植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2012年07月28日

モラルハザード

 

韓国保険業界のかたから興味深い話を聞きました。

2000年前後に日本で保険会社が経営破綻した際、
責任準備金の削減や予定利率の引き下げ等を通じ、
契約者は何らかの負担を強いられました。

他方、韓国でも1997年末からの金融危機を受けて、
1999年に当時、資産規模で第3位だった大韓生命が
経営破綻したのをはじめ、2000年前後に多くの生保が
「構造調整」(≒破綻処理)を余儀なくされました。
ただし、個人の保険契約は全額保護されました。

日本でも1996年から2005年までペイオフが凍結され、
銀行預金が削減されるようになったのは2005年からです。
韓国でも金融危機の際、ペイオフが凍結されています。
日本と違うのは、預金保険が銀行だけではなく、
保険会社のセーフティーネットも担っているので、
ともに全額保護されたという経緯があります。

ところが、破綻会社の契約者を全額保護した副作用が
今になって出ていると言うのですね。それはモラルハザードです。

「保険会社が破綻しても最後は政府が救ってくれる」
誰もがそう考えているので、経営の規律が働きにくく、
価格競争や販売手数料競争が激しくなりがちだとか。
契約者も、経営内容で保険会社を選んだりしないようです。

確かに、韓国では保険金詐欺が社会問題化するなど、
日本の市場とはやや異なる面がありそうですが、
なるほどなあと思いました。
韓国に於ける保険詐欺に対する取り組みと課題(PDFファイル)

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 21:54:32 | コメント(0)  | カテゴリー : 01. 保険経営全般 |

2012年07月25日

房総の小江戸

 

平日ですが、ちょっと一息。

先の3連休に訪れた大多喜は、徳川四天王の一人、
本田忠勝が整備した城下町です。

1590年に北条氏が滅亡し、徳川家康が江戸に入った際、
警戒していた安房の里見氏の勢力を抑えるため、
重臣の本田忠勝を大多喜に配置したそうです。

当時の石高は10万石でしたが、政権が安定するにつれ、
城主の石高が減り、17世紀半ば以降は2万石で推移しています。

丘の上にある城から見ると、夷隅(いすみ)川が大きく蛇行し、
外堀のようになっていて、その内側に町が広がっています。
城下の町を歩くと歴史的な建物があちこちに残っており、
確かに「房総の小江戸」といった雰囲気を感じます。

豊乃鶴酒造(写真左)という蔵元があったり、
湯葉を売っていたりしたので、水のいい土地かと思い、
「商い資料館」という古い商家を改装した施設で
係の女性に聞いた(実際には話しかけられた)ところ、

「大多喜は井戸を掘ると茶色い水が出るんですよ」

とのこと。意外な返事でしたが、実はこれ、天然ガスなのです。

大多喜は「天然ガス発祥の地」で、明治時代に井戸を掘っていて
偶然見つかったそうです。
タバコの吸殻を落としたら燃え出したので、びっくりしたとか。
1931年には日本初の天然ガス事業会社も設立されています。

「少し前に爆発事故があって、大変な騒ぎになったんですよ。
 勤務中の警官がトイレでライターに火をつけたらドカーン。
 『何となくガスの臭いがした』と言っていたらしいのですが、
 だったら普通そこで火はつけませんよねぇ」

なんて話も飛び出しました。

調べてみると、確かにそのような事故がありました。
2010年3月5日の深夜、交番内の男子トイレで爆発があり、
警察官が顔と手に軽いやけどを負ったそうです。
地中の天然ガスが、排水管を伝ってトイレ内に充満したのではと
みられています。

ちなみに大多喜の天然ガスは無臭のようですが、
「何となくガスの臭いがした」のかどうかは不明です^^

「房総の小江戸」でガス爆発の話を聞くとは思いませんでした。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 00:29:19 | コメント(0)  | カテゴリー : 16. その他 |

2012年07月21日

社外取締役の義務化見送り

 

法制審議会の部会で会社法改正の要綱案が示され、
コーポレート・ガバナンスの向上策として検討されていた
社外取締役の選任の義務付けが見送られました
(18日)。

昨年12月の中間試案では、設置を義務付けるものでした
(A案は会社法の監査役会設置会社、B案は金商法の
 有価証券報告書の提出会社に義務付け)。

しかし、一転して今回の要綱案となった背景には、

「経営の適正な監督を行うことができるか否かは、
 社外取締役であるといった形式的な属性ではなく、
 個々人の資質や倫理観といった実質により決まる。

 また、監督を行うにあたっては、専門的な経営判断の妥当性をも
 見極める必要があるが、社外取締役であれば常にそうした能力を
 備えているとは限らない。(中略)

 そのため、社外取締役は、各社が適正なガバナンスを確保する上で
 有効な仕組みについて創意工夫を凝らす中で、それを有用であると
 判断した場合に、自主的に選任すべきものである」
 (経団連HPより引用)

といった経済界からの反対がありました。


他方、日本証券アナリスト協会のアンケート調査
(1月の勉強会で実施)によると、
回答者の69.7%が選任義務付けに賛成しており、

「特に企業統治の在り方については、内外から強く求められている
 コーポレート・ガバナンスの向上を図るため、中間試案で示された
 方向性に添って早急に議論を深めていただきたい」

