金の割合は、
例えば日本生命が23%、明治安田生命が24%となっています。
団体年金の平均予定利率は1%程度です。

逆ざや額を計算する運用収益にも問題があります。

記事にある、「円安の影響で外債の利息収入がかさ上げされ、
一気に逆ざやが解消」って、意味がわからないですよね。

逆ざや額を計算する運用収益は「利息配当金収入」なので、
株価や為替の変動はほとんど影響がありません
(ただし、投信の運用損益の一部はここに入ります)。

しかし、外債の利息収入は為替変動で振れるので、
このような説明になったのでしょう。
間違いではありませんが、利息収入だけ円安で増えて、
元本は見ないなんて、おかしいですよね。

つまり、逆ざや額は生保の運用成果を反映したものでは
ないのですね。

「逆ざや額」はそのわかりやすさから広く使われてきましたが、
むしろ弊害のほうが大きくなっているように思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は地元・大倉山公園です。

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