植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2012年06月30日

健全性規制の動向

 

ニッセイ基礎研究所の荻原邦男さんが
「生保会社の健全性規制の動向(1)」というレポートを出しています。
(1)とあるので、何回か続くのかもしれません。
ニッセイ基礎研HPへ

第一回目のテーマは、
「日米欧の健全性規制で現在何が問題となっており、
 それはどのような歴史的経緯によるのか」
でした。

詳しくはレポートに譲りますが、EUでは
・ソルベンシーⅡが円滑なスタートを切れるかどうか
・ソルベンシーⅡの同等性評価による他国への影響
に注目とのこと。

他方、米国では「ORSA(Own Risk and Solvency Assessment)」
というリスクとソルベンシーの自己評価制度の導入について
紹介しています。

荻原さんが米国ORSAに注目する理由は、次の通りです。

・米国の監督規制は基本的にルール・ベース(細則主義)色が強い。
 ORSAはプリンシプル・ベース(原則主義)の規制であり、
 どのように運営がなされるのか。

・リスクの自己評価は、つまるところソルベンシーⅡにおける
 経済価値的評価につながるもの。
 「従前路線の踏襲」とどのように併存していくのか。

・どの国にも共通するが、ORSAの実施は民間だけでなく、
 監督サイドに相当な資源が必要になるものと考えられ、
 米国がどのように対応するかも焦点のひとつ。

さすが荻原さん。鋭いコメントだと思います。


※いつもの通り個人的なコメントということでお願いします。

※日本の郵便制度は英国を参考にしたそうですが、
 ポストの色まで参考にしたのかどうかは不明です。
 最初(1871年)の日本のポストは黒かったようですし、
 英国で赤いポストが登場したのは1874年とのこと。


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| post at 22:02:55 | コメント(1)  | カテゴリー : 07. 規制・会計基準 |

2012年06月24日

ロイズのネッシー保険

 

ロイズについて調べ物をしていたら、米山高生先生の
著書「物語で読み解く リスクと保険入門」のなかに、
ネス湖の怪獣ネッシーを捕獲した際の懸賞金の補償を
ロイズが引き受けたという話が載っていました
(ちなみにそれを調べていたわけではありません^^)。

米山先生はこの件について、
・保険集団による危険の分散ができないのに
 ロイズはなぜリスクを引き受けることができたのか?
・このようなリスクの引き受けを保険契約と呼べるか?
という疑問を持ったそうです。

「1つめの疑問はロイズの資本力と再保険ネットワークで
 解決できるとして、ネッシー保険のような保険集団を
 構成しない保険を保険契約と考えるのは妥当なのか」

米山先生は2つめの疑問への暫定意見として、
「保険会社が保険契約の様式でリスク移転の契約を行えば、
 そのリスクをどのように手当てしたとしても保険契約である
 と考えるのが自然」
と述べられていますが、皆さんはいかがでしょうか。


リスクマネジメントという観点からすると、
私の関心はやはり1つめの疑問にあります。

ロイズは「スペシャリティ」と呼ばれる企業向けの
特殊な保険を引き受けることが強みの一つとなっています。
ある程度はモデル等で管理できる部分もあるとはいえ、
基本的にはハイリスク・ハイリターン型のビジネスです。

この本によると、ロイズはギャンブル性の高い契約をしていた
一部のアンダーライターと決別するなど、市場としての規律を
保つための継続的な努力が行われてきたとのこと。

それでも個人が無限責任を負う長年の仕組みは
さすがに困難となり(1990年代初めの「ロイズ危機」)、
現在はほとんどの出資者が有限責任となっています。

ロイズ市場の運営も各シンジケート任せというわけではなく、
コーポレーション・オブ・ロイズがシンジケートを管理し、
リスクを分析しているようです(公表資料を参照)。

ただ、このビジネスの特性を考えると、最後は各シンジケートの
アンダーライターによるところが大きいのだとは思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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| post at 19:15:30 | コメント(3)  | カテゴリー : 06. リスク管理関連 |

2012年06月17日

今でも建設ラッシュ

 

2008年の金融危機で英国の金融機関は大きな打撃を受け、
ロンドンの金融街シティーでは大リストラが実施されました。
シティーで活躍する金融機関は英国勢だけではないので、
欧州債務危機の影響も無視できません。

例えばBloombergの記事をみると、英国の金融サービス業界では
昨年だけで約5.8万人の人員削減があった(=世界最多とのこと)とか、
スクエアマイル(=シティー)の雇用が8.5%減少したとか出ています。

しかし、金融街を歩くと、意外にもクレーンがあちこちで見られ、
建設ラッシュが続いているような印象でした。

一つには、オフィスから高級マンションへの改築があるようです。
シティーのオフィス需要は低迷しており、貸すにも売るにも
このままではどうしようもないということなのでしょう。
加えて税金対策という面もあるとか。

ただ、もう一つは、好況時の開発計画を止められない、
ということかもしれません。1990年代後半の東京がそうだったように。

それにしても、ロンドンを歩くと新しいビルが目につきますね。


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2012年06月12日

ワークショップの「作法」

 

