植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年03月31日

加入率と付帯率

 

地震保険に関する記事や資料を見ていると、
「加入率は23%」「付帯率は5割近く」というように
2種類のデータがあることに気がつきます。

「付帯率」とは、ある年度に契約された火災保険
(住宅物件)のうち、地震保険が付帯されている割合です。

2009年度のデータをみると、全国平均は46.5%と
新規に火災保険に加入した人の半分は
地震保険にも入っていることがわかります。

宮城県の付帯率は66.9%と高く、岩手県は42.2%、
福島県は39.0%です。

付帯率が6割を超えているのは宮城県のほか、
岐阜県、愛知県、徳島県、高知県、宮崎県、鹿児島県です。


他方、一般に「加入率」と言うときは、地震保険の契約件数を
住民基本台帳に基づく世帯数で割った数、つまり、
全世帯のうち地震保険に加入している世帯の割合のことです。

阪神大震災のあった1994年度の加入率(全国平均)は9.0%。
これが2009年度には23.0%まで高まりました。
宮城県は32.5%、岩手県は12.3%、福島県は14.1%です。

加入率の高い県は宮城のほか、愛知(34.5%)、東京(30.0%)、
神奈川(28.3%)となっています。

付帯率に比べて加入率が低いのは、
地震保険は火災保険とセットで加入することになっている
(火災保険の加入率は2002年時点で53%)ほか、
火災保険の加入段階では地震保険を付帯しても、
保険料負担などから更新しない人も多いからでしょうか。


もっとも、現行の地震保険制度には、

①民間の責任限度額が危険準備金残高を上回っている
 (2009年度末で2300億円)

②大震災発生で準備金が枯渇すると、次の大震災への備えがない
 (ただし、政府による資金あっせんや融通が可能)

といった制度上の問題点があります。

毎年の保険料等からの準備金が積み上がるまでは、
責任限度額に対して備えが十分でない状態が続いてしまうのです。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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2011年03月26日

プロ野球の開幕問題



迷走を続けていたプロ野球の開幕問題は、
ようやく4月12日のセ・パ同時開幕で決着しました。

落ち着くべきところに落ち着いたという感じですが、
またしてもプロ野球のガバナンスの弱さが露呈してしまいました。


日本のプロ野球は社団法人日本野球機構(NPB。文部省が所管)が
セントラルリーグとパシフィックリーグを統括しています。

機構の会長は日本プロフェッショナル野球組織のコミッショナーです。
コミッショナーは正当な理由なく任期中に解任されず、

「コミッショナーが下す指令、裁定、裁決及び制裁は、最終決定であって、
 この組織に属するすべての団体及び関係する個人は、これに従う」

となっています。

しかし、実際にはコミッショナーが権限を発揮するのは難しいようで、
今回も残念ながら一部オーナー等に押し切られそうになりました。

結果的には選手会、政府、そして世論を無視できなかったわけですが
2004年のプロ野球再編問題で指摘されたガバナンス改革は
道半ばという感じがします。
相撲協会もそうですが、もっと外部の目線が必要ではないでしょうか。


参考までに、NPBの定款では組織の目的として、

「野球の普及による国民生活の明朗化と文化的教養の向上」
「野球を通してスポーツの発展に寄与し、日本の繁栄と国際親善に貢献」

を挙げています。決してオーナー企業の発展のためではありません。


※写真はサンフランシスコのジャイアンツです。
 もしメジャーリーグだったら、どんな対応をしたのでしょうね。


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2011年03月23日

自然災害リスク分析会社

 

「米リスク管理会社AIRワールドワイドの13日時点の試算によると、
 11日に起きた東北地方太平洋沖地震で150億~350億ドル
 (約1兆2200億~2兆8600億円)相当の損害保険対象資産に
 被害が出たもようだ。(14日 WSJ日本版)」

「米災害リスク評価会社EQECAT(カリフォルニア州)は16日、
 保険会社や再保険会社が東日本大震災に関連して120億~
 250億ドル(約9600億~2兆円)の損失を受けるとの見通しを
 明らかにした。(18日 SankeiBiz)」

「米リスク分析モデル会社RMSは21日、東日本大震災による
 日本の経済的損失について、暫定試算値で最大3000億ドル
 (総生産の約5%相当)になると推定した。
 損失額は2000億─3000億ドルの間となり、保険でカバーされる
 損失額の評価は時期尚早としながらも、保険でカバーされるのは
 『わずかな比率』にとどまると予想している。(21日 朝日新聞)」


