
2009年01月29日
先週末になりますが、保険会社の破綻をテーマにした
保険代理店向けセミナーの講師を務めました。

前半が私で、アナリストの視点から保険会社のリスク構造や
経営の現状についてスピーチしました。
後半の岡武さんは、大成火災の破綻時にどうなったのか、
実際に何をしたのか、という貴重な体験談。
これは非常に興味深い内容でした。
同じ保険でも生保と損保では、破綻による影響や
破綻時にしなければならないことが、かなり違うのだと
私も改めて認識することができました。
2009年01月27日

今週発売の週刊ダイヤモンド(1/31号)に記事が載りました。
「AIGショックに揺れる米国生保 不安視される日本の生保事業の行方」
というタイトルで、米国生保の経営内容について書いたものです。
日本で存在感の大きいプルデンシャル、アフラック、ハートフォード
を取り上げ、厳しいのは確か(特に株価感応度の高いビジネス)だが、
株価や信用スプレッドが示すほど実体は悪くない、と分析しています。
ポイントは膨れ上がった有価証券の含み損をどう見るかです。
なかでもALM目的で保有する高格付け社債の価値が
市場が示す通り、何割も毀損してしまうのかどうか。
高格付け債券が次々にデフォルトするとは考えにくいのですが。
もっとも、「安定性が高い」と書いたアフラックの株価が足元で急落。
欧州の銀行向けエクスポージャーの大きさが懸念されているようです。
2月の決算発表ではっきりしますが、不安定な相場が続いています。
このようなレポートはあまり見ないので、ご参考にしていただければ幸いです。
なお、記事中の図表のうち、ハートフォードの総収入、事業利益のデータに
誤りがありましたので、ご注意下さい。訂正を出してもらうことになっていますが、
ご迷惑をおかけして申しわけありません。反省です。
2009年01月23日