というコメントを公表しています(1/31)。

日本証券アナリスト協会のメンバーは大半が日本人ですが、
それでもこのような結果が出ています。
株式市場で6、7割の売買代金を占める外国人投資家の目には、
今回の動きはどのように映っているのでしょうか。

法制審議会では社外取締役に関する実証研究も踏まえて
中間試案に義務化を盛り込んでいるようなのですが...
社外取締役に関する実証研究(PDF)

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※右の写真は大多喜にあった現役の旅館です。
 一度泊まってみたいですね。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 16:06:19 | コメント(0)  | カテゴリー : 05. 金融・経済全般 |

2012年07月16日

千葉の市場めぐり

 

今回は「市場」と言っても金融関連ではありません。

連休中、早朝に千葉方面に行く用があり、
夕方には東京駅で待ち合わせ、という条件のもと、
この間のフリータイムを使って千葉の勝浦と大多喜に
行ってきました。

勝浦は「日本三大朝市」の町です
(あと2つはどこだかご存じですか?)。
400年以上の歴史があるとか。

漁港なので海産物が多いと思っていたところ、
意外にも魚関係はそれほど多くはなくて、
どちらかと言えば野菜が中心のマーケットでした(写真左)。

今の季節だと、トマト、なす、ししとう、じゃがいも、夏大根...
まあ、地元の無人スタンドに並んでいる野菜たちと変わらない
(千葉と横浜は同じ首都圏ですからね^^)のですが、
地元客と思われる皆さんが、野菜をたくさん買い込んでいました。

巨大きゅうりを売っているおばちゃんがいて、
「これ、ずいぶん立派ですね!」と話しかけたら、
「忙しくて収穫するのが遅れたら、育っちゃったのよ。
 やわらかくて美味しいのよ」
とのこと。本当でしょうか?

連休中だったので観光客も結構いました
(知人に偶然出会ってびっくりしました)が、
ローカル色の強いマーケットという雰囲気でしたね。


勝浦を後にして、今度はローカル線(いすみ鉄道)で大多喜へ。
ここでは毎月5と10のつく日に朝市が開かれています。
野菜中心のこじんまりした市で、勝浦よりも
さらにローカル色が強い雰囲気でした(写真右)。

ただ、すでに11時だったので、会場の夷隅神社に行くと、
大半の店が片付けに入っていました。

「もう終わりなんですね」とおばあちゃんに声をかけると、
「(片づけながら)いやいや、まだやってるよ。
 トマトなんかどう? ばら売りもするよ。塩もつけるよ」

気がついたときには洗ったトマト(ばあちゃんが洗ってくれた)を
丸かじりする私がいたのでした。
足元には、ばあちゃんが出してくれた塩が新聞紙にのっています。
ばあちゃんと雑談しながら食べるトマトは実に美味しかったです。

大多喜やいすみ鉄道については、別の機会にとっておきましょう。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 16:58:19 | コメント(0)  | カテゴリー : 16. その他 |

2012年07月14日

超長期債市場の変化

 

超長期の負債を抱える生保のALMに関し、時々耳にするのが、
「日本では超長期債市場が十分ではない」というものです。

確かにそうかもしれませんが、10年前に比べると、
市場がかなり変化しているのをご存じでしょうか。

10年前(2002年度)の国債発行額(当初)は、
10年債が21.6兆円なのに対し、20年債は4.2兆円、
30年債は0.6兆円でした。
40年債の発行は2007年度からです。

2012年度の国債発行計画(当初)を見ると、
10年債が27.6兆円なのに対し、20年債は14.4兆円、
30年債は5.6兆円、40年債は1.6兆円となっています。

発行額が増えていることもありますが、
超長期債の発行はこの10年間で相当増えています。

40年債は年4回の発行で、かつ、1回あたり4000億円なので、
市場としてはまだまだ発展途上のように思いますが、
30年債は年8回発行、1回あたり7000億円ということで、
20年債には及ばないものの、徐々に育ってきているようです
(加えて「流動性供給入札」というものもあります)。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※ヨーロッパに行くと自転車の活躍が目につきますね。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 22:29:44 | コメント(0)  | カテゴリー : 05. 金融・経済全般 |

2012年07月07日

保険と助け合い

 

前々回ご紹介した「物語で読み解く リスクと保険入門」のなかに、
「『一人は万人のために、万人は一人のために』理念募集の限界」
という記述があります。

私も「仕組みとしての相互扶助」と「相互扶助の理念」は別の話
と思っていましたので、これを読んで思わずうなずいてしまいました。

本書では次のように整理しています。

「保険の仕組みが社会的に有用であるのは、相互救済の理念を
 実現するための手段を提供しているからではなく、
 保険という仕組みをとおして社会的に有用な機能を発揮しているため」

「保険が存在した場合には、社会全体のリスクを軽減できる。
 まさにこのことこそがビジネスのなかで保険が存在する根拠である」

いかがでしょうか。

万人が支払った保険料が一人のために使われるのは確かです。
でも、それはあくまで保険という仕組みの話であって、
保険に加入するのは自分のため、すなわち、
「将来の経済的な不確実性を減らすために加入する」
というのが原則でしょう。

相互扶助を目的とした組織を否定するものではありませんが、
保険事業は助け合いのために営まれているわけではないと思うのです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 21:24:03 | コメント(0)  | カテゴリー : 01. 保険経営全般 |
植村信保ブログ プロフィール ライブラリー お問い合わせ