東日本大震災の損害額に関する記事にしばしば登場する
「AIR」「EQECAT」「RMS」は、一般にはなじみのない名前ですが、
損保(特に再保険)では重要な役割を果たしています。

というのも、この3社の自然災害リスク評価モデルが
ある種の「共通言語」のような存在になっているからです。

多くの保険会社や再保険会社では再保険取引等の際に、
RMSなどのモデルを活用し、参考にしているようです。

ただし、記事にある試算値は、一定の前提を置いたうえで
モデルによりざくっと計算したものだと思いますので、
あくまでも参考程度に見ておくべきなのでしょうね。


※いつもの通り、個人的なコメントということでお願いします。

※節電のため、東横線は全て各駅停車となっています。
 私は特急・急行の停まらない駅に住んでいるので、
 むしろありがたいかも^^


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2011年03月19日

電気供給約款

 

今日(19日)は東京電力の計画停電が実施されず、
家族は久しぶりに落ち着いて過ごすことができたようです。

ところで今回の計画停電は「電気供給約款」に基づいたものの
ようです(約款というと、つい反応してしまいます^^)。

そうだとすると、具体的には次の通りです。

40 供給の中止または使用の制限もしくは中止
(1) 当社は,次の場合には,供給時間中に電気の供給を中止し,
 またはお客さまに電気の使用を制限し,もしくは中止していただく
 ことがあります。
イ 異常渇水等により電気の需給上やむをえない場合
ロ 当社の電気工作物に故障が生じ,または故障が生ずるおそれが
  ある場合
ハ 当社の電気工作物の修繕,変更その他の工事上やむをえない場合
ニ 非常変災の場合
ホ その他保安上必要がある場合

東京電力HPへ

今回は「イ」あるいは「二」に該当するのでしょう
(公表文がないので確認できません)。


ただ、同じ約款の42が気になります。

42 損害賠償の免責
(1) 40(供給の中止または使用の制限もしくは中止)(1)によって
 電気の供給を中止し,または電気の使用を制限し,もしくは
 中止した場合で,それが当社の責めとならない理由によるもの
 であるときには,当社は,お客さまの受けた損害について
 賠償の責めを負いません。

私は法律の専門家ではないのでよくわかりませんが、
もしどこかに「当社の責めとなる理由」があった場合
(例えば点検を怠っていたとか)、裁判で勝てるのかなあと
素人ながら思ってしまいます。

例えば、原子力安全・保安院は東京電力に対し、
次のような注意処分をしていますので(3月2日です)。
保安院のHPへ
毎日新聞HP


※写真は17(木)夕方の東横線渋谷駅です。
 私の後ろの人がNHKのインタビューに答えていました。



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2011年03月17日

震災後の円高

大震災後に円高が進んだ背景として、
「保険会社が多額の保険金支払いに備え、海外資産の売却を進める」
という話を耳にします。

それはないだろう、というのが私の見解です。

例えば損保です。

地震保険の責任限度額は政府分を入れると5.5兆円。
このうち元受会社の負担分は0.6兆円にすぎません。
これに地震火災費用保険、企業保険の一部がどの程度加わるかどうか。

しかも、請求は一気にというよりは五月雨式に来ますし、
請求があれば即支払いというものでもありません
(もちろん可能な限り迅速な支払いは求められますが)。

再保険からの回収には時間差があり
一時的な資金負担は考えられるとしても、
昨年度末の現預金・コールローンの残高は1.2兆円、
国債も4.4兆円あります(インシュアランス統計号より)。
加えて毎月の収入保険料や当座貸越等も活用できます。

他方、損保が保有する外国証券は4.4兆円です(同)。
このなかには円建外債やヘッジ付きもあるでしょうし、
そもそも外国為替市場の規模は1日100兆円単位ということを
忘れてはなりません。


生保については、より現実的な話ではありません。

仮に数万人への支払いだったとしても
数百億円から数千億円というオーダーにしかならず、
生保が保有する流動性の高い資産残高
(現預金・コールローンは約7兆円、国債は12兆円)
を考えると、ほとんど問題になりません。

また、生保の外国証券残高は数十兆円になるものの、
公表資料によると、ヘッジ付きがかなりを占めています。
強いストレスを受けたのは日本なので、
海外資産を一気に手放す理由がありません。


円高の背景はよくわかりませんが、こうしてみると、
少なくとも保険会社が「犯人」ではないように思えます。
いかがでしょうか?


