植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2013年04月27日

生保の2013年度運用計画

 

生保の運用計画については13日のブログでも書きましたが、
「主要生保の2013年度運用計画が出そろった」ようなので、
13日とは別の視点から3点ほどコメントします。


1.発表している「運用計画」とはそもそも何なのか?

BloombergのHPには、大手生保4社の記事があります。
 日本生命
 第一生命
 住友生命
 明治安田生命

また、ロイターのHPには主要生保9社の計画が
一覧表で掲載されています。ロイターのHPへ

一覧表を見ると、国内株式や債券、外国株式や債券の残高を
どう動かす計画なのかを示しているようです。

ところが記事を見ると、
「増加資金の半分弱を外国債券の積み増しに充てる」とか、
「増加資金1兆円程度のうち、約7000億円を円金利資産に振り向ける」
といった記述もあって、頭が混乱します。

今回注目されていた「外債へのシフト」を知りたいのであれば、
増加資金に加え、ポートフォリオの変更についての情報も必要ですが、
ここで言う「運用計画」とは何を指すのでしょうね。


2.「運用計画」をHPで公表してほしい

それでは元の資料などを確認したいと思って探しても、
残念ながら各社のHPには何も掲載されていません。
Bloombergの記事を見ると「公表資料」があるようなのですが...

たまたま今回は生保の運用計画に注目が集まり、
報道が多かったものの、いつも掲載されるとは限りませんし、
今回を含め、不完全な情報として出ることも多いです
(特にデータに関する部分)。

同じような対応をしている「決算記者会見資料」
(こちらは上場会社のみHPに掲載しています)とともに、
貴重な情報ですので、記者クラブだけに発表するのではなく、
ぜひ一般への公表もお願いしたいです。


3.「外債シフト」と書く根拠は何か?

「生命保険会社が海外投資を本格的に増やす時期を探っている」
「外債の積み増し額は9社合計で1兆円規模となる見通し」
と書いた新聞がありました。

しかし、一覧表を見た限りでは総じて慎重な感じですし、
Bloombergの各社の記事を見ても、外債シフトが起きそうな
雰囲気は感じられません。

ちなみに、2012年度の実績はどうなっているかというと、
期首に比べ、12月末時点の外貨建資産の残高は、
なんと4社合計で3.7兆円も増えています。

このうち時価上昇による部分が1兆円以上ありそうですが、
それでも9ヶ月間で2兆円以上になります。

今年度の計画が現時点では「9社で1兆円規模」ならば、
昨年度の実績に比べるとかなり慎重な姿勢に見えますね。
だとすると、「本格的に増やす時期を探っている」の根拠は
別のところにあるのでしょう。それを知りたいです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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2013年04月23日

「数字で会社を読む」



週刊ダイヤモンドには掲題の会社分析レポートがあり、
今週号(4/27・5/4合併号)は「東京海上ホールディング」でした。
このなかで私のコメントが使われているのでご紹介します。

海外保険事業に関する記述のところで、

「自然災害や自動車事故など多種多様なリスクを引き受ける
 国内損保にとって、『地域や保険商品の分散を図れる点は強み』」

というものです(『 』の部分が私のコメント)。

少し補足しますと、次のようなコメントをしました。

メガ損保の国内損保事業は日本の地震、台風という、
世界でも有数の巨大災害リスクを2つも抱えているため、
グローバルに見ればポートフォリオが偏っています。

中小規模の国内損保であれば、日本の自然災害リスクを
再保険等でフルヘッジしてしまうことも可能でしょうけれど、
規模が大きいメガ損保の場合にはそうもいきません。

ということで、メガ損保が海外保険事業を拡大する背景には、
当然ながら国内損保市場の低迷もあるのですが、
偏ったポートフォリオを是正する効果があるのですね
(リスクが消えるわけではありません。念のため)。

同じことは国内生保事業を拡大する戦略にも言えます。
パンデミックと巨大地震・台風の発生は無関係なので、
こちらも分散効果が期待できそうです。

ただし、ポートフォリオの偏りを是正することができたとしても、
新たに拡大した事業のリスクについて理解が不十分であれば、
そちらで火傷することにもなりかねません。
改めてコメントするまでもありませんが...


※いつもの通り個人的なコメントということでお願いします。

※写真は米国から送られたハナミズキだそうです
 (正確には送られた原木より育成したものです)。


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2013年04月19日

金融システムレポート

 

17日に日本銀行が「金融システムレポート」を公表しています。
日銀のHPへ

今回のレポートは「基本的に2013年3月末までの情報」
による分析とあるので、先般の量的・質的金融緩和については
織り込まれていません。

「はじめに」を見ると、

「この政策は、長めの金利や資産価格などを通じる波及ルートに加え、
 市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる」

「この政策のもとで、金融システムにおける資金の流れや金融機関、
 投資家の行動にどのような変化が生じていくかを分析していく」

と述べられていますので、次回以降に期待しましょう。


今回のレポートでは、金融機関の経営課題として真っ先に、
「収益力の向上を図る必要がある」と指摘しています。
とりわけ地域金融機関は収益環境は厳しさを増しているようです。