ついに、というか報道の通り、本日発表となりました。
2010年4月にIOIとNDが合併し、同時にMSとの経営統合を目指して
「協議を進めることについて合意に達し」たとのことです。
今回は報道が非常に正確だったので感心しました。
本日のニュースリリースはこちら
単体ベースの正味収入保険料はMSの1.3兆円に対し、
IOIが0.9兆円、NDが0.3兆円なので、IOI&NDの規模は
MSとそれほど変わりません。
しかし、時価総額でみると、IOI&NDはMSの半分です。
PBRが軒並み1倍を割り込んでいるとはいえ、
会社の価値という点ではこちらのほうが近いのでしょう。
連結純資産やソルベンシー・マージンを比べても、
だいたいそんな感じです。
今日は「統合を協議することで合意」という発表だけで、
グループ全体の収入規模が大きいということ以外に、
・どのような保険グループを目指すのか、
・コスト削減はどの程度見込めるのか、
・どのようなグループシナジーが見込めるのか
といった話はほとんどありませんでした。
これから協議する部分が大きいのだと思いますが、
会社価値をどのように高めていこうとするのか、今後に注目です。
※写真は大阪です
2009年01月21日
相次いで業界紙にインタビュー記事が掲載されました。
恥ずかしながら写真つきです。
インタビューはいずれも年末に行われました。
保険毎日新聞(1/19)では、「金融危機 保険業界への処方せん」
という特集のトップバッターとして登場しました。
主な内容は、
・10月以降の株価下落が大手生損保の体力を圧迫
・金融危機が実体経済に波及する第2ステージに突入
・(生保は)新規契約をどう獲得するかという経営改革の歩みも
緩めることはできない。(中略)中長期的に見た持続可能な
ビジネスモデルをどう再構築していくのか
・損保が多額の株式を保有するのが望ましいことなのだろうか
などなど。
インタビューは私を含めて5人だそうです。
他のかたの記事が気になるところですね。
保険銀行日報(1/16)は生損保の中間決算がテーマでした。
なぜこのタイミングなのかは、私も知りません。
見出しを挙げると、こんな感じです。
・生保の信用力に警戒感
・低下する新規獲得能力
・悪くない実質的逆ザヤ
・外資系で含み損が拡大
・変額年金も曲がり角に
・相対的に高い損保体力
・通期収支さらに厳しさ
・新たなリスク管理課題
詳しくは両紙をご覧下さい。結構大きな記事になっています。
2009年01月19日
ある会社が販売する終身医療保険のうち、売り上げの3割以上が
かつて同じグループが販売した医療保険(終身医療保険を含む)
からの乗り換えという話を耳にしました。解約&新規です。
終身医療保険は依然として第三分野商品の中心的な存在です。
アフラックの「EVER」やオリックスの「CURE」をはじめ、
無配当かつ解約返戻金のないものが大半を占めているようです。
解約返戻金がない商品の場合、基礎率に「解約率」が含まれています。
つまり、一定の解約を前提におき、保険料を安くしているのです。
前提を上回る解約が発生すると保険会社が儲かることになります。
しかも解約返戻金も配当もないので、差益が還元されることはありません。
既契約者向けに新たな特約を提供するというのであればいいのですが、
解約&新規と聞いてちょっと心配になりました。
2009年01月16日
大手電機メーカーの幹部候補生の方々と話をする機会がありました。
テーマは企業のリスク管理や危機対応についてです。
保険会社は本来、企業のリスクマネジメントのツールとして保険を提供しています。
ただ、日本の企業は「工場」「倉庫」「社有車」とパーツごとに保険に入るだけで、
自分がどのようなリスクを抱えているか、そのリスクにどう対応するか
(リスクを避ける、軽減する、もしくは保険でカバーする)という発想で
保険に入っている会社は、残念ながら依然として少数派のようです。
電機メーカーでも同じような話がありました。
例えば、どこかで発生した震災をきっかけに社内で「危機対応が必要」となり、
相談を受けたメーカーが、全社的な危機対応を考えたソリューションを提供します。
ところが、その後1度も使わない状態が続くなかで、当初の熱が冷めると、
「このシステムだけが最低限動けばいい」といった話になり、
安い単品に切り替わってしまうのだそうです。
共通しているのは、日本の企業、特に経営者のリスク意識が低いということです。
あくまで一般論ですが、日本では自然災害や人災などのイベントによる損失は
「仕方がない」(=経営者のせいではない)という感覚なのでしょう。
過去の失敗に学ぶのではなく、「水に流す」という文化もあるようです。
でも、倒産リスクを減らすためには「仕方がない」ではすまないと思います。
事故や不祥事で会社が傾いた事例は結構ありますよね。
まじめに考えれば、経営者のリスク意識はもっと高くてもいいはずなのですが。
というわけで、なかなか面白いミーティングでした。
2009年01月12日
1/7のブログで紹介できなかった年末のコメントがありました。
あえて紹介しなかったのではなく、たまたま今日になって気がついたものです。

12/27(土)読売「『保険の銀行窓販』全面解禁1年 保険各社、苦戦続く」
という記事の中で、
「銀行で保険商品を購入すると、アフターケアが心配という人はまだ多い」
というコメントが載っていました。
ただ、実のところ私はそのようなコメントをした覚えはなく、
これは別のかたのコメントのはずです
(「営業職員チャネルだとアフターケアが充実」と言わんばかりの
コメントですので、 大手生保の関係者ではないでしょうか...)。
電話取材を受けたのは事実でして、
・スロースタートは予想通り。
・加えて金融危機で貯蓄性商品もしばらく厳しい。
・同じスロースタートでも、単なる品揃え目的の銀行と
リテール戦略に本腰を入れる銀行では、将来差が出るだろう。
このような趣旨の話をしました。
ですから、上記のようなコメントになるはずはありません。
とりあえず、今回は単なるミスだと信じることにしますが、
ご参考まで。
※写真は港北駅伝大会です。1/11に日産スタジアムで開催されました。
2009年01月10日
前回、損保再編についてややネガティブなコメントを紹介しました
(あくまで一般論としてですが)。
アナリストの観点から日本の大手・中堅損保の経営の特徴を3つ挙げると、
次のようになります。
①市場の寡占化が進んでいる。
②規模の小さい専業代理店をたくさん抱えている。
③企業代理店と政策保有株式の存在。
いずれも規制時代、すなわち料率競争がなく、規模イコール利益という時代に
培われてきた特徴です。株価も基本的に右肩上がりでした。
ところが規制緩和が進んだ現在、少なくとも②と③はマイナス面のほうが
目立つようになってきました。
経営を安定させるには、代理店の数よりも生産性や効率性が重要になります。
企業向けの料率が下がる一方、株価下落がしばしば経営体力を圧迫しています。
つまり、今の時代に合ったビジネスモデル構築が求められているわけですが、
前回の業界再編はむしろビジネスモデルの見直しを遅らせたと見ています。
合併を成功させるため、規模が小さく自立していない代理店が温存されました。
政策保有株式の削減もあまり進みませんでした。
その結果、一時的なコスト削減効果は見られたものの、
自動車保険市場の低迷が保険引受収支を圧迫することになり、
足元の株価下落が企業価値の低下につながっています。
業界再々編を全面的に否定するつもりはないですが、
過去の再編を総括すると、再編のメリットよりもデメリットのほうが
大きいように感じてしまいます。
もし再々編が現実のものとなるのであれば、
経営者は全てのステークホルダーに対し、デメリットを上回る
メリットがあることを説明する必要があるのでしょうね。
2009年01月07日
最近取り上げられたコメントの紹介です。