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。


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2011年03月12日

大震災発生のとき

今回の大震災で被災されたかたには、心よりお見舞い申し上げます。

地震発生のとき、私は日本保険・年金リスク学会(JARIP)の
「ソルベンシーⅡと保険会社のERM」フォーラムに参加するため、
東京・丸の内の日本工業倶楽部3階大ホールにいました
(パネリストとして登場する予定でした)。

開催を告知してからわずか3日間で締め切りという人気で、
会場には大勢の参加者がぎっしり座っていました。

3人目のスピーカーとして東京海上のTさんが登場してから
10分くらいでしょうか。実のところ、それほど大きい揺れとは
感じなかったのですが、ゆっくりした揺れだなあとは思いました。
スピーカーのTさんも異変に気づき、話を中断。

しばらくしてから、どなたか(たぶんホールの係の人)から
「シャンデリアの下にいる人は離れて下さい」という声。
この会館は経済界のクラシックな社交場という雰囲気で、
大ホールの高い天井には見事なシャンデリアがあるのです。

皆さんがあわてて席を離れた直後のことです。
大きく揺れていたシャンデリアの1つが壊れ、一部が落下しました。
もし誰も声をかけず、そのまま下に人がいたらと思うとぞっとします。

実のところ私は「まさかこの程度の揺れで落ちることはないだろう」
と考えていたので、本当にびっくりしました。

結局、フォーラムは中止となり、私はパネリストから帰宅難民へと
立場が大きく変わってしまったのですが、いざ事が起きてしまうと、
状況を正確に判断し、的確な対応をすることがいかに難しいかを
思い知りました。


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2011年03月10日

国債保有のストレステスト

 

前々回のブログでは、次のようなコメントをしました。

「生保の超長期債投資に全くリスクがないとは言いませんが、
 銀行とはかなり状況が異なるように思います」

しかし、生保の保有資産が国債に集中しているのは確かです。
さらに強いストレスを加えた場合にはどうでしょうか。


週刊ダイヤモンドの人気コラム「野口悠紀雄の『超』整理日記」
最新号(3/12)は「日本国債に関してこれから起こること」でした。

野口先生はコラムのなかで、

・国債消化が困難になれば、日銀が引き受けるにしても、
 海外で購入してもらうにしても、インフレ&円安がもたらされる。

・以上のような事態が予測されると、資産の海外逃避が
 起こる可能性がある。

と述べています。

このようなシナリオを想定した場合、生保の国債保有に
どのような影響が考えられるでしょうか。

このシナリオでは、おそらく長短金利は上昇しています。
前にも触れたとおり、ミスマッチ(負債が長い)を前提にすると、
金利上昇で負債の価値が小さくなり、全体として会社価値は
改善します。

ただ、契約者から見れば、インフレは将来受け取る保険金等が
目減りすることを意味します。
物価が仮に10倍になってしまえば、1000万円の保険金は
実質的に100万円の価値になってしまうわけです。
これでは「生命保険は役に立たない」となってしまいます。

しかも、円安の進行です。強権的な為替管理でもないかぎり、
保険を解約して(円預金の引き出しが先かもしれませんが)
ドルやユーロなど外貨建ての資産に移す動きが加速し、
生保がALMを崩さざるを得なくなる...

個人がそこまで機敏に動くとは考えられないかもしれません。
でも、そういえば1990年代初頭の高金利時代には、
長信銀のワイドを求めて長い行列ができたのを思い出します。


「インフレによって生命保険への信認が揺らぐなか、
 円安を背景に生保からの資金流出が加速する」

というシナリオ設定にどこまで現実感があるかどうか。
これにはまだまだ議論の余地がありそうです。

同時に、ストレステストの難しさも理解できるのではないでしょうか。


※いつもの通り個人的なコメントということでご容赦下さい。

※有松から徒歩20分くらいのところに桶狭間の古戦場がありました。
 公園として整備されたのは最近のようです。


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2011年03月05日

最終講義

 