その一方で、銀行・信用金庫の金利リスク量(=金利上昇を想定)
が総じて増加方向にあることも示されています。

すなわち、地域金融機関は低下する収益力を補うために
債券投資を増やし、残存期間を延ばしている姿が伺えます。

そこにきて、今回の量的・質的金融緩和です。

人口の減少や高齢化の進行に伴う資金需要の低迷に対し、
金融緩和によって状況が改善に向かうでしょうか?
他方、日銀の思惑通りにイールドカーブが潰れれば、
地域金融機関の債券投資に伴う収益は確実に低下します。

収益を維持したければ、投資のボリュームを増やすか、
もしくは残存期間を一段と延ばすか、となるのでしょう。
いずれにしても、金利リスク量をさらに増やすことになりますね。
うーん。大丈夫でしょうか。

あるいは、レポートで「ひとつの選択肢となりうる」としている
合併などを通じた経営効率の改善が加速するかもしれません。

もっともレポートでは、1991年度以降に合併した信用金庫のうち、
合併後に基礎的な収益力が改善したのは6割だったという
分析結果が示されています。これをどう見るか...


なお、このところ保険会社の分析が充実する傾向にあったので、
楽しみにしていたのですが、今回はかなり控えめだったようです。
こちらも次回以降のお楽しみといたしましょう。

それにしても、日銀の発表によると、5月から超長期債の買入額が
さらに増える可能性があるようです。日銀HPへ(PDF)
いよいよ生保と日銀で超長期債の奪い合い、でしょうか?


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※日比谷公園の松本楼でランチ。18日は20回目の結婚記念日でした。


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2013年04月13日

生保マネーの行方



日銀の量的・質的金融緩和から1週間。
円安、株高が進む一方、前々回のブログで心配したとおり、
債券市場では値動きが荒い展開が続いています。

他方、異次元緩和を受けた生保マネーの動向にも
注目が集まっているようです。

例えば10日の日経には、「生保マネー、円安後押し」
という大きめの記事が掲載されました。
生保が外債投資にシフトし、円安を後押しするというものです。

確かに日銀は、超長期ゾーンを含むイールドカーブを潰すことで、
投資家が債券から他の金融商品にシフトすることを
期待している節があります。

また、「ソルベンシーマージン比率が厳しくなったから、
生保は株式投資を積極化できない(=だから外債に向かう)」
という見方も相変わらずあるようです。

しかし、これらには欠けている視点があるように思います。

量的・質的金融緩和でイールドカーブが潰れる、
つまり、長期金利の低下は、生保にどんな影響があるでしょうか。

超長期の負債を抱え、資産と負債のミスマッチ状態にある
生保にとって、長期金利が下がると逆ざや問題の悪化、
すなわち、経営体力の低下につながるのですね。
ここがポイントです。

経営体力が低下するなかで、わざわざ新たなリスクを取って
株式や外国債券に投資するのが合理的な行動でしょうか。
負債の金利リスク軽減のために保有する超長期債を売却し、
さらにリスクを高める行動をとるでしょうか。
これでは単なる博打になってしまします。

体力が低下したら、支払余力を充実させる、あるいは、
保有するリスクを削減するのが自然です。
どうもこの点が理解されていないように感じます。

生保は機関投資家である以前に、超長期の保障を
まっとうするのが使命だということを忘れてはなりません。

「規制が厳しくなったから株式投資ができない」
というのもおかしな話です。
日本のソルベンシー規制はそれほど厳しいものではありません。

リスクに対して体力があるのであれば、株式を買おうが、
外貨建資産を買おうが、経営判断だと思います。
体力面で制約があると判断するのであれば、為替リスクをヘッジし、
海外の信用リスクをとる戦略もあるでしょう。

制約となるのはソルベンシー規制ではなく、
あくまでリスクと経営体力の関係です。

いずれにしても、目先の期待リターンだけではなく、
リスクベースで物事を考える姿勢がもっと浸透してほしいものですね。


※いつもの通り、個人的なコメントということでお願いします

※再びRINGセミナーのご案内です。今ならまだ席に余裕があるようです↓


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2013年04月09日

業界紙に登場

 

いまや唯一の保険日刊紙となった保険毎日新聞と、
保険代理店向けメールマガジン「inswatch」に登場しました。
ほぼ同時になったのは、たまたまです。

保険毎日新聞のほうはインタビュー記事。
なんと、4/9(火)、10(水)の上下に分かれています。
上では金融庁時代の話とソルベンシー規制について、
下では保険会社ERMの現状について話しました。

2月にTRMAでお話しした内容をまとめたような感じですが、

 「業務担当が細かく分かれているのが新鮮だった(中略)
  各業務の担当者の把握に時間がかかった」

 「短期間で担当者が代わってしまうのにも驚いた(中略)
  担当者がほとんど総入れ替えということもあった」

なんてことも語ってしまいました。
機会があればご覧下さい。
保険毎日新聞社HPへ


もう一つの inswatch はコラムの執筆です。

金融庁に移る直前までの約9年間、2カ月おきに書いていたものを、
この4月から復活しました。

「保険アナリストの視点」というタイトルなのですが、
今回は復活第一回ということで、やはり保険行政の話にしました。
次回は6月上旬の予定です。

こちらも機会がありましたらどうぞ。
inswatchのHPへ


※写真は備瀬のフクギ並木です。


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2013年04月06日

債券市場はどうなる?

