植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2010年07月29日

国際会計基準への危惧

null null

7/27の日経「大機小機」です。
国際会計基準(というか時価評価)への反対論なのですが、
「またか」と思いつつ、つい反応してしまいます。

コラムの要旨は次の通り。

・この会計基準の基本思想は製造業や商業の会計の
 基本思想と合わないため、企業経営にゆがみが生じる。

・国際会計基準の利益(包括利益)は純資産の増加額。
 資産の時価評価を基本とした利益であり、短期志向の
 投資家の発想である。

・投資資産の時価がどれだけ上昇するかではなく、
 資産が企業の将来損益にどれだけ寄与するかをもとに
 投資判断を行うべき。

・金融監督当局がここまでコミットしてしまった段階では
 もう後には戻れないが、被害を最小化する努力は必要。
 導入に意味がないと考える企業には強要すべきではない。


「おバカな金融監督当局のせいで、産業界も金融界も困っている」
という主張のようですが、このようなコラムが載るところをみると、
時価評価へのアレルギーは相変わらず根強いものがあるのでしょうか。

もちろん、時価評価が万能だとは思いません。
何を持って時価とするべきかは、難しい問題です。

でも、会社価値の拡大を達成するのが経営の仕事ととらえると、
簿価会計よりも時価会計のほうが目標管理がしやすいです。
時価評価は必ずしも短期投資家の発想ではありません。

加えて、リスクを評価する際には、計量化しているかどうかは別として、
時価を意識してリスクの大きさを認識しているのではないでしょうか。
リスクは時価ベースでみて、対する純資産や収益は簿価ベースというのは
整合的ではありません。

そもそも損益計算を中心とした会計では経営はゆがまないのでしょうか。
売却損益や評価損益、償却損などで損益はいくらでもゆがみます。
その反省から時価評価を基本とした会計にシフトしようとしているのでしょう。

どちらのほうがマシかと聞かれれば、このコラムとは違い、
多くの人は時価評価と答えるのではないでしょうか。


※「大倉山」のふもとにある野菜スタンド。
 ここで買ったもぎたてトマトが実においしかったです。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 00:11:04 | コメント(0)  | カテゴリー : 07. 規制・会計基準 |

2010年07月25日

米国の住宅市場

null null

毎週公表される米FRB(連邦準備理事会)のバランスシートを見ると、
米国の住宅市場がいかにFRBに支えられているかがわかります。

21日時点のFRBの総資産は約2.3兆ドル。
このうち政府支援機関(ファニーメイ、フレディマック)が発行した
住宅ローン担保証券(MBS)が約1.1兆ドルです
(機関債を含めると約1.3兆ドル)。

MBS買取プログラムは2009年1月に始まり、
金融危機以降の住宅市場を下支えしてきました。

金融市場の回復に伴い、金融機関への政府支援は
AIGを除き、ほぼ解消しています。
しかし、このファニーメイ、フレディマックへの支援はそのままです。
支援規模もAIG関連とは比較になりません。
FRBは3月末でMBS買取プログラムを修了しましたが、
この先どう正常化していくのか、道筋は全く見えません。

ファニーメイ、フレディマックの存在は大きく、
残高ベースで全米の住宅ローン市場の約半分の規模があるそうです。
今回の米金融規制改革法にも住宅ローン関連については
盛り込まれませんでした。

バーナンキFRB議長が米景気の先行きについて
「非常に不確実」と懸念を表明するなかで、
大きすぎて手がつけられない状態とでも言うべきでしょうか。


※町内会主催の盆踊り大会に顔を出しました。
 いつもながら本文とは関係ない写真ですね(苦笑)

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:12:55 | コメント(0)  | カテゴリー : 05. 金融・経済全般 |

2010年07月21日

大雨による被害

null null

昨年に続き、この7月も大雨による被害が各地で相次ぎました。

消防庁によると、今年の梅雨期の大雨による被害状況は
ほぼ全国に及んでいます。
住宅への被害も広がっており、床上浸水が2000棟近く、
床下浸水は4000棟を超えました。

詳しくは消防庁のHPをご覧下さい。 消防庁HPへ
自然災害が起きるとこのページで確認するようにしています。


保険アナリストをやっていると、つい損害額の大きさに目が向かい、
損害がかさむと「保険会社の経営は大丈夫?」という発想に
なりがちです。
「地球温暖化で自然災害が大規模化」といったニュースにも
敏感に反応してしまいます。

しかし、考えてみれば、こうした災害への備えとして
保険があるのですよね。
裏を返せば、保険の必要性を多くの人に感じてもらう
絶好の機会でもあるわけです。
もちろん、危機をあおるのは問題ですが...