博士課程で大変お世話になった早稲田大学・西村吉正先生
(「住専問題」の時の大蔵省銀行局長ですね)の
最終講義がありました(5日)。

タイトルは「世界史における日本の位置づけと金融の将来」。
西洋史学科出身の私には興味津津です。


「経済力(GDP)」=「人数(人口)」×「単価(1人当たりGDP)」とすると、
経済力の拡大は「人数増加」「単価上昇」のいずれかでとなります。

過去2000年間(!)の歴史を振り返ってみると、
経済力は「人数」で決まっていた時代が長く続いていましたが、
19世紀半ばあたりから、欧米が単価を高めることで先進国となり、
現在に至っています。

しかし、単価を高めることができるのは欧米だけではなく、
日本も戦後に高度成長を実現し、今は中国がそうです。
この結果、世界は再び「人口」が経済力を左右する時代に
回帰しているというわけです。


そのようななかで、日本はどうするか。
人口が減るなかでは単価アップで勝負するしかありません。

現在の「高付加価値のモノづくり」からさらに単価を上げるには、
「金融立国」、すなわち、「ヒトの上前をハネる力」を
持てるかどうかが鍵となります。

それには、つまるところ日本人の競争力を高めることが
必要というわけです。


これだけ大局的な話を具体的なデータをもとに、
かつ、冷静に分析してみせるところに、
西村先生のすごさを感じました(お世辞抜きで^^)。

会場の大教室にはシニア世代から現役の院生まで
大勢が集まりました。金融関係者もたくさんいた模様です。


※今回は珍しく写真と内容が合ってますね(苦笑)


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2011年03月02日

銀行と生保のALMの違い

 

銀行の国債購入が目立っており、金利上昇時に
損失が発生するリスクが懸念されています。

他方、生保も超長期債などの投資を増やしているため、
「生保も大丈夫?」という声を時々耳にします。

ただ、同じ国債投資でも、銀行と生保のALMはかなり違います。

銀行の負債は預金が中心なので、長い債券の購入は
金利リスク(金利上昇時に損失を被るリスク)につながります。
しかも、金利上昇時に預金が流出するリスクも無視できません。

これに対し、生保の負債は一般的に非常に長いので、
超長期債を購入しても、そう簡単には資産と負債の
ミスマッチが埋まらないという現状があります。


もう一歩踏み込んで、生保が抱える超長期債に
損失が発生するのはどのような時か考えてみましょう。

金利が上昇しても、保有区分が「責任準備金対応債券」か
「満期保有目的債券」であれば、含み損を抱えることがあっても
損失は発生しません。
ミスマッチ(負債が長い)を前提にすると、金利上昇時には
負債の価値が小さくなるため、全体として会社価値は改善します。

金利上昇時に含み損を抱えた債券をやむなく売ることになれば、
もちろん売却損が発生します。生保がALMをやむなく崩すとしたら、
多額の保険金等の支払いか、解約の急増でしょうか。

ただ、生保の死亡率や発生率は損保に比べると安定しており、
通常の個人保険で資金繰りに苦しむほどの支払いは考えにくいです。
毎月の保険料収入も資金繰りを緩和します。


解約について想定されるのは、金利上昇時の資金流出と
信用不安に伴う解約ラッシュの2つでしょうか。

確かに銀行が販売した一時払いの貯蓄性商品では
金利上昇時に解約が増える可能性が高いように思います。
しかし、平準払いの保障性商品でALMを崩すほどの
解約ラッシュが発生しうるかどうか
(保険会社はどこまで想定しているのでしょうね)。

信用不安時の顧客動向を予測するのはなかなか困難ですが、
過去の破綻事例をみると、団体年金の流出は目立ったものの、
銀行のように資金繰りに詰まって破綻した生保はなかったようです。


もう一つ考えられるのは、債券をバイ&ホールドではなく、
入れ替えを前提にALMを行っている場合には、
含み損を抱えた債券を売ることになるのかもしれません。

ただ、多くの生保がミスマッチ状態にあることを踏まえると、
入れ替えによるALMの調整がどの程度必要なのか、
純粋なリスクコントロールの観点からはやや疑問です。


こうして検討すると、生保の超長期債投資に全くリスクがない
とは言いませんが、銀行とはかなり状況が異なるように思います。
ちょっと頭の体操をしてみました。


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