 

日銀の量的・質的金融緩和により、債券市場が混乱模様です。
5日の市場では、10年国債利回りが0.315%まで下がった後、
午後になると一転して0.62%まで急騰しました。

相場のことは相場に聞けと言われるとおり、
今後の展開はだれにもわかりません。

ただ、日銀は「イールドカーブ全体の低下を促す」としており、
具体的な金融緩和策を打ち出しているわけです。

 消費者物価上昇率「2%」を「2年程度」で実現するため、
 長期国債・ETFの保有額を「2年間で2倍」に拡大し、
 長期国債買い入れの平均残存期間を「2倍以上」にする...
 日銀の公表文(PDF)

「日銀の金融緩和が財政赤字の穴埋めだと見なされれば、
 金利上昇のリスクが顕在化する」(5日の日経)

という声は根強いものの、物価2%というハードルが高いなかで、
日銀がそう簡単に長期金利の大幅な上昇を許容するはずはなく、
場合によっては米FRBのようなツイストオペ(短期売り・長期買い)
なども駆使してイールドカーブを抑えにかかるだろうと思います。

もし、金利上昇に賭けて(?)資産・負債をミスマッチ
(負債よりも資産のポジションを短く)していた場合、
これはしばらく厳しいかもしれませんね。
反対に、資産の長期化を進めてきた会社にとっては、
リスクヘッジが功を奏したということになります。

くれぐれも債券の含み益だけで生保を評価しないようにしましょう
(特にメディアの皆さん!)。


それにしても、超長期債の買入額には驚きました。
生損保が主な買い手となってきた超長期国債市場において、
日銀は毎月0.8兆円、年間だと9.6兆円もの国債を購入するとか。

長期国債の平均残存期間を2倍以上にするには
超長期国債の買入額を増やすのは自然といえば自然なのですが、
そんなに買えるものなのでしょうか。

今年度の10年超の国債発行予定額は22.8兆円です。
これに対し、従来は年1.2兆円買っていた主体が、
いきなり年9.6兆円を買い入れるというのです。

もちろん、発行市場だけではなく、流通市場も見るべきですが、
ALM目的で保有する生損保が大量に売却するとは考えにくく、
流通市場を考慮しても、「池のなかの鯨」状態でしょう。

市場流動性の低下が価格(利回り)にどう影響を与えるか、
いろいろと心配になります。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は大人気の沖縄美ら海水族館です。


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2013年04月02日

きんざいの誌上座談会

 

今週の週刊金融財政事情はノンバンク特集ですが、
よく見ると(笑)、保険監督規制とERM経営に関する
誌上座談会が掲載されています。

ボストン コンサルティングの佐々木靖さん、
フィッチ・レーティングスの森永輝樹さん、
そして私の3人によるものです。

リードには、「この座談会は、2012年11月14日に開催された
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン証券主催の保険フォーラム
におけるディスカッションを再構成したもの」とあります。

とはいえ、11月のパネルディスカッションを加工したというよりは、
後日3人で座談会(ディスカッションの「二次会」?)を行い、
主にこちらを掲載したというのが真相です。


週刊金融財政事情の主な読者は金融関係者(特に銀行)
だと思いますので、銀行を意識したコメントをしたつもりです。
でも、もっと銀行の話をしてもよかったかもしれません。

保険業界ではERM経営を進めようとする会社が増えています。
でも、銀行業界ではERMという言葉をほとんど聞きません。
どうしてなのでしょうか。

座談会では私だけでなく、お二人(たまたま同じ銀行出身ですね)が、
「ERMは保険会社の経営そのもの」
「経営陣が理解し、経営に直結させているかが評価ポイント」
とおっしゃっているのも興味深いですね。

ということで、機会があればご覧下さい。


※写真は那覇の公設市場と壷屋の風景です。


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2013年04月01日

沖縄の旅2013

 

春休みに家族で沖縄に行ってきました。

うちの子どもたちも大きくなったので、
今回はビーチリゾートの沖縄だけではなく、
那覇の市場や首里城、南部戦跡など
リアルな沖縄に触れることにしました。

現在の首里城は1992年に再建されたものです。
首里城の地下に陸軍総司令部が置かれていたため、
元の建物は沖縄戦で破壊されてしまいました。

南部戦跡のひめゆり平和祈念資料館では、
アニメ「ひめゆり」の上映がありました。
学徒の半数以上が沖縄戦で亡くなったそうです。

戦後も沖縄は苦難の道を歩みます。
本土から切り離され、米軍施政下に置かれました。
1972年に復帰してからも米軍基地が集中し、
滞在中も軍用機が頻繁に見られました。

沖縄にとって、戦争の記憶は過去のものではなく、
現在に続くものなのですね。
「主権回復の日」政府式典への抗議もわかります。


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