※いつものようにコメントは個人的なものです。

※写真は地元のケーキ屋さん。
 今日(21日)は娘の誕生日なのです。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:07:51 | コメント(0)  | カテゴリー : 01. 保険経営全般 |

2010年07月17日

大手銀、保険の品目拡大

null null

15日(木)の日経新聞「大手銀、保険の品目拡大」について。

「投資性商品に加え『医療』『介護』」
「手数料収入の安定狙う」
「『1ヵ所で相談』顧客に利便性」

という見出しが並んでいます。

銀行であらゆる金融商品の相談をしたいと考える人が
世の中にどれだけいるかどうかはさておき、
せっかく「銀行の保険販売」というテーマを取り上げたのに、
大手銀行の取り組みを並べただけの残念な記事でした。

そもそも、銀行の保険販売の現状がほとんど書いてありません。

2007年12月の全面解禁から2年半たったわけですが、
どの程度売れているのか、何が売れているのか、
どの銀行が売れているのか、といった何らかの現状分析
(ちょっとだけでもいいのです)を踏まえたうえで、
各銀行の取り組みを紹介するのが普通でしょう。

もし解禁後も全般的に低調というのであれば、
どこかに問題があるのでしょう。記事にあるような、

「休日や夜間でも相談や契約に応じる体制づくりが次の課題」

という次元の話ではないことは明らかです。


もしMS銀行が好調で、MF銀行がそうでないとしたら、
どこに違いがあるのかが知りたいですよね
(「保険コンサルタント」が力を発揮しているから?
 経営が保険販売をリテール戦略の柱に据えているから?)。

例えば、2009年度は大手生保の一時払い終身保険が売れました
(足元の動向は公表データがないのでわかりませんが...)。
銀行の顧客はこの保険を「保障」として買ったのか、
「貯蓄」あるいは他の目的で買ったのかがわかれば、
また別の切り口で大手銀行の取り組みを紹介できるでしょう。

いずれにしても、日経にはもう少し突っ込んだ記事を期待したいですね。


※写真はわが家のアイドル、白クマとグッピーです。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 16:49:25 | コメント(1)  | カテゴリー : 13. 保険マスコミ時評 |

2010年07月14日

一票の軽さ

null null

週末の参議院選挙は与党・民主党の敗北となりました。
就任したばかりの管直人首相には厳しい結果です。

それにしても、毎回選挙になると一票の格差を見せつけられます。

参院選(選挙区)では、私が住む神奈川の有権者数729万人に対し、
定数は3。つまり、243万人に1人の割合です。

これに対し、鳥取は48万人に1人、島根は59万人に1人が当選します。
神奈川の一票は鳥取の5分の1の価値しかないのです。

鳥取、島根、岡山(157万人)を合わせて265万人なので、
これで1人だったら概ね公平となる計算です(1.1倍ですが)。

神奈川ほどではないにしても、大阪(236万人に1人)、
東京(212万人)、埼玉(193万人)、千葉(168万人)と、
大都市圏は一票が軽いですね。

一票の格差は選挙結果にも影響しています。
自民党は1人区(=概ね一票が重い地域)で大勝したため、
選挙区の得票率が33%と民主党(38%)を下回ったにもかかわらず、
当選者は39人と民主党(28人)を大きく上回りました。

都道府県の数が47あって、選挙区での改選数が73議席
(比例区を含めた参院全体の改選数は121議席)。
一票の格差を小さくするには、都道府県単位という制約を
取り外す法改正が避けられそうにありません。

このような不公平がまかり通るのはおかしい話です。
機会があるたびに訴えていきたいと思います。


※最近の電車はなんとなく似てますね。
 左が東横線、右が中央線です。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:14:48 | コメント(0)  | カテゴリー : 16. その他 |

2010年07月10日

inswatch10周年セミナー

null null

保険代理店向けメールマガジン「inswatch(インスウオッチ)」が
創刊から10周年を迎えます。

ご存じの方も多いと思いますが、inswatchは保険代理店
(特にプロ代理店)をターゲットとした週刊誌です。

保険会社の発信する情報や既存の業界誌との最大の違いは、
共同編集人が中崎章夫さん、石井秀樹さんという
「現場系」保険ジャーナリストだということに尽きます。

中立性ということに加え、毎週送られてくるinswatchからは
お二人の保険販売業への愛情やメッセージが伝わってきます
(ちなみに私は有料購読者です。念のため)。

そんなお二人に共感した、というと大げさですが、
私も2001年4月からこの3月まで「保険アナリストの視点」を
隔月で寄稿させていただきました。
足かけ9年間にもなるのですね。ちょっとびっくりです。

保険販売業をめぐる経営環境は、おおむね創刊時(2000年8月)に
言われていた通りになっているようです。
代理店の数は2001年の34万店から、20万店強まで減りました。
販売チャネルの多様化が進み、ネットの活用も当たり前になっています。

ここからの10年を考えると、inswatchのような情報が
ますます価値を持ってくるように思います
(ベテランジャーナリストの健康が心配という別の問題もありますが...)