・12/29のBloombergです。
損保3社の経営統合報道に関して、
「一時的なコスト削減にはつながるが効果には限界があり、
過去の再編を振り返っても高い評価はできない」
などのコメントが載りました。
あくまで一般論としてコメントしました。
Bloombergは新年特集としてテレビでも流れています。
T&Dの宮戸社長、アリアンツの三宅社長も同じ番組に出ているようです。
・12/26の保険毎日新聞(業界紙)に、生損保の中間決算についての
インタビュー記事が出ました。全面を使った破格の扱いです
(顔写真つきですが、かなり前のものですね ^^;)。
・1/8のインシュアランス(業界紙)の「主張」という欄で、
拙著「経営なき破綻」が取り上げられています。
「経営者リスクとガバナンス」というタイトルのコラムで、
経営組織には牽制機能が必要という内容です。
他にもいくつか取材を受けた記憶はあるのですが、
たぶんボツになったのでしょう。
2009年01月05日
某生保の著名アクチュアリーの勧めで読んだ本です。
400ページ以上もあり、かつ、翻訳ならではの読みづらさもありましたが、
大変勉強になりました。

著者のリチャード・ブックステーバー氏は、ウォール街の投資銀行や
ヘッジファンドでリスクマネジャーとして活躍しています。
本書は彼の金融危機の根源に関する研究をまとめたもので、
ブラックマンデーやLTCM危機、シティグループ誕生など、
当事者ならではの生々しい記述がたくさん盛り込まれています。
詳細はご覧いただくとして、いくつかの記述を紹介しておきましょう。
・市場が危機に陥ると、資産間の相関の絶対値は1に近づく。
・チームの規模が大きくなればなるほど、すでに認識されているリスク要因が
より詳細に分析されるようになり、新しい要因にはほとんど注意が払われなくなる
傾向がある。(中略)真のリスクとは、目に見えないリスクである。
・組織が大きくなると、だれが意思決定を行っているのか判断がつきにくくなる
きらいがある。そうなると、奔流をせき止めることができなくなって、破綻への
坂道を転がり落ちていくことにもなりかねない。
・規制や組織的な監視の階層を追加して、リスクをコントロールしようとしても、
われわれの制度設計が生み出した市場の複雑性や密結合がもたらす問題を
解決できるとはかぎらない。(中略)何よりもまず複雑性を減らすのが望ましい。
・予期せぬ出来事が起きて絶滅する種は、ある環境の既知のリスクへの対処には
適しているが、予見不可能な変化への対応には適していない機構を持っている。
今回の金融危機が起きる前(2007年)に出た本とは思えないような
タイムリーな本でした。おすすめです。
植村信保(Uemura Nobuyasu)。
保険アナリストとして、主に生命保険会社や損害保険会社の経営分析を行っています。
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