海外でワークショップなどに参加すると、
報告者が率先して説明中に質問を受け付け、
実際に参加者から多くの質問が出ます。
今回のスイスでの会合もそうでした。

日本では、報告者の話をすべて聞いてから、
最後にまとめて質疑応答を受け付けるというのが
一般的なワークショップや研究会の「作法」だと思います。

この「作法」の悪いところは、議論が深まりにくいことでしょう。
単なる発表会になってしまいがちです。

それでは海外の「作法」が優れているのかといえば、
これもケースバイケースだと思います。

例えば発表内容について一定の知識があり、
発表の全体像を踏まえたうえでの質問があれば、
質疑応答を通じて議論が深まるかもしれません。

ただ、これまでの経験からすると、
途中で「どうしてそれを今聞くの?」という質問が入り、
その結果、時間が足りなくなり、最後は駆け足で終わる、
というパターンも結構多いような気がします。

最後に質問しようとのんびり構えていると、
下手をすると時間切れです。それでは困るので、
仕方なく質疑応答に参戦することになりますが、
このタイミングが結構難しいんですよね。

こうなってくると、議論が深まるというよりは、
むしろ議論が拡散してしまうかもしれません。
表面的に「活発な質疑応答が交わされた」というだけでは、
そのワークショップは成功したとは言えないでしょう。

ということで、どこで質疑応答をするかが本質ではなく、
議論を深めるために報告者がどのような工夫をするか、
なのでしょうね。


※7年ぶりのロンドンです。


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2012年06月10日

スイスの多言語文化

 

週末にムルテンという小さな町を訪れました(写真)。
ベルンから電車で1時間弱のところです。
たまたま月1回のフリーマーケット(?)をやっていて、
多くの人で賑わっていました。

このムルテンは中世の姿が残っているというだけでなく、
ちょうどドイツ語圏とフランス語圏の境目に位置しており、
町の名前がムルテン(独)/モラ(仏)と二つあります。
住民はどちらの言葉も不自由なく使えるのでしょうか?
どんな生活をしているのか気になりますね。

スイスが多言語文化の国ということは昨年も紹介しました。
「スイスの存在感」
ドイツ語が約6割と最大で、フランス語が2割、
イタリア語とロマンシュ語はさらに少数派のようです。

ところが近年、ドイツ語圏ではフランス語などの国語より、
英語を優先して教える傾向が強まっているとか。
確かに仕事の世界では英語が共通語となっているので、
そうなってしまうのも理解できる話です。
ただ、フランス語圏など少数派には面白くないでしょうね。

スイスという国は自治権をもつカントンの集合体として
歴史的に形成されてきました。
ドイツ語を使うカントンやフランス語を使うカントンがあり、
カントンどうしがおたがいを尊重してやってきたため、
今の多言語状況があるようです。

言葉の問題でこじれると、カントンどうしの結びつきが
弱まってしまうおそれもあるのでしょうね。
一介の旅行者の感想にすぎませんが。


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2012年06月09日

再びベルンへ

 

1年ぶりにベルンにやってきました。
世界遺産の町並みは相変わらず美しいです。

欧州ソブリン危機が深刻化しているとはいえ、
ちょっと町を歩いただけでは全くわかりません。
そりゃそうですよね。

それにしても、ホテルでも町なかでも、
中国人と思われる集団が目立ちますね。年々そう感じます。
他方、日本人とはまだ出会えておらず、さびしい限りです。

今回初めてスイスがワインの生産地ということを知りました。
生産量が少ないので、ほとんど国内で消費してしまうとか。
さっそく赤ワインを調達し、部屋で味わいました。

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2012年06月03日

歴史的低金利

 

ドイツ・米国の長期金利が過去最低水準を更新しています。

 独10年債利回り=1.17%、30年債利回り=1.67%
 米10年債利回り=1.45% 30年債利回り=2.52%

ドイツの30年債利回りはなんと日本(1.78%)を下回っているのですね
(いずれもBloombergより。6/1時点)。

日本では歴史的低金利がもう10年以上続いていますが、
ドイツや米国では少し前まで長期金利が3%以上ありました。
保険アナリストとしては欧米保険会社の経営への影響が
気になるところです。

かつての日本の生保とは違い、一般に欧米の保険会社では
ALMを意識した資産運用を行っていると聞きます。

とはいえ、AXAやAllianzのEV(エンベディッド・バリュー)をみると、
金利感応度はそれなりに大きいようです。

例えばAXAでは、金利水準が1%下がると、生保のEEVが
34億ユーロ減少します。これは生保EEV381億ユーロの約9%です
(2011年末時点)。

Allianzでは影響がもっと大きく、金利1%の低下によって
MCEVは73億ユーロ減となり、MCEVは35%も減ってしまいます
(同)。

両グループはリスク管理態勢に定評があり、高格付を維持しています。
他の保険会社はどうなのでしょうか。

米国の変額年金も気になりますね。

米国では最低引出保証(GMWB)のついた変額年金が人気のようで、
終身保証も多いとか。
保証期間が長くなれば、金利による影響も大きくなるでしょう。

公表されている「Milliman Hedge Cost Index」によると、
終身保証のGMWBのヘッジコストは、すでに昨年後半以降、
リーマンショック後の2008年末の水準に匹敵しています。
金利要因による上昇が大きい模様ですが、詳細はよくわかりません。
MillimanのHPへ

材料不足でまだ何とも言えませんが、資産価格の下落だけではなく、
歴史的低金利による影響も無視できないかもしれません。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※昨日(2日)は横浜の開港祭でした。


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