そのinswathchが10周年を記念して、セミナーを開催するそうです。
テーマは「保険代理店の昨日、今日、明日」。
RINGのオープンセミナーとはまた違った話が聞けるのではないでしょうか
(有料なので、そうじゃなかったら参加者に怒られますよね^^)。

10周年セミナー案内HPへ


※写真の自転車道は三鷹の先から多摩湖まで、ほぼまっすぐに続いています。
 都合により途中で引き返しましたが、次回は湖まで行きたいです。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:11:21 | コメント(0)  | カテゴリー : 13. 保険マスコミ時評 |

2010年07月07日

変動金利ローンが9割超

null null

年金払い保険への二重課税を違法とする最高裁判決
(保険会社の事務・システム負担はどうなるでしょうか?)や、
大相撲名古屋場所のNHK生中継中止など、
ブログのテーマには事欠かない毎日ですが、
週末の新聞を見て驚いたので、こちらにしました。

3日(土)の朝日新聞によると、メガバンクの住宅ローンは
今年に入り、変動金利型が全体の9割を超えたそうです。

一般的な変動型の提携金利は1%を下回っています。
この水準では銀行もあまり儲かってはいないでしょう。

長期固定金利の住宅ローンの代表である「フラット35」の金利は
年2.5%程度と決して高くはないのですが、目先の負担が
月数万円違うとなると、顧客は変動金利型を選んでしまうのでしょうか。

確かに10年以上も低金利が続いており、しばらく上がりそうにも見えません。
仮に上がったら固定型に切り替えればいい、という判断
(あるいはセールストーク)なのかもしれません。

しかし、新聞に載っていたFP深田晶恵さんの
「上がったら固定型に切り替えるという考え方は非現実的」
というコメントに私も同感です。

35年返済の住宅ローン5000万円(元利均等払い)では、
毎月の返済額は金利1%で14.1万円、
2%では16.5万円、3%では19.2万円です。
変動型は固定型より月々3万円は返済額が少なくてすみます。

ただ、この14.1万円という返済額を前提に家計を固めてしまうと、
残高があまり減らないうちに少しでも金利が上がると
たちまち家計は苦しくなります
(返済期間が長いと残高はなかなか減りません)。

しかも、その時点で固定金利型に変えようとしても、
当然ながら金利は今の水準よりも上がっています。
もし返済額が月5万円も増えたら、家計は回るのでしょうか。

多額の借金を抱える日本政府は、長期固定金利の国債を中心に
資金を調達しています。それでも、金利が上がると利払い負担がかさみ、
苦しくなるのは必至です。

政府の財政も心配ですが、銀行のリテールビジネスの柱である
住宅ローンがこれでは心許ないですね。


※写真は地元・熊野神社の「星祭り」です。
 和楽器クラブの小学生が演奏を披露しました。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 22:57:38 | コメント(4)  | カテゴリー : 05. 金融・経済全般 |

2010年07月03日

生保の社員総代会

null null

2日に相互会社形態の生保の社員総代会がありました。
しばらくしたら、議事録が各社のHPに掲載されると思います。
この点は以前に比べオープンになりました。

かつては主要生保の大半が相互会社でしたが、
いまや相互会社形態の生保は5社だけ。損保は0社です。

報道によると、第一生命の株式会社化を受けた質問が相次いだとか。
第一生命の株式会社化では約9割の契約者が何らかの
「たなぼた益」を得られたのですから、当然の質問といえるでしょう。

当の第一生命は先月末の株主総会で株主から厳しい指摘が
相次いだようですが、株主であれば誰でも総会に出席し、
質問できるというオープンさを改めて感じました。

相互会社のメリットも確かにあるとは思います。
ただ、単に「相互会社のほうが契約者にメリットがある」と言われても、
理屈ではともかく、なかなか説得力を持ちません。

例えば、協同組織形態である大手共済は、大手生保と違い、
金融危機の影響をそれほど受けていません。
その差はどこにあるのでしょうか。
都道府県民共済のように、加入者への還元率を
アピールしているところもあります。

相互会社形態のメリットを語るのであれば、
何が具体的なメリットなのかをもっと主張してほしいですね。

※意見には個人差がありますので、念のため。


ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。
| post at 23:29:09 | コメント(2)  | カテゴリー : 01. 保険経営全般 |
植村信保ブログ プロフィール ライブラリー お問